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王都に帰りました

※12月16日誤字修正。ご報告すみませんです。



「これは猫」

「あ、可愛い」

「あっちの猫も変わらないですわね」

「これは、うちのご飯」

「スープですね」

「ほんと美味しかったわ」

「いいなー、エクレアうらやま」

「それでこれも猫」

「猫多くね?」



私達がいるのは商店街のいつものカフェである。

すっかりお馴染みとなったテラス席に通されて、私が旅行中に撮ったスクリーンショットを見ているのだ。



「これも……猫」

「ブサカワね」

「すごいね、この猫服着てる」

「それ私のお父さんだよトモシビちゃん」



……ほんとだ。

フェリスのお父さんも普通に可愛いので猫カテゴリに入れてた。



「これはネコ科のマンティコア」

「トモシビが飼ってるやつだね。もう名前付けたの?」

「顔が怖いのがモカ、少し怖いのがココア、ゆるいのがミルク、普通がオユ」

「あら可愛い名前ですわね……全然見分けつかないけれど」

「オユ可哀想じゃね?」



人食い魔獣のイメージを払拭しようと頑張って可愛い名前を付けたのだ。


あれからマンティコアの馬車で意気揚々と王都に凱旋した私はその場であえなく御用となった。

治安部隊に連絡してもらって事なきを得たものの、なにしろ魔王軍の人食い魔獣である。

魔導院も私の頼みだからということで預かってくれたがやはり迷惑そうだった。



「色々あったみたいね、あーしも行きたかったわ」

「でもトモシビ達がいない間こっちも大変だったんですわよ?」

「何かあったんですか?」

「部活で男どもが張り合ってね」

「セレストエイム様の言うことなら聞くじゃん、例の2人。いないと対立してばっかりなのよ」



例の2人とはグレンとアスラームの事だろう。

チーム単位で動く時なら良いのだが、部員全員での任務となると彼らの対立が表面化してしまうのだ。

べつに私がいたところで何か斬新なアイデアを披露したり、優れた戦術指揮ができるわけではない。

なんだかんだでアスラームは頭良くて指揮能力が高いし、グレンもリーダーシップがある。

ただ彼らは何かと対抗意識を燃やすので私が調整しなければならないのだ。


戦闘でも私がレーヴァテインなど使うとそれだけで終わってしまう。それでは何の訓練にもならない。

というわけで私の全力攻撃は核兵器のごとく温存され、私の仕事といえば応援したりマップを見たり緩衝材になったり……要するに支援だ。

ちなみに一番喜ばれるのは応援である。



「彼らはトモシビに心酔しているのですね」

「心酔ってか、まー、好きになった方が負けってことよね」

「もう諦めて頂きたいものですが」

「でもトモシビ、貴女たぶんアスラームと踊らなきゃいけないですわよ?」

「?」

「ああ、今度遠い国から使節団が来るらしいんだよ、聞いてない?」

「それでトモシビ様とアスラーム様は学園代表として歓迎会に参加して頂きたいのです」



……それってもしかしてアルグレオでは?

おそらく、その時に彼らの存在を公表するのだろう。

国民の受ける衝撃は想像に難くない。

新大陸と国家なんてこの世界の常識からすると宇宙人の襲来に等しい。

ついに来たかという感じだ。



「一応パートナーって体でね。トモシビがあっちの人に取り込まれたら困るから」

「なるほど」

「な、ならば彼でなくても良いのではないですか?」

「バルカ家からの要請なのですわ。トモシビと彼って見た目ピッタリでしょう?」

「既に一年生代表カップルみたいに思われてるしねー」

「ありえません!」

「噂よ噂」



要するに、彼が私のバリアになるわけだ。

歓迎会ではダンスパーティーみたいなのがあるらしい。


お城でのダンスパーティーといえば要するに社交界だ。

大抵の場合、貴族はそういう所で将来の結婚相手を探す事になる。

権謀術数渦巻く王都貴族にとって婚姻関係は死活問題なのだ。

とはいえ私には関係なかったし、これからも無縁でいたい。

彼が防いでくれる事で無縁でいられるなら、それは歓迎すべき事かもしれない。



「いいの?トモシビちゃん」

「バリアになるなら……」

「そんな……既成事実を作られてしまいます!」

「でも国賓とかに見初められたらまずいですよ。何しろトモシビ様ですから」

「ヘタな貴族よりアスラームの方がマシじゃん? あーあ、なんであーしには誰もいないんだろ」

「フレデリックは?」

「脈なさそうなんだよねー」



それからエステレアは口数が少なくなった。

心配しているのだろうか。

私と彼がくっ付くなんてあり得ないのだから心配しなくて良いと言ったのだが、彼女は浮かない顔をするだけだった。






それから家に帰る前に私は生物室に寄る事にした。



「お帰りなさいトモシビ」

「ただいま戻りましたワタシ」

「ただいま」



私の手から降りたスライムが本体に近寄る。そしてそのまま体を押し付け、グチュグチュ動いて一つになった。

私が里帰りに連れて行ったのは分体で、本体はずっとここにいたのだ。

スライムは分裂したら情報共有は途切れてしまうのだが、合体したらまた一人になるのである。

不思議なものだ。

自分が増えるってどういう感じなのだろうか?

