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お尻をガン見されて怖いです

※3月5日、誤字修正。ご報告すみません!



コンコンとノックの音が響いた。



「お父様」

「アナスタシアか、なんだ?」



ドアを開けて入る。

ここはお城の執務室、王様は何か書類仕事をしていたようだ。

書類を見たまま、顔を上げずに対応している。

アナスタシアが歩み寄った。



「お話よろしいかしら?」

「ん、今すぐか?」

「王様」



アナスタシアの陰から私がヒョコッと顔を出した。



「おお、トモシビではないか。アルグレオに行ったのではなかったのか?」

「騎士団から報告あったはずですわよ?」

「ここのところ忙しくてな。緊急性の高いもの以外は後回しにしている」



王様の読んでいる書類にはレプタット村の魔封器がどうとか書いてある。

そういえば……魔封器がなくなったレプタット村は大丈夫なのかな?

魔封器というのは魔物から村を守る効果があるはずだ。

襲われやすくなるのではないだろうか?

私の視線に気づいた王様が答える。



「これか? レプタットには騎士団の一部隊が駐留する事になった。安心しなさい」

「よかった」



後でフェリスにも教えてあげよう。



「しかし随分早いな? 使節団とは一緒ではないのか?」

「みんなとはぐれたから、先に帰って来た」

「そうかそうか迷子になったのか。座りなさい。今ミルクティーを持って来させよう」

「迷子で済ませられるほどほのぼのしたものではないのだけど……」



王様は椅子を持って来て自分の隣に設置した。

お城には何度か遊びに来たことがある。

その度にお食事会をしたりお泊まりしたりして王様とは随分親しくなった。

親しくなりすぎて実の娘以上に実の娘のように扱ってくるのは良いのか悪いのか。

ちなみに、エステレアはメイドの部屋にお邪魔してメイと一緒にいる。



「すまんが話は仕事しながらで良いか? なにしろ休む時間もなくてな……おおそうだ、マッサージ券を使わせてもらおうかな」

「わかった」

「トモシビ、貴女マッサージ券なんて渡してたの?」

「温熱もみほぐし、筋膜リリース、歪み改善、えらんで」

「温熱もみほぐしで頼む」

「ずいぶん本格的ですわね……」



私は王様の肩に手を当てると炎の魔術を使った。少しだけだ。

そしてその温めた手でゆっくりと筋肉をもみほぐす……ことは硬すぎて出来なかったので拳骨で押す。



「特別多めに、ぐりぐりしてあげる」

「おほっ……ふほほっ! くすぐったい!」

「……仕事になるのかしら?」

「おほっ、リラックスした方が、で、できるのだよ」

「そう……お話をしても?」



話というのはつまり、私が帰って来た経緯とか魔封器の事である。

知らなかったとはいえ、盗まれた国宝級魔導具を破壊して魔王もどきになってしまったのだ。シャレにならない。

それもこれもあのアルグレオの皇帝とエルフが私を拉致監禁しようとしたからであり、降りかかる火の粉を払い続けてこうなったのだ。

だから相手のせいなのだ。


そう言い張るしかない。

アルグレオを出る時にタブロバニーの触覚とか遺跡とかを壊して来たので、あっちも何か言ってくるかもしれない。

また最新機器を壊したから捕まえしようとしたとか難癖付けてきたらたまったものではない。

こっちが悪いと言われて黙っていたら私が全部悪いことになるのである。



「……だから、皇帝はわるいやつ」

「そうかそうか……まったく皇帝は悪いやつだな」

「お父様、ゆるすぎではなくて?」

「仕事はしっかりするとも……それから魔王の尻尾だと?」

「アクセサリーっていうことにしてるから、ないしょにして」

「ふむ……そうするしかないだろうが少々まずいな」

「そのうち封印するって先生は言ってましたわよ?」

「問題は2つある」



王様は振り向いて私を正面から見た。私もマッサージの手を止める。

