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狙われ体質




「それは大変だったね」



私が変態ホイホイになってる状況を訴えるとスミスさんは笑って言った。そんな彼にラナさんが非難の目を向ける。



「スミスさん笑い事じゃないですよ」

「ごめん、でもスカイサーペントを倒したトモシビ君が変態に勝てないなんておかしくてね」



勝てないことはない……とは思う。

転移や閃光弾を駆使すれば一般人ならどうにでもなりそうだ。逃げるなら飛べば良い。

でも実際に戦闘行為までいったら傍迷惑だし……いや、正直に言うとブザーを見せつけて怯ませるのが楽しかったのだ。



「しかし一人で行動なんて、エステレアさんもよくさせたね。スライムもなしでだろう?」

「油断でした……もうこれきりにいたします」

「でも白昼堂々商店街で犯行なんて、そんなのレアケースだよ? 変態もよっぽどトモシビちゃんが気に入ったんだね」



人通りの多い商店街で変質者に出くわす方がどうかしている。

フェリスも付けてくれてたみたいだしエステレアも万全の準備を整えたつもりだったのだろう。まあ、フェリスも同い年なんだけど。



「トモシビ嬢の狙われ体質を利用した身としては肩身が狭いな」



通りすがりのナザレ隊長が話に入ってきた。

もう私が案内されるのは来客用の部屋ではない。

彼らの使っているオフィスだ。完全に身内扱いになっている。



「君のおかげで人身売買は一斉検挙できた。治安も向上しているはずなんだがな」

「あの組織、どうなったの?」

「ジェノバの遺跡で足取りが途絶えた。やはりあちらの連中らしい」



やっぱりそうか。攫われた人はどうなったんだろう? 考えてみると怖い話だ。



「だが、この大陸内に運ばれた奴隷についてはいくつか証言があるぞ……そうだな?」

「はっ、直近では商店街で少年を奴隷にしている銀髪の少女を見たと通報が」

「……それはお嬢様かと」

「椅子になってくれただけ」



奴隷になんかしてない。

あのおじさんが通報するわけないから、他にも見ていた人がいたのだろう。



「トモシビちゃん、ご褒美は最小限にしないと、その男の子癖になっちゃうよ?」

「ほ、他にも、レプタットで成人男性の奴隷を見たという証言も」

「レプタットか……獣人が奴隷を購入したのかい?」

「いえ、幼い少女だったそうです。言う事を聞かなければ魔物の餌にするなどと脅していたと」

「お嬢様です」



……それも私だ。しかも脅したのはエステレアなのに私が言ったことになってる。



「魔王と呼ばれていたそうですが……」

「間違いなくお嬢様かと」

「……マンティコアのせいだね。あの魔物、どうする気だい? うちにくれるなら魔導具にするけど」

「だめ」

「一先ずは馬車を引かせてみようとお嬢様はお考えです」

「運動させないと、暴れそう」

「魔封器があるから大丈夫だとは思うけどね」



魔封器ってそんな機能もあるのか。



「ああ、そういえば君の報告にあったカサンドラなる女性と魔血の宝珠という魔導具についてだけど……」

「うん」

「両方とも魔王の関係だね。以前の戦争で似たような記録がある」



やっぱりそうだったらしい。

マンティコアなんて人食い魔獣使うのは魔王軍くらいである。

あと、私。



「レプタットで何をしてたんでしょうね?」

「さあね、魔物を貸与して傭兵でもしてたんじゃないかい?」

「魔王領って貧乏ですしね……」

「世知辛い世の中であります」

「人攫いに魔王の手下か。敵が多いな」

「トモシビちゃんには変態もですね」



主に私の敵はそちらである。

話が戻ってきた。

どうも治安が悪いのではなく私の問題みたいだ。



「ご安心くださいお嬢様、私がしっかりお守りすれば良いのですわ」

「……うん」



まあそうなんだけど。

つまりはいつも通りだ。私はエステレア達がいなかったら一体どうやって生活をすれば良いのだろうか。



「敵が多い世の中だけど良い知らせもあるよ」

「?」

「君の″窓″をコピーした試作品ができたんだ」



そう言ってスミスさんが持ってきたそれは前世でいう大型のタブレット端末に似ていた。マジックボードをベースにして中に色々組み込んだのだろう。見た目はスマートですっきりしている。



「通信機とマップ機能、それにパーティー機能を複合した魔導具だ」

「大きいですね」

「いやあ、このパーティー機能には苦労したよ。どうやって離れた相手に強化をかけるのか解析できなくて」

「……糸が繋がってる感じ」

「そういう魔法式は見当たらなかったんだ。おそらくだが、それは君の特性だ」



……私の?



「トモシビちゃんの特性ってどういうことです?」

「その紐で繋がるのはトモシビ君がやってることなのさ。パーティー機能とはその状態を表示してるだけなんだ」

「私の、霊術?」

「霊術かどうかは分からない。魔力を使ってないんだからね。とにかく、その″窓″は君の特性と有機的に絡んだ魔法式でできている。ベースにあるのは君の力だ」



パーティー機能がやっているのはただ表示するだけで、実は何かやっているのは私だったという事だろうか?

