6.作戦会議
部屋の中はこじんまりとしていた。先ほどモニタールームで見たモニターと同じ物が一つだけ壁に付いており、壁の前には机と椅子が二つ置いてありました。机の上にはおそらくこの世界で使われている文字の羅列が刻まれたボタンのついた板が置いてあった。他にもわからないものが複数個。
モニターの画面を見ると先ほどまで自分がいたはずの卒業パーティの会場が映し出されていた。その中にはレナード王子や私も居たが誰も動いていない。オトメさんを見ると何かの紐をモニターの下にある穴に二つほど差し込んでいた。
「オトメさん、私は何をすればいいのでしょうか?」
「これを耳に当てるように頭にセットして椅子に座って!ヘアバンドって分かるかな?あんな感じに着けれるはずだから。この丸い機械の部分が耳に当たらなかったらここ動かせるから調整してね。それと、これはマイクっていうんだけど、これは口の近くに来るように動かしてね」
オトメさんに言われた通り席に着き、渡されたものをまじまじと見る。ヘアバンドの先に耳を覆うような、丸くて平たいものが付いている。頭に着けてみるとちゃんと丸い部分が耳に当たったので調整は必要なかった。マイク?を口元まで動かす。隣ではオトメさんも同じように椅子に座り、頭にセットして準備が終わったようだ。
「この緑のボタンを押すと貴女の世界と再び接続されるわ。モニターに映ってる貴女の中にはレイアークちゃんが入っています。私達にできることは貴女の役割を代行しているレイアークちゃんをサポートすることと現状の危機を回避する方法を探すこと。心の準備はいい?」
「……はい」
「よし、それじゃあ代行を開始します。んじゃ、ポチっとやっちゃって!」
「はい!」
緑のボタンを押すとモニターが少しチカチカと光った後、耳を覆っている機械からもジリジリと音が鳴り始める。そしてモニターに映っている私がわずかに身じろぎをした。
「レイちゃん、レイアーク!聞こえてる?こちらオトメ。聞こえたら返事をしてちょうだい。」
《は~い、聞こえてるわ。先輩ごめんなさい!アタシ間違って強制交代ボタン押しちゃった!レイチェルさんはそっちにいますか?無事!?》
「おお!凄いです。こうなっていたんですね!はい、私はこちらにいます。レイアークさん。私の声も聞こえてますか?」
《あ、レイチェルさん!聞こえてるわ!ごめんなさい!ホントはちゃんと契約を結んでから交代するはずだったんだけど、代わっちゃったものはしょうがないので仕事に入るわね。先輩から物語が改変されたことは聞いたかな?アタシはこれから改変を修正する作業に入るのでサポートをお願いね!》
画面の中にいる私はモニターに向かってグッと力強く親指を立てる。
「は、はい!でも具体的にはどうすればよいのか……。それに、私はおそらくレナード様の隣にいる娘の魔法で、私自身魔法は使えない状態です」
「ああ、それに関しては大丈夫よ。あっちのレイちゃんは元々魔法は使えない子だから。物理攻撃が得意なのよ。お城の兵士くらいなら、ちょちょいのパーでぶっ倒せるわ。問題はその後どうするかね」
申し訳なさそうに言うと、隣にいたオトメさんはカラカラ笑いながら先ほど見ていた資料の束をどこからか取り出す。今何もない空間から、紙の束が出ていたような……。オトメさんは空間魔法使えるんですね。いいなぁ。私も使えたら本をどっさり収納するのに。
というかレイアークさん強いんですね。
「元の物語では王子は主人公たちと協力してあの金髪の女の子を捕まえることになってるわ。主人公たちは何処にいるのかしら?」
主人公といえば資料を見て話を聞く限り、私は一応物語には出てくるがチョイ役らしいし。そういえば、保健室で資料を確認したときに彼の実家は宿屋だと書いていたから……。
「主人公はレナード様が仲良くなった平民の方の一人ですね。私たちの学年には特別な魔力を持っているといわれている平民の方がいたらしいので、物語の主人公ならその方でしょう」
《それが、本来はもうこのホールに到着してるはずなんだけど見渡してみてもどこにもいないのよ!イベントが起きてるのに主役不在とか、マジありえないからぁ!!》
「ちょっと待ってね~っと。うへぇ、さっき追加で入手した偵察班からの情報だと主人公たちはホールの入り口付近で教師に捕まってなかなかホールに入れないみたい。しかもこの教師も魅了魔法にかかってるわ。邪魔されないようにわざとホールに入れないようにしてるのね」
さっき鍵をを貸してもらったときに新しい資料をもらってたのね。魅了魔法って厄介なんですよね。光魔法で治すか、殴って目を覚まさせないといつまでも術者の言いなりだから。確か闇属性の状態異常に分類されてたと思うんだけど。
「オトメさん、レイアークさん。魅了魔法は闇属性の状態異常系の魔法です。本来なら王族は魔法に対する抵抗力が強いはずで、もし魔法力が低くて抵抗力が無くても防ぐための魔法具があるはずなんです」
「実際資料にも魅了魔法は無効化してるって書いてあるものね。誰かがあの女の子の魔力を強化しているんだわ。多分私達みたいに外の世界の人間でしょうねぇ」
《じゃあアタシは、その外の世界ン人をぶっ倒すわ!外から能力だけアップさせることはできないはずだもの。今この場にいるはずだよ!》
「あ、もし、あの女の子からレナード様を引きはがせたらついでに一発殴ってみてください。光の魔法の回復で治すか、殴って衝撃を与えれば目を覚ますはずなので」
「仮にも婚約者に容赦ないわね」
「魅了魔法による正攻法の治療法です。例え王族といえど洗脳を解くためなら罪にはなりません(多分)。もしくは、レナード様のお友達の一人に優秀な光魔法の使い手の方がいると聞いたことがあります。」
「多分それ主人公の幼馴染の方ね。よし、レイアークちゃん。作戦を伝えるわ。
1.時間が動き出したら、兵士たちを退いてホールの入口に向かって主人公たちを連れてくること。
2.主人公たちに協力してもらってレナード王子の魅了による洗脳を解くこと。
3.洗脳が解けたら、金髪の女の子に力を貸していた何かが出てくる可能性があるから。出てきたらやっつけること。以上!健闘を祈るわ」
《了解!主人公たちの名前もちゃんと調べたからバッチリよ!》
とうとう、作戦開始のゴングが鳴らされた!
本当はレイチェルの世界の本編を先に考えてて色々設定練っていたので、本編の方もいつか載せたいです。
主人公は別人になりますが。