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観光地で買いました

※10月11日誤字修正しました。誤字多くてすみません、ご報告ありがとうございます!

※10月12日、文章校正しました。



プラチナという子は堅そうな態度とは裏腹に口の軽い子だった。彼女の家は代々アスラームの家に仕えているらしく、子供同士も最初からそういう関係なのだそうだ。



「もちろん、アスラーム様の許嫁であるトモシビ様にも誠心誠意仕えさせて頂きます」



彼女はとんでもないことを言い放った。



「私、許嫁じゃないよ」

「失礼しました。許嫁候補ですね」

「候補でもありません」

「では許嫁候補候補でどうでしょう?」

「赤の他人ですわね……」

「てか、ただの好きな人じゃん」

「プラチナぁ、あんたセレストエイム様が候補じゃなくなったらいきなり態度変えんの?」

「それは……」



アンに言われて言葉に詰まるプラチナ。

アスラームが私を好きだとしても私は応じる気はないので、申し訳ないが破局確定しているのである。

それに周囲が許嫁候補と見做していても、告白されたわけではない。もしかしたら、アスラームは恋愛感情なしで私に好感を持ってくれているだけという可能性もあるのだ。私としてはそれが一番波風立たなくて理想的だ。

何にせよ私が今からプラチナと友達になれば良い。それで解決だ。



「女の子は、プラチナ一人?」

「アスラーム様付きですか? ええ、そうです」

「じゃ、今日は私達とあそぼ」

「そういうわけにも……」

「いいんじゃないかしら? アスラームもトモシビと繋がりができて喜ぶのじゃなくて?」

「……そうですかね?」



アスラームの側近の中でジェラートを食べていたのは彼女一人だったので気になっていたのだ。

あの張り合ってばかりの彼らとはテンション違う感じだったし、チームと男子達とは別枠なのだろう。

ジェラートを食べながら少しお喋りしよう。







「えー!トモシビ様がマッサージしてくれるんすか?! 」

「ま、まあね……」

「ノブレスオブリージュです。お嬢様は大変お優しいお方ですので」

「楽しいから」

「羨ましいっす。アスラーム様がそんなことやるなんて想像も付かないっすよ」



プラチナは少し打ち解けるとすぐに口調が砕けた。これが素のようだ。

エクレア達も戸惑ってるのを見るとクラスメイトの彼女らですら知らなかった姿らしい。

硬い口調のときから隠しきれない年頃の女の子感を出していたので、納得できる変化ではある。

私はこの機会に気になっていたことを聞くことにした。



「プラチナは飛ぶとき、どうやってるの?」

「あれっすか……」

「ああ、私達とはやり方違うよね」

「うーん、企業秘密なんすけど……」

「あーし知ってる、精霊憑きでしょ?」

「ちょっ」



プラチナは勢いよく振り向いた。そして愕然とした顔でトルテを見る。



「誰に聞いたんすか?!」

「弟君」



精霊憑きなんて初めて見た。あれが精霊術か。

精霊術は自分の代わりに精霊が魔法行使してくれる術である。

精霊は目には見えないし触れることもできないが契約者に力を貸してくれる謎の存在だ。術者以外が魔法を使ってくれるという点において神術と似たようなものであるが、神術が術者の魔力を使うのに対して精霊術は使わない。

便利な魔法なのだ。契約すればの話だが。



「ああもう、キセノのやつ……」

「精霊術ってずっと飛んだりできるの? いいな〜私も使いたい」

「やめたほうがいいっすよ。使命がありますから」

「使命?」

「命令されるんすよ。私達は先祖代々バルカの家に仕えることが使命っすね」



精霊憑きは精霊の操り人形、というのが彼女の談だ。行動指針や生き方まで決められてしまうという。ちなみに破ったらどうなるのかは破った事がないので知らないそうだ。

自由を愛する私としては、そんなに羨ましいものではない。

ついでに、精霊はどうやって双子を飛ばしているのかと聞いてみたが彼女にもよく分かってないようだった。



「重力を少し食べてくれるイメージっすね。精霊が雲みたいに私を包んでパクパク食べてるんすよ」



オレンジ果汁たっぷりのジェラートをパクパク食べながら言うプラチナ。

どうやら彼女自身にも分かっていないらしい。魔術で再現したかったのだが、これでは無理かな。重力を食べるって反重力か何かだろうか? 前世でもSFでしか聞いたことがない。さすがに火や風の魔術ではどうにもならないだろう。



