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こちら役割代行サービスです  作者: 月霜 覇夜
序章 ~始まりの物語~
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8.『レイアークの役割』

「操られてる兵士たちが出てこれないように扉を封じています。もしかしたら、開けた瞬間に飛び出してくるかもしれませんので、注意して下さいね」


「わかった」


「では私が結界を張っておこう」


 ヴェンパー先生が結界を張り終えるのを見届け、扉に貼ってあるお札をゆっくり剥がす。ピッと札が剥がれると同時にレイアーク達は扉から距離をとり武器を構えた。


 扉は勢いよくバァーンと音をたてながら粉々に砕け散り、予想通りに兵士たちが飛び出してくる。飛び散った破片はヴェンパー先生が予め張っていた結界にぶつかり、さらに粉々に砕けて消えた。


 アレンはレイアークを含めた五人に身体強化の魔法をかけ、ユーグとフェインを筆頭に襲いかかる兵士達を軽々と退ける。閉じ込めている間にホール内にいた人たちにも魔法をかけていたようで兵士の他にも同級生たちが無表情で襲い掛かってくる。


 レイアークはアレンたちを引き連れ、ホールの真ん中に居るレナード王子とアンナの前に再び立った。アンナはアレン達を見ると苦々しげな表情になった。


「チッ、役たたずの教師ね。生徒を抑えておくことも出来ないなんて」


 レナード王子はアレンたちを見るとわずかに身じろぎ左手で頭を押さえる。それに気づいたアンナが寄り添っている腕に力と魔力を込めると頭痛が引いたらしく、真っすぐにレイアークを見据える。


「レイチェル!!諦めて捕まるんだ。君は仮にも私の婚約者だったからな。悪いようにはしない。アンナを虐げた罪を認め、反省するまで牢の中で過ごすだけさ」


 レナード王子のセリフを聞き、アンナは冗談じゃないと顔を歪ませる。レイチェルとアレン達がいればレナードに施した洗脳がすぐに解けてしまう。


 アンナは右腕に絡めている手に力を込めるとレナード王子に微笑みかける。


「まぁ、レナード様。何てお優しい方なの!でも、レナード様の威厳を保つために然るべき罰をお与えにならなくては!!」


「あぁ、アンナ。君がそう望むのならば」


 カイトは薙刀を構えながらムスッとしてその様子を見ている。


「なんやねん、この茶番。腹立つなぁ……」


「とりあえず敵が殴れば正気に戻るのが救いだな。レナードも俺たちが来たからか、魔法の効果が薄れてるみたいだし」


「もうめんどくさいから、全員殴って正気に戻そうよ。僕お腹すいた~」


「短絡思考やめろってば」


「相変わらず緊張感のないやつらだなぁ。これからが大変だというのに。いいか?周りの兵士は俺達が何とか抑えるからアレンとユーグで協力して特大の異常完治魔法使え。兵士たちもまとめて魅了を解くんだ!レイチェル嬢は……」


「私も共に戦います!魔法が解けたらアンナをレナード様から引きはがします。アレンさん、ユーグさんお願いします!」


 ユーグは頷くと剣を地面に突き刺し詠唱を始める。足元にはホール全体にかかるように魔方陣が展開されていた。アレンはユーグの肩に手を置いて魔力を送り、魔法の効力を強化していく。足元の魔方陣が全体的に青白く光り輝くと同時に術を放った。


「「状態異常回復(エタ・トレット)!」」


 ホール全体が魔法の効果により光が放たれ白く染まる中、レイアークはレナード王子達の方へ走り、アンナに体当たりをして突き飛ばした。魔法の光によって目が眩んでいたアンナは突然の攻撃にぎゃあっ、と悲鳴をあげレナード王子から手を放し尻餅をついた。レイアークはつられて倒れそうになるレナード王子の腕を引きながらアレンたちの元へ走って、アンナから距離を取った。


