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計画を立てました

※12月6日誤字修正しました。ありがとうございます!!!



帰省してからはや数日が過ぎた。

広場には毎日露店が並んでいる。夏休みだからというのもあるだろう。お父様が勝手に決めたお祭りは大いに受け入れられているようだった。


今、メイド達は家事をしている。お母様とエステレアはクロエにこの家に慣れてもらおうとしているようだ。どういうわけかスライムも一緒に家事をしている。隙間に入り込むことができるので掃除には重宝されているらしい。


私は半年前までの定位置であったソファに寝転がって″窓″を弄っていた。

もうこの″窓″はメインメニューというより一種の携帯端末だと私は認識している。

スミスさんは万能魔導具と言っていたがまさにそんな感じだ。普通の魔導具は式を記録するのに宝石がいる。これは記録に何もいらないのである。驚くべきことだ。

私にもその価値が実感できてきた。高いお給料を払って研究したがるのも納得である。


透明な″窓″を開いてみる。

カズトーリさんの水晶レンズの魔法式を組み込んだものだ。これを通して見れば魔力の流れが視覚的に分かるようになるのである。

今やっている作業はこれのさらなる改造だ。


以前チャレンジしていた図鑑の検索システムを作るのである。

普通の水晶レンズでは文字などの表示はできないが、この″窓″なら可能だ。その性質を利用して、ARのように植物や動物を見て情報を表示するようなシステムにしたいのだ。

フレンド機能では魔力登録して位置情報を取得できるのだから、魔力の似たものを分類すればいけると思う。理論上は。

あれこれ試行錯誤をしていると、ガチャリとドアが開いた。



「ふう……トモシビ様のお父様本当にすごいわ」

「動かす事もできなかったよ〜、こっち2人なのに」



お父様と稽古していたフェリスとエクレアが戻ってきたのだ。

彼女達は毎日稽古をつけてもらっている。動かす事もできないとはいえ、剣を弾かれる事はなくなってきたのだから大したものだ。

私など幼児扱いしかされないのに。



「はぁー……もうだめ」



エクレアは相当疲れているようだ。ソファにもたれかかってグッタリしてる。

……ムズムズする。

私はどうもこういう子を見ると、なんというか……癒したくなるのだ。たまにマッサージとかしてあげるのもそのせいである。


……そうだ。

良い事思いついた。



「エクレア、ここ」



自分の太ももをポンポン叩きながら言う。



「頭乗せて」

「え……それって」



膝枕だ。

以前、ロリコンおじさんを取り調べした時におねだりされたのを思い出したのだ。

男にするのは抵抗があるがエクレアなら構わない。

どれだけの癒し効果があるか試してみようと思ったのである。


エクレアはおずおずと頭を乗せた。

長い髪の毛が生足に触れて変な感じだ。

さて……あのおじさんはヨシヨシしてほしいって言ってたかな。



「よし、よし……なで……なで……」

「わ……」



頭を優しく撫でる。

わざわざ口に出して言う。囁くように甘い声で。おじさんと違って女の子なので髪の毛を梳くように撫でる。

……こんな感じかな。



「エクレアは……いつもがんばって、えらい……ね」

「トモシビ様ぁ」

「いっぱい、なでなでしてあげる」

「ああん……好きぃ……」



縋り付いてグリグリと顔を押し付けてくる。くすぐったい。

というかそこら辺に顔埋められるのは色々とまずい。

体勢を変える事にする。

脚を開いて、内腿に頭を乗せて……太ももで挟んであげる。



「甘えんぼさんに、なっちゃった……?」

「なっちゃった……なっちゃったのトモシビ様ぁ……」

「好きなだけ、甘えていいよ」

「はい……」

「太ももで、はむはむ……なで……なで……」



そうしているうちにエクレアの反応が鈍くなってきた。そして次第に瞼が落ちていく。



「寝ちゃった……」



そんなに気持ち良かったのかな。私の太ももも大したものだ。

エクレアの頭をそっとクッションの上に移動させる。

私たちの様子をジッと見ていたフェリスが唾を飲み込んだ。



「ね、ねえ、トモシビちゃん……」

「……フェリスも来る?」



太ももをポンポン叩くと、フェリスはエクレアと同じようにおずおずと頭を乗せた。

エクレアより髪が短いけど猫耳が可愛いので私も弄り甲斐がある。



「猫耳……なで、なで……」

「にゃう……」



ウットリと目を閉じるフェリス。

だがそこでまたドアが開いた。

これからという時に。

入ってきたお母様は引き笑いのようななんとも言えない表情をした。



「楽しそうねトモシビ、お友達が来てるわよ?」

「お友達?」

「親友!来ちゃったぞ!」



お母様の背後から三つ編みを揺らす少女が出て来た。

誰かと思えばアイナだ。彼女は私とフェリスの体勢を見て目を吊り上げた。



「な、なんだお前!そんなに密着して!」

「こんにちは〜、アイナちゃんだっけ?」

「そうだよ!お前こそなんだ!親友とどういう関係だ!?」

「フェリス……この子も親友で、猫のフェリス」

「猫じゃなくて猫人だよトモシビちゃん」

「猫でも猫人でもいいから離れろ!」



アイナは私とフェリスを力付くで引き剥がしにかかる。

が、フェリスはビクともしない。当たり前だ、力でフェリスに勝てるわけがない。

それにしてもこの子、ものすごい積極的だ。なんで引きこもってたんだろう?