「アスラームの家に仕えるのが使命なんて不思議ですわね」

「なんであいつ精霊にまで依怙贔屓されてるのさ?」

「……バルカ家はそういう家なのです」



プラチナの口調が硬くなった。これ以上は話さないという圧力を感じる。まあ、アスラームの家のことにはそこまで興味はない。

私たちもそれ以上拘泥せずに話題を移したのであった。







小腹を満たした後はショッピングの時間だ。

特に買いたいものがあるわけではない。観光地の名産品や露店、高級店を見て回って騒ぐのである。

もちろん買いたくなったら買う。

しかし私の目に叶うものはなかなかなかった。



「やっぱりトモシビ様もインテリアとか拘る方なんすね。アスラーム様と似てるっす」

「たしかに、貴女達って結構似てますわね。銀髪ですし」

「でも私の方が赤い」

「そこ重要なんだ」

「アスラーム様とトモシビ様がご結婚したら楽しいっすよ。家具の一つ一つの配置まで二人で吟味して決めるっす。きっと料理は使用人押しのけて二人でして、盛り付けまで毎日拘るっす」

「目に浮かびますわね。エステレアさんや貴女がそれを食べて……」

「そうそう、でも調味料自分量だからまずいっす」



そんな将来はない。

しかしちょっとだけ楽しそうと思ってしまった。食い意地の張った彼なら食にも拘るだろう。普通の友達としてなら良い人なんだけど……。

……あ、この珊瑚の置物は良いかも。部屋の一つを海をイメージした色やインテリアで固めるとか。

なかなか悪くないと思う。



「エステレア、これどう?」

「海を再現するのですね? それならばこちらも……」

「これもどうでしょう?」

「ならばこちらも」



エステレアが示したのはミニサイズのクルルスの像。いや、この世界の海と言えばたしかにそうだけど。

そしてクロエは目玉の人形、メイはイカの人形を持ってきた。

クロエ、アイボール好きになったのかな? 全部買おうか。

あとは……海っぽいタペストリーとか。



「こんなのはどうっすか? マリンブルーのベッドカバーっす。アスラーム様と是非」

「それは絶対に許しません」



プラチナの提案はエステレアに却下された。この子は本当に私と彼をくっつけたいらしい。

ていうかアスラームとベッドって……サラッと言われたがとんでもない妄想である。

ちょっと綺麗な色だと思ったけど、一瞬にしてそのイメージがついてしまった。これはもう買いたくない。


小物以外には両親へのお土産を買った。魚介の干物とオイル漬けだ。

こういうのも海のないセレストエイムではなかなか珍しいのである。

そんな感じでショッピングを楽しんでいるとどんどん時間が経ってきた。


さて、なんかやり残したことはないだろうか?

フェリスと埋まって海水浴した。私の希望で遺跡に行った。エステレアとデートして色んなものを食べた。ショッピングはエクレアの希望だ。

……クロエは?

そういえばクロエの希望は何だろう?



「クロエ、クロエは何かしたいこと、ある?」

「わ、私ですか? 私は何も……皆さんと一緒にいられれば楽しいですよ」



いつも通りな感じだ。クロエはいつも自己主張する事なくついて来てくれる。それはそれで楽しいのだろう。

でもひょっとしたら、もう少しあれが見たかったとか、あれをやりたかったとか遠慮してる事があってもおかしくはない。

いや、あると思うのだ。人間なんだから。

自分の意思を主張せず他人を優先。

一概に悪い事だとは言えない。それはそれで個性だと思う。私などはクロエのように付いてきてくれる人がいるからやっていけるのである。


ならばこうしよう。

私がクロエの好みから推測して叶えてあげるのだ。



「クロエはアイボール、好き?」



目玉のぬいぐるみを見せつけながら聞いてみた。



「ええ、もう一口で好物になりました。あんなに美味しいのにどうして皆さん食べなかったんですか?」

「だって変な味だよ……」

「見た目も変だったわ」

「つぶらな瞳で可愛いと思いますけど……」



可愛いかな……?

まあいいか。とにかくクロエはアイボールが好きになったらしい。

私はこっそりお土産を探した。食品コーナーである。

……あった。アイボールの缶詰。これを帰ってからクロエにサプライズプレゼントするのだ。

きっと喜ぶと思う。

ふと、横に原材料の表記があるのに気付いた。



『シーゴブリンの眼球』



……この部分は消しておこう。


食品を見ていて気付いたが、お昼に食べた品々は本当に高級食材みたいだ。あれだけのものをご馳走してもらったのだから彼らにも何か買って、お返しするべきだろうか?



「トモシビちゃん、何見てるの?」

「グレン達に、お返しする」

「あいつらが勘違いして調子に乗らないか心配だわ」



何が良いかな。せっかくバーベキューグリルがあるんだから牛肉とか?