一つ目の問題はアスラーム達バルカ家の者達。

治安部隊からも聞いた事だが、彼らは元々魔王の相手をするための家だったという。



「彼らはそのために精霊憑きになったと言われている」

「アスラームも?」

「そうだ。知らなかったのか?」

「彼が精霊術なんて使ったところ見た事ないですわよ」

「切り札として隠しているのかもしれんな」

「バレたら、どうなるの?」

「……殺されるだろう」

「えっ!?」



ドキっとした。

殺される、という言葉は退治より生々しく想像を掻き立てる。

彼が襲ってくる?

いつも私に激甘の彼が?

いや前言撤回だ。想像できない。



「あのアスラームが? トモシビを?」

「精霊の使命には逆らえん。本人の意思とは無関係だ」

「ば……バレなければ良いのでしょう? トモシビ、これからはお口チャックですわよ」

「ん」

「くれぐれも気を付けてな。それから二つ目の問題、魔王軍だ」



王様は、私が魔王軍に狙われる可能性があると言う。

そもそもあの魔封器は魔王配下のカサンドラから渡されたものである。

何か狙いがあった……と言うよりもこうなる事が分かっていたのだろう。

狙われる可能性も何も、もう狙われてるわけだ。

元々狙われ体質の私としては今までと違いはない。



「各地で魔物が活発になっているのもその関係かもしれん。それも気を付けてな」

「うん」



王様は私の頭を撫でた。



「うむ……これから時間はあるか? 使節団が帰還するのは今日の午後の予定だ。共に出迎えてやろうではないか」



そう言って王様は子供のような表情で微笑んだ。







馬車が到着したと知らされてから謁見の間で待つ事数十分、重々しく扉が開いた。

入ってきたのは、大使の人に官僚に騎士団の人にアスラーム……つまり使節団の面々だ。

私から遅れる事数日にしてようやく本隊の帰還である。



「まずは無事で戻った事を嬉しく思うぞ」

「いえ……」



大使は言い淀んだ。

彼らの表情は消して明るくはない。



「無事ではありません。予想外の事態が起こり……」

「ほう」

「トモシビ・セレストエイム嬢と友人達が行方不明です」



アスラームが大使の代わりに答えた。

目の下にクマができて凄味のある目つきになっている。寝不足なのだろうか。

声も心なしか乱暴でドスが効いている。



「何? トモシビ嬢がか?」

「申し訳ありません。捜索しようにも我々だけでは……」

「しかしトモシビ嬢ならそれ、そこにいるではないか?」

「は?」



王様は使節団の背後にいる私を指差した。



「トモシビさん!?」

「舌打ちは、やめてあげる」

「どういう意味だい? いや、それよりも良かったよ……」

「ご、ご無事で何より……エステレアさん達もですか?」

「ここに。他の3人も無事ですわ」



さらに陰からエステレアが現れる。大使は胸を撫で下ろしたようだ。



「……先に帰還していたのか。陛下もお人が悪い」

「はっはっは! 驚いたようだな!」



ちょっとしたドッキリだ。

お茶目な王様である。



「皇帝から逃げられたんだね、君ならそうすると思ったよ」

「逃げてない、叩いて、勝った」



アスラーム達は微妙な顔をした。



「遺跡が崩壊したと聞いたんだけど、やっぱりあれは君が?」

「話は後にしよう。まずは報告の方を……してもよろしいですかな?」

「うむ、情報のすり合わせはその後としよう」



彼らは私達と別れた後、近隣の町を回っていたという。

貧しい村から比較的豊かな村まで、文化レベルはこちらとそう変わらなかったそうだ。

おそらく魔導具技術などはあの皇帝達一派が独占している……とは大使の談である。

しかし私が地下のギャングから聞いた話では、あのレメディオスとかいう大使のエルフが技術の源泉みたいなこと言ってた気がする。そして彼女は必ずしも皇帝に忠実ではないとの事だった。