それにしても実感としてそういうのはない。



「それはトモシビちゃん以外使えないってことじゃないですか?」

「しかし開発はできたのだろう?」

「ええ、結局はマップ機能を利用した座標で代用しました。多少制限はありますが」

「じゃあ、トモシビちゃんへの特許料とかは支払われないって事ですよね?」

「パーティー機能に関してはそうだね……ただ一般に売り出す時は君にも当然利益分配はされるよ」

「わかった」



これは冒険者なんかに売れそうだ。マップ機能は魔物が跋扈するこの世界では前世より利用価値が高いはずだ。

冒険者向けなら、ショートカット機能も付加したらどうだろう?

魔導具代わりになるはずだ。

携帯端末を弄りながら魔法を使う冒険者の姿。

サイバーな感じでカッコいいかもしれない。


それから私達は商用のアイデアをあれこれ話した。もうちょっと小型化したら便利になりそうだとか、犯罪を助長しそうだとか。治安部隊としては難しい問題である。







「お嬢様、大事なお話があります」

「?」



家に帰ったエステレアはいつになく真剣な表情で言った。



「クロエ、フェリスさんとスライムを」

「は、はい」

「え、どうしたの?」



命じられるままにスライムとフェリスを連れて部屋を出るクロエ。

なんか……嫌な予感がする。

エステレアはソファに座ってぴったりとくっついてきた。



「……お嬢様、魔導具屋のニコラを椅子にされていたと」

「あれは、座ってほしいって、言うから……」

「ではお嬢様のお尻に男が触れてしまったのですね」



エステレアは目を閉じ、そして深く深呼吸してから目を開いた。

何か決意に満ちた目をしてる。



「お風呂に参りましょう。これより悪魔祓いを始めます」

「や、やだ。やだ……」

「いけません。このままアスラームを誘惑などしたら大変なことになります。その前になんとしてもお嬢様の荒ぶる小悪魔ちゃんを鎮めるのです」



エステレアは有無を言わさず私を風呂場に連行し、嫌がる私の服を脱がせていく。

またあの穢れ落としとかいうのをやる気だ。

あれは好きではない。

気持ち良いのが大きすぎて怖くなるのだ。自分が自分でなくなりそうになる。


エステレアは私の腕を掴み、無理やり抱き寄せる。

いつもは安心感を与えてくれるエステレアの胸が今だけは違う。



「では……お嬢様、お覚悟を」

「エステレア……どうして?」

「……全てはお嬢様のためなのです、うふ……ふふふ」



そう言うエステレアは笑いが堪えきれていない。

あまり説得力がない。

そして早速耳に舌を入れてきた。



「ひぅ……」

「やはり……ここですね。ここ……お分かりですか? お嬢様……ここです」

「ん……! んぅ……!」



ビクビク暴れようとする私を強引に押さえつけるエステレア。

ダメだ。力では歯が立たない。

ピチャピチャした水音は私の脳を侵食していく。そしてあの痺れるような快感が背骨から全身に広がる。



「効いておりますわお嬢様……感じますか? お嬢様の全身の小悪魔ちゃん細胞がトロトロに蕩けきって……力を失っていくのが……」



力を失っていくのは私の脳細胞である。

耳を舐めながらウィスパーボイス。そして手はしきりに私の太ももやお尻をさする。



「お嬢様……小悪魔ちゃんは……進化……しつつあります……」

「ッ……」



舌がツツっと頬を伝って首筋に向かう。



「私が何としても……食い止めてさしあげますからね……」



頭が熱い。ぼうっとして何もかもが遠く聞こえる。

耳、首筋、太もも、お尻……鍵開けの手順みたいに弄られて、ジンジンと体の奥から何かが湧き上がってくる。

こわい。

重要な何かを超えてしまいそうになる。


そして越える前にピタリと止めるエステレア。憎いくらいに的確だ。



「可愛いお顔……」

「エステレアやめて……」

「でもまだ小悪魔オーラを出しておりますわ」

「またメイド服で、お茶入れてあげるから……」

「…………お嬢、様」



エステレアはキョトンとした。そして次の瞬間、その笑みから毒気が抜けた。



「もう……!なぜそのような可愛い事を仰るのですか!? この!このこの……! お嬢様は!」



エステレアは私を胸に抱きしめて、力一杯ギュウギュウ締め付ける。



「小悪魔ちゃんでも天使です!もうそのままでよろしいですわ!」

「あ、悪魔祓いは……?」

「どうでもいいです!」

「でも、アスラームとか」

「私が隠れてお側でお守りします!」



そのまま揉みくちゃにされてしまう。


まあ……よく考えると、アルグレオの連中は人身売買のボスである可能性があるのだ。

用心した方が良い。

そんなダーティーな相手なら私など格好の餌食ではないか。

もし、なんらかの理由で親善試合に出るのが私達だと漏れたら、私を狙うのが一番簡単だ。

アスラームの家が守りについてくれるなら、そうするべきである。

その上でエステレアもいてくれるならそれが一番心強い。

そもそもエステレアはやたらとアスラームを警戒するが、私が彼を誘惑などするはずがないではないか。


私はグッタリとしたままクロエ達が様子を見に来るまで可愛がりを受け続けた。



王都はわりと治安の良い場所です。

治安が悪いのはトモシビちゃんの周りと貧民街だけですね。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 実はブクマした人たちも皆トモシビちゃんにホイホイされた変態だったりします 多数の変態に狙われていますよ…トモシビちゃんは
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