3.『アナタはだぁれ?』
「や、役割代行サービス?」
《そう!アタシは貴女の助っ人になるべく派遣されてきました。このピンチをあなたに代わって華麗に回避して見せましょう!》
どこからともなく響く元気そうな謎の声の主を探そうとずっとキョロキョロと辺りを見渡してみるが、相変わらずこの場で動いているのは私だけのようだった。動けるといっても体を捻る程度で足は床にくっついたように動けない。今のうちにこの場から逃げれれば楽なのに……。
ところでこの多分直接頭の中を震わせるような声に思わず返事をしてしまったが、幽霊とかだったらどうしましょう。
「えーと、どちらから派遣されてこられたのでしょう?どなたの御依頼かは存じませんが、姿が見えないばかりか、時間を止めるような高度な魔法を使えるなんて。高等な魔法使いのお方なのでしょうか?」
派遣ということは誰かが今日私がこうなることを知っていて予め、この声の主さんに頼んでいたのだろうと結論付けるが、そもそも時間を止める魔法は禁術だったはずですし、もし使えたとしても大賢者と呼ばれるほどの高度な技術を取得した一握りの特殊な人間のみ。
《姿は申し訳ないけれどまだ見せれないの。それと残念ながらアタシには魔法は使えないのよねぇ。時間が止まっているのはアタシが貴女と契約する時間を作る為よ。派遣先は~~異世界からです☆》
い、異世界からの助っ人とは……。この展開は本で読んだことがあります。私はハッと閃きました。
「詐欺というやつですね」
《いや、えと、あのね……信じられないかもしれないけど、その結論はちょっと待って!!》
声しか聞こえませんがわたわたとした雰囲気は感じ取れる。間違いない。しかも彼女(?)は契約とか言っていた。これは私を騙して何かよからぬものを売りつけようとしているに違いない。
《えーと、えーと。お願いします、ひとまずアタシの話を聞いてください!!必ず貴女を今の窮地から救って見せますからぁ!!》
「詐欺師さん、私は今とっても忙しいのです。婚約破棄はどうでもいいのですが私の冒険者ライフに影を落とされているこの状況を何とか打開せねばいけないのですよ!」
《だからその打開を手伝おうとですね!?……というか助けを求めた割には貴女平気そうじゃなんじゃないの?》
涙声になりいつの間にか敬語になっていた詐欺師さんが何かを言いかけたところで別の声が響いてきた。呆れを含んではいたが、とても落ち着きがあって頼りになりそうな声である。
《……何をしているのレイ》
《あ、先輩》
《この間も教えたでしょう。口で教えても伝わりにくいから、まず契約書を相手側に見せて私たちの仕事の内容を視覚的に理解してもらうようにしなさいって》
《ああ!そうでした!え~と、契約書表示ボタンはこれですね》
《あ、ちょっとそこはっ!》
落ち着いた声の方が焦った声を出すと目の前が突然ブラックアウトして、私はおそらく気を失った。