それから、奴隷についてだ。

こちらから連れてこられた奴隷はレメディオスが買って研究所に送っている。

魔力の高いヒューマンを選んでいるらしい。

色々あって忘れていたが、この事は報告しておかねばならない。



「研究所……そういえば近隣の農村にあったな」

「機密とかで入らせてもらえなかった場所ですね」

「あそこに囚われていたのか。舐めた真似をしてくれる」



と、拳を手のひらに打ち付けたのは騎士団の人だ。

もしかしたら、この人はその件の調査のために派遣されたのかもしれない。

それから首都に戻ってきた彼らは、私の安否を気にかけたんだそうだ。

皇帝に掛け合っても暖簾に腕押し。そのまま私を置いてはいけないと帰還を先延ばしにしたら、遺跡が壊れたから砂を退けるとか言われたのだと言う。

壊れた日が予定していた日付だったことからアスラームは私の仕業だと推理、一縷の望みをかけて帰還に至った……というわけだ。


相変わらず勘が良い。

だが、私が空を飛んで来た事までは思い至らなかったらしい。

私の冒険を報告するとさすがに一同は驚いたようだ。

無理もない。前代未聞の出来事である。



「クルルスの像を焼き尽くして消滅させた?」

「うん」

「……それは比喩表現とかではなく?」

「しんじて」

「いや、まずあれが生き物だったというのが信じがたいのだが」

「その……天脈なるものの魔力で空を飛んで来たというのも……」

「トモシビは嘘をつくような子ではないぞ」

「そうでしょうが……」



使節団の面々は唸った。

どうも大人は頭が固い。

とはいえ、私もこうして日常に戻ってから思い出すとまるでおとぎ話の出来事だったように思える。

夢を見ていたような気分だ。



「いや、信じるよ。君ならそのくらいはやるかもしれない」

「……ありがと」



近づいてくるアスラームに後退りする私。

殺される……という王様の言葉が頭をよぎったのだ。

あの卵型魔封器と尻尾の件は報告していない。

知っているのは女子グループの10人と治安部隊のナザレ隊長にラナさん、そして王様だけだ。

結構いるけど皆信用できる人達である。


これからはあまりアスラーム達に近づかない方が良いかもしれない。

彼は勘が良いので怖いのだ。

だが彼は私のそんな思いと裏腹に、さらに近づいて来る。



「……? 何か後ろに……」

「ともかく。トモシビ嬢の話は貴重な情報ばかりだ。全員報告書にはしっかり目を通しておいてくれ」

「そうですな。特にそのジグとやらの話……」

「あちらがスパイを送り込んでいたというのが本当であれば早急に対処が必要ですね」



王様が気を利かせてくれたおかげでアスラームの気が逸れた。

この尻尾、彼にもアクセサリーで通るだろうか?

流行らせたらいけると軽く考えていたが、バレたら殺されるなんて言われたら堂々と見せるのは勇気がいる。

しかし、同じ学園で会うことも多い彼に尻尾を見せずにいるのは不可能だ。

報告会を終えて帰ろうとする際、私は素知らぬ顔で背を向けてみた。



「……ん?」



視線を感じる。

冷や汗が出そうだ。でないけど。

エステレアが私の後方に付いていつでもガードできる体勢をとった。



「アスラーム君、いくら魅力的でもあまりレディのお尻を見るものではないぞ」

「い、いえ……ごめん」

「……これは、アクセサリー」

「そうか、面白いものを付けてるね」

「私はファッションリーダー、だから」



何か精霊から信号みたいなのが来てるのだろうか?

アスラームはしきりに首を傾げていたが、それきり話題にはしなかった。



マッサージは色々種類がありますが、力がないので何を選んでも大した違いはありません。

筋膜もリリースできないし歪みも改善できません。



※次回更新は3月9日月曜日になります。

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