いや……貝やロブスターの方が高級なので食べ物系で返すと微妙かな。

それにアスラームにも同じものあげないとまた喧嘩しそうである。



「プラチナ、アスラームには何がいいと思う?」

「アスラーム様っすか? それはもう……」

「お嬢様ご自身、は却下です」

「わ、分かってるっす。じゃあ……アクセとかどうすっか? トモシビ様が選んだものなら何でも喜ばれるっすよ」



アクセ……にしても指輪やネックレスで喜ぶかな? 何か違う気がする。

彼らは大人びてるが14歳の少年である。

私はここにいる誰よりも少年の気持ちには詳しい。何しろ自分が前世体験したことだからだ。

そこから考えると……。



「これにする」

「トモシビ、本気なの?」

「いくらなんでもそれは……」



これしかない。

この龍が巻きついた剣のキーホルダー。

種類が多いので全員違うものを買っていこう。

こういうので良いのだ。たぶん。







ショッピングを終えた私達はまたビーチに戻っていた。彼らにプレゼントを渡すためだ。グレン達4人だけがテントの近くでホームレスみたいに寝転がっていた。

アスラームはホテルに戻ったそうだ。



「これあげる」

「お、おう……」



ドラゴンキーホルダーを見た彼は微妙な反応を返した。



「……うれしい?」

「……ああ、もちろんだ!」



気のせいか。覗き込むと彼は笑顔になった。やっぱり嬉しいみたいだ。私の目に狂いはなかった。



「へーああいうので良いんだ」

「さすがはお嬢様。まさに慧眼かと」

「プラチナ、アスラームに渡して」



あと残り全部をプラチナに差し出す。アスラームの分とそのチームメンバーだ。彼がどこのいるのか知らないのでプラチナに頼もうと思ったのである。



「い……いえ、トモシビ様が手渡しされた方がいいっすよ。てか、ご自分の分はないんすか?」

「かわいくないから」

「えぇ……」



少年っぽいというだけで私の趣味ではない。私はいらない。



「私達の泊まってるのはグランリッジっていうホテルっすよ。近くっす」

「ええっ、私達もそうだよ〜」

「す、すごい偶然っすね!やっぱり運命の糸で結ばれてるんすね!」

「そんなものこの私が全て断ち切ってみせます」



エステレアが凛々しい。

本当に偶然なのかな?

意図的に同じホテルにしたとしたら私と私のチームメンバーを狙ってきたという可能性も考えられる。

あのホテルのセキュリティは万全なので心配ないと思うが、皆は彼らに会わせない方が良いかもしれない。

渡してすぐに帰るとしよう。







ホテルに帰った後、私はエステレアを伴ってプラチナの案内でアスラームの部屋へ向かった。



「さっきぶりだね。わざわざ来てくれるなんて」

「トモシビ様は偶然にも同じホテルに泊まっていらしたそうです」

「そうなのかい? こんな偶然があるんだね。さあ座って、今お茶を出そう。クリプト」

「かしこまりました」



偶然偶然と連呼するプラチナとアスラーム。しかし私は長居する気は無い。



「お嬢様はお忙しいので」

「東方から取り寄せた八宝茶です。お試しになって行かれませんか?」

「む……」



執事の言葉に思わず興味を惹かれてしまった。

東方のお茶……飲んでみようかな。

ティーポットから変わった香りがする。



「少しなら」

「お嬢様……」

「良かった。ここへどうぞ。退屈はさせないよ。君は僕に用があって来たんだね?」

「うん」

「じゃあ、それを当ててみせようか。こう見えて君の」

「お嬢様がこれを差し上げたいと」



アスラームのハイテンショントークが止まった。

推理ゲームとかやりたかったんだろうか? エステレアが彼の話に被せて台無しにしてしまった。

私の差し出すキーホルダーを思わずといった様子で受け取る。



「これは……?」

「プレゼント」

「……ありがとう、嬉しいよ」

「鞄につけて」



笑顔だけど戸惑っているようだ。

話を遮ってしまったのが悪かったのかもしれない。



「ああ、これは君も付けるのかな。同じのを」

「私はつけない、けど……グレンがつけるかも」

「そ、そうなんだ」



私はクコの実や棗の浮いた八宝茶を飲んでみた。爽やかで甘い。



「おいしい」

「恐悦至極にございます」

「これあげる、みんなの分」

「はい、ありがとうございます」



残りは執事に渡しておけば良いだろう。

この執事はエステレアの次くらいにお茶を入れるのがうまいかもしれない。この私を唸らせるとは大したものである。



「そうだ、こっちへ来て窓の外を見てごらん」

「?」



ソファから立ち上がり、アスラームの隣に並んで夜景を見る。

真っ暗な海。しかし、その所々に炎のように揺らめく光が見える。

イカ釣り漁船?

そんなわけないか。人間はあんなとこまで行けない。それに漁船の人工的な光よりずっと幻想的だ。

まるで細かく砕いたオーロラみたいでロマンチックだ。



「これを一緒に見たかったんだ。たまに見られるんだよ。魔物の出す光だって言われてるけど、綺麗だろう?」

「うん」

「でも、君の」

「お嬢様の方がずっとお綺麗ですわ」

「……ありがと」



エステレアは私の腰を抱いて引き寄せた。

私はそのままエステレアに体を預けて夜景を楽しむ。

なんだか良い雰囲気だ。

もう行こうか。

私達はどこか引きつった笑顔のアスラームに別れを告げて、自分達の部屋へ戻ったのだった。



龍が巻きついた剣のキーホルダーは中二病っぽいデザインで子供に喜ばれます。

孤児院の子供達にはウケたようです。

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