その時、パンパンと手を鳴らす音がした。お母様だ。



「はいはいそれまで。それまでにして、お茶にしましょう?」

「は〜い」

「くっ……」



騒ぎでエクレアも起きてしまった。ブツクサ言うアイナを連れて移動する私達。

エステレアとクロエはお茶受けを作っていたらしい。

テーブルには焼きたての香ばしいスコーンが並んでいた。

そしてお茶は……王宮式のロイヤルミルクティー。

カップを持って一口飲む。なぜか皆、私に注目している。アイナに至っては頬まで染めてぼーっと見ている。



「おいしい」



と、言うとクロエがホッと胸を撫で下ろした。



「お嬢様、これはクロエが入れたものなのですよ」

「初めて王宮式に挑戦してみたので、ドキドキでした」

「良かったわねえ、クロエちゃん」



お母様とクロエはだいぶ親しくなったようだ。

メイ直伝の王宮レシピがエステレアに伝わりクロエに伝わり、今セレストエイムにもたらされた。これって実は歴史的な事件ではないだろうか。

私に注目していた皆が紅茶とスコーンに手を伸ばす中、アイナはまだ私をぼーっと見ていた。



「アイナ……?」

「ひっ!」



顔を覗き込んだら体ごと引いた。

なんだろうこれ。怖がられてる……というか、照れてる?

何か話を振ってみようか。

そういうのは未だに苦手な私だが、彼女一人だけ部外者なので話についていけなかったら可哀想だ。



「えと……ヨシュアは?」

「よ、ヨシュア……? ああ、あいつなら仕事だよ。けっこう忙しいらしいぞ!」

「そっか」

「気になるのか? まあ悪いやつじゃないけど……でも、お前に釣り合う男じゃないと思うぞ!」

「トモシビ様に釣り合う男なんて世界中を探してもいないわ」

「そ、そうだよな!そうだよ!」

「どうやら、お嬢様について正しい理解をしているようですね」



心配はいらなかったらしい。アイナは普通にお喋りできている。

むしろ私が話に入っていけない。



「アイナさんは、何のお仕事してるんですか?」

「え……それは……その」

「……あっいえ、すみません」



クロエは察したらしい。

学校に行っていないのだから、何かアルバイトでもしてるのかと思ったがそういうわけでもないようだ。家事手伝いとかかな。私と同じくらいならそれでも悪くないんじゃないかな。



「…………あ、そうだ。講演見たぞ!すごかった!さすがは親友だ!」

「トモシビちゃんならあのくらい当たり前だよ〜」

「し、知ってるよ!トモシビは魔法がすごいんだ!いつも庭で練習してたんだ!」

「今でもしてるよね? トモシビちゃん」

「う、うん」



なにやらフェリスもアイナの勢いに乗せられて張り合い始めた気がする。



「……トモシビは本当に友に恵まれたようだな」

「そうね、見違えるようだわ」



今まで黙っていたお父様が口を聞いた。私が帰ってきてテンションがおかしくなっただけで、本来このように静かな人なのである。

お父様は落ち着いた眼差しで私を真っ直ぐに見た。



「トモシビ、大事な話がある」

「?」

「もう学園に行くのはやめなさい」



何を言われたのか分からなかった。一瞬後、心臓に鉛を撃ち込まれたかのようなショックが襲ってきた。







その夜、私はなかなか眠れなかった。

寝付きの良い私としては珍しいことだ。隣ではフェリスとエクレアが寝息を立てている。


両親に魔物と戦いまくったことを話したのは失敗だったのだろうか。

危ないからもう行くな、と言われた。

後継として執務をしながらセレストエイムで暮らして欲しいそうだ。

提案ではない。命令である。

私は必死で反対したがダメだった。


皆と離れたくないと言ったが、もう4人に根回しは済まされていた。

エステレアはもちろんクロエもエクレアもフェリスも学園をやめてセレストエイムに来てくれるらしい。

そんな簡単に決めちゃって良いのだろうか?

学園より私を選んでくれるのは嬉しいけど……。


アイナも諸手を挙げて喜んだ。

でも彼女には悪いが私は嫌だ。

親しくなった友達がいっぱいいるのだ。アナスタシア達や先生、アンにトルテ、アスカ、プラチナあとクラスメイトの男子やアスラーム達も。

それに私はまだ王都でやりたい事がある。色んな場所やアルグレオに行って、親善試合にも勝って私の名を轟かせてファンもいっぱい作る。

これから、もっともっと上に行くはずだった。


なんでお父様はそんな事を言うんだろう?

たしかに危険はあるかもしれない。でも私はミミズだってスカイサーペントだって倒した。もっと強くなれるはずだ。



「トモシビ、眠れないのですか?」



スライムが落ち着いた声で語りかけてきた。



「うん」

「トモシビは学園が好きなのですね」

「……うん」

「ならば反対を振り切っていけば良いのではないですか?」

「……」



そういうわけにはいかない。

お父様とお母様は私の親だ。心配する気持ちはわかるし、心配をかけたくもない。



「前にエステレアが言っていました。トモシビが素直に喜べない事はやるべきでないと」

「うん……」

「親のために理想の人生を捨てるか、親と決別して理想に生きるか。トモシビがトモシビなら……答えは決まっているのではないですか?」



そうかもしれない。

さすがは私の言葉で育ったスライムだ。私をよく知っている。

こうして悩む事自体がもう答えだ。私は私の人生を妥協できない。

お腹をくくる時なのかもしれない。


そして私は計画を立てた。

夜逃げの計画だ。



スライムちゃんはたぶん睡眠必要ないので夜中起きてます。

いつもは本とか読んでます。

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