もし私が前世の″俺″と出会ったら……なんて想像をしてしまう。



「こっちのスライムはずっと本読んでたわ。知識をつけたいみたいね」

「トモシビのサポートをしなければなりませんからね」

「おかげですごく頭良くなっちゃってね。スライムについての論文も手伝ってもらったわ」



自分についての研究論文を自分で書く魔物。それだけでセンセーショナルだ。

さっきからキョウカ先生は饒舌だが、久しぶりに会ったアスカはいつもに輪をかけてどんよりした目をしていた。



「……あんたがいない間の研究会」

「?」

「アスラーム様、あんたの事ばっか聞くんだけど」

「……そうなんだ」

「もうやだ……なんで私がアスラーム様の恋愛相談受けてるみたいになってるの?」

「アスカ、その立場を利用してもっと親しくなれば良いのではないですか?」

「親しくなって、いけると思う?」

「ワタシの計算では無理です」



スライムは無情に告げた。アスカは3日連続で徹夜したような目で私を睨んだ。

睨まれても私にはどうしようもない。申し訳ないけど。

私は話題を変える事にした。



「あ、マンティコア、興味ない?」

「ああ、貴女が連れてきたのね。ちょっと噂になってたわ」

「あんたが? どうやってあんなの手懐けたの?」

「たぶん……魔力が強いから?」

「魔力が強くても人間に懐くような魔物じゃないわよ? 魔王の手先なんだから」

「頭良い魔物なんだから従う相手くらい選ぶでしょ」

「え?」



……じゃあ一体なぜ?

まさか本当に私を魔王と認識したわけではあるまい。



「……万物がお嬢様に従うのは世界の理です」

「エステレアさん元気ないわね、どうしたの?」

「アスラームとお嬢様の事で少々……」

「……気が合うじゃん」



アスカとエステレアは覇気のない目を交わし合った。気が合うとかいう割に全く楽しそうではない。

マンティコアは一先ず置いておこう。


エステレアが元気ないと私も調子が出ない。

家に帰った私は、彼女をなんとか元気付ける事にした。







「エステレア、エステレア」

「どうなさいました?」

「ちょっときて」



エステレアの部屋へと続くドアから首だけを出して彼女を呼ぶ。



「お嬢様これは……!」



メイド服だ。

今日はメイド服でエステレアに奉仕してあげようと思ったのである。

エステレアがメイド服を好きなのはもはや周知の事実だ。

それに加えて太ももも好きらしいのでスカートは短めにした。

少々品がなく見えるのは私の完璧な所作で補う。



「お茶入れてあげる」

「そのような事私が……!」

「まかせて」



エステレアを無理やりソファに座らせて、私は台所へ向かう。

さて……どうするんだっけ。

あ、ティーポットか。

まずはティーポットを出して、茶葉を……。

……どこにあるんだろ?

ごそごそ探していると、ドアが開いた。



「お嬢様、そこの棚の上です」

「あった……座ってて」



茶葉をポットに入れる。

そしてお湯を入れる。簡単だ。

うちの水道は魔導具が取り付けてあるので魔力を込めたらお湯が出る。

このくらいかな?

蛇口をひねる。

ボンっと音を立てて水蒸気が出てきた。



「わぁ」



魔力が多すぎた。

でもこのくらいの水蒸気など私には効かない。私は対魔力もすごいのだ。魔導具で沸かしたお湯なら大丈夫。



「お嬢様……」

「びっくりしただけ」



またエステレアが覗いた。

お茶を入れるくらいで心配しすぎだ。

加減したらちゃんとお湯が出てきた。

グツグツ煮え立ったお湯をポットに入れる。

よし、あとはカップに注ぐだけだ。



「お嬢様、まだです。蒸らすのです」

「そっか」



そうらしい。そういえばいつもちょっと時間を置いていた気がする。

じゃあその間にお茶菓子を出しておくべきかもしれない。



「スコーン……」

「スコーンはこちらに」

「あった」

「ジャムとクロテッドクリームもお出ししておきます」

「ありがと」



そろそろかな。

せっかくだからあれをやってみたい。高い位置から注ぐやつだ。

前世でそういう入れ方を見た事がある。

たぶん何かが良くなるんだろう。

ティーポットを天高く構えて……カップめがけて紅茶を流し込む。



「あ」



……普通にこぼれた。



「お言葉ですがお嬢様、普通でよろしいかと」



すぐにエステレアが拭いてくれた。

こぼす前から構えていたような気がする。まあいいか。

とにかくこれで完成だ。

なかなか大変だった。これでスコーンを一から焼き上げてたりしたらすごい手間がかかる。

エステレアはいつもそんな思いをしながら紅茶を入れてくれているのだ。

頭が下がる。


エステレアは私の入れた紅茶を一口飲むと、神妙な表情でコトリとカップを置いた。



「お嬢様……」

「おいしい?」

「お嬢様は…………ほんとに!」



ラグビーの反則タックルみたいな勢いでソファに押し倒してくるエステレア。



「可愛いらしすぎます……! わざとやってらっしゃるのですか……!?」

「エステレア、元気になった?」

「ならなければお嬢様が生活できません」

「そっか」

「ではデザートにお嬢様を」



元気になりすぎて火がついてしまったらしい。

私は思う存分に撫で回され、そのあと一緒に洗い物をした。



「……お嬢様はこんなに天使ですのに、どうして悪い遊びをしてしまうのでしょうか?」

「悪い遊び?」

「男を……あ、あのように誘惑したりする遊びです。ただでさえアスラームなどは危険ですのに」

「私は絶対、大丈夫だから」



エステレアは困ったような笑顔で私の頭を撫でた。



お茶入れるとき高いとこから注ぐのはテレビで見た事あるけど、意味があるのかどうかはよくわからないですね。


※大変勝手で申し訳ないのですが、あと2、3回の更新でまた書き溜めに入ろうかと思います。

毎日更新ってやっぱり大変ですね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] みんながトモシビちゃんにしたいことは大体エステレアがやってくれる 電波が届いた…?
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