 光が落ち着くと、襲い掛かってきていた人たちは何が起こったのかわかっていないようにきょろきょろと辺りを見渡したり、首をかしげていたりする。


「……レイチェル?」


 レイアークは声のした方を見ると、レナード王子は先ほどまでの冷たく濁っていた視線とは違う、優しい瞳でこちらを見つめていた。レイアークはそれに微笑み返すが内心はニヤニヤが止まらない。


(ああ、コレコレ!これがホントーのレナード王子なのよねぇ。レイチェルさんに対してはとっっても優しい表情をするのよ。)


 最も強く魅了魔法をかけられていたはずの王子であったが、さすが主人公ズ。本気を出せば大人数を癒すこともできるのは流石としか言いようがないとレイアークは思う。アレンとユーグはハイタッチを交わし、フェインとカイトはレナード王子に何があったのか事細かに説明し、アンナはヴェンパー先生によって正気に戻った兵士たちに魔封じの腕輪を着けられ捕らえられている。


 ふと頭の中にこの様子を見ていた、オトメとレイチェルの会話が聞こえてくる。


《あら~、とってもいい顔してるじゃないの、レナードお・う・じ。やっぱりイケメンはいいわねぇ。ね?レイちゃん》


《あのお二人方、凄いですねぇ。こんなホール全体に回復魔法をかけられるなんて。そういえば今代の光の勇者候補と言われていたような気がします》


《……レイちゃん。王子の方も見てあげて?》


《わぁ、何だかあの表情久々に見た気がします。まず目が濁ってませんね》


《あの、もうちょこっとくらい、興味戻さない?》


《なんかこう、画面越しだと現実感がないんですよねぇ》


《…………。》


 レイチェルはまだまだ元に戻ったレナード王子に対してツンツンしているのだろう。そういうことにしておこうと、レイアークはこっそりとため息をついた。色々申し訳ないが他人の恋路に茶々を入れるのはオトメに任せ、レイアークは黒幕を探る。



 本当はレイアークには黒幕の正体は分かっていた。だって彼女は……。



「認めない……。こんな結末。認めたくないわぁ……。」


 兵士に連行されようとしていたアンナはブツブツと呟く。その体からは黒い瘴気が湧き上がってきた。異変に気付いた人々は再び武器を取り、アンナを警戒する。その間にも、アンナは瘴気をまき散らしながら暴れ回り、抑えつけていた兵士達を振り払うとレイアークをギロリと睨みつける。

 

「せっかく……大…きな……の世界に……変わったのにぃ!特別な力で……アタシはアタ、ああああがあああぁぁ!!」


 アンナはとうとう訳の分からない言葉を発し始め、纏わりついた瘴気は徐々に形を変えアンナを影のような異形に変えていった。腕が大きくなり獣のような大きな爪を振り回しながらレイアークに向かってくる。レイアークは何もない空間に手を伸ばし星形の装飾が施された巨大なハンマーを取り出し、ニッと笑う。


「オトメ先輩、短い間でしたが、今までお世話になりました!私は……自分の役割に……アンナへと帰ります!」


「レ、レイチェル?そのハンマーは一体!??いきなりどうしたんだ?」


「すみません、レナード様。アタシがご迷惑をおかけして……。大丈夫です。すべてが終わったらちゃんとレイチェルさんも戻ってきますから!」


 ホールにいる人々は皆、頭に?が浮かんでいたが空気を読んでか、突然の展開の連続についていけていないのかただ見守ることに徹していた。


《あ゛~、そういうことね。うん了解。アンナの中の子はこっちに任せてね。ドカンと一発!その『魂出しハンマー』で身体からはじき出しちゃって!》


《へ?え?どういう意味です??》


《あ、レイちゃんには後でちゃんと教えてあげるわ。》


 レイアークは向かってくるアンナにハンマーをぶつけると、ポカーーンっという間抜けな音と共に、アンナの中から青白い火の玉がポーンと飛び出してきた。出てきた火の玉は空気に溶け消えてしまった。レイチェルたちの世界からローレへと無事に送られたようだ。

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次回はレイチェル視点に戻ります

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