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私の証明

※9月30日誤字修正しました。ご報告ありがとうございました!



グレンはそのまま戻って来なかった。引き分けのはずだが、実質私チームの勝ちである。



「次はトモシビチームとバルザックチームの試合なんじゃが」

「流石にこんな状態では……」



私は魔力が切れてるし、他の4人は死んでる。どうしようもない。



「おいてめえ」

「生きてた」

「死ぬかと思ったで」

「地獄の底から戻ってきたぜ」

「戻って来なくてよろしいですのに……」

「なんやて!?」

「それよりよくもやってくれたな。味方も巻き添えかよ」

「あれはちょっとないんちゃうか」

「……エステレアに酷いこと言ったから」



なんのことだ? と言う顔。私が睨んでると4人は思い出したらしくバツの悪そうな表情をした。



「あ〜、あれはあれや」

「戦闘前に雰囲気出そうと思ってw」

「謝って」

「お、お嬢様、私は」

「ちっ……反省してまーす」



ツリ目がそっぽ向いて心にもないことを言う。じゃあこうしよう。



「ちゃんと謝ったら、治療してあげる」



クロエが、だが。

そう言うと彼らは渋々従った。エステレアは困惑したような顔をして横を向くと小さな声でこう言った。



「べつに、いいです」



……エステレアがクラスの男子と敵意なしに会話したの初めて見たかもしれない。



「おおい、邪魔してすまんが、どうする? 治療の時間くらいはやってもいいがお主の魔力がないなら棄権するか?」

「……しない」



エステレアとクロエに抱かれてるとだいぶ楽になってきた気がする。そういえばリラックスするのが魔力回復に良いっていう話があったかな。エーテル草なんて使わなくても、色んな要因で回復速度が上がるとかなんとか。この調子なら戦える程度には回復するはずだ。



「あと10分くらい待って」

「よかろう。大した回復力じゃ。グレンもどこか行きおったしお主らの試合で最後じゃ」



ではこれが決勝戦になるのかな。早いところ治療を始めよう。

それにしても電撃を食らったというのにみんな意外と堪えてないようだ。人に使ったのは初めてなので知らなかったが、ダメージ自体は少ない魔術なのだろうか?

とはいえ、全身の筋肉が硬直するはずだから少しは動きに支障があるはずだ。 一人ずつベンチに寝かせて治療を施していく。クロエが。



「トモシビ様のご命令なので……」



クロエの神術は独特の快感を伴う。

彼女は4人が喘ぎ声を上げるたびに汚物を見るように眉をしかめるのであった。



「んっ……あっ……」

「……」


「あっ、ああっ、お嬢様手ぇ握って!手ぇ!」

「はい」

「あぁーー天使!お嬢様天使ぃぃ!」


「俺、痛いとこ君に蹴られた玉だけなんだけどw」

「じゃあいらないですね」


「ぉほっ!やっべ!やっべ!!」

「あの、暴れないでくれませんか」



治療を終えたとき彼女は実感の篭ったため息を吐いた。

ちょっと可哀想だったかもしれない。もちろんクロエがだ。

そうだ、今日はクロエも一緒にお風呂入るんだからその時労ってあげよう。

エステレアの膝枕で横になりながら思うのであった。







演習場の中央。そこがリングだ。

決勝の相手は、バルザック、フェリス、アナスタシア、それに怯えたように縮こまってる男子2人。彼らは……メガネ2号とメガネ3号でいいか。

バルザックは言うまでもなく、フェリスもアナスタシアもかなり強い。先生は何考えてチーム分けしたんだろうか。



「ちょっと、約束通りトモシビには攻撃禁止ですわよ」

「ま、お前らがやられるまでは見守っててやるから安心しな」

「トモシビちゃん、危なくなったらすぐ降参してね」

「やだ」

「もう、相変わらずですわね」



呆れるアナスタシア。バルザックが動かないなら好都合だ。



「おい、いざとなったらさっきのやっていいぜ」



と、ツリ目。さっきの、とは味方ごと巻き添えの電撃だろう。



「いいの?」

「バルザック相手じゃ何でもやるしかねえ、お前らも覚悟決めろ」

「しゃーない」

「ご褒美じゃんw」



でも私の足が地面に付いてたら自分にも電気流れるような気がする。導線だって距離があれば抵抗が増えるはずだし……。

ゴム手袋とかあればよかったかな?

まあ考えておこう。



「色々あったが決勝戦じゃ。ワシも疲れたから早めに決着頼むぞ。でははじめ!」



適当な先生である。私達はずっと戦い続けてるのに座ってるだけで疲れたとか言わないでほしい。

本当にバルザックは腕を組んで棒立ちになっている。眼鏡2、3とアナスタシアがフェリスに何か……たぶん支援系だと思われる魔法をかけている。

こちらも全体に身体強化をかける。

あの眼鏡ーズが支援なら4対2で有利だ。

フェリスがあれを使わなければ、の話だが。



「にゃああああ!!」



やっぱり使ってきた。狂化という獣人独自の霊術。フェリスの目が真っ赤に染まった。

さらにフェリスに3人が魔術を使う。

彼女はカタパルトがついたようなものすごい勢いで接近すると、そのまま飛び蹴りの一撃でオタを消し飛ばした。

いや言い過ぎた。消えたような勢いで吹っ飛んだだけだ。オタはそのまま動かなくなった。



「お、らしくなってきたじゃねえかフェリス」

「ふしゃー!」

「んだ、こいつ……」



本物の猫のように威嚇するフェリスにツリ目すら戸惑う。

殆どの獣人はあまり剣を使わない、大体頑丈な手甲などを装備して戦うことが多い。理由はこれだ。狂化すると剣技など忘れてしまうのである。



「暴れて!」



アナスタシアの声を受けて誰彼構わず攻撃するフェリス。強い。

攻撃を食らっても怯まない。

仕方ない。

私は閃光弾を放った。狙い通りフェリスの眼前で弾ける。



「にゃっ」



たまらず目を瞑るフェリス。

その隙にイキリが襲いかかる。

危ない。

と思ったが避けた。自分でやっておいて思わずホッとしてしまう。

見えてないはずだが……音か何かで察知しているのだろうか。フェリスはイキリを集中的に狙い始めた。

ツリ目がチラリとこちらをみた。

何かを受け取ろうとするように手をこちらに向けて合図している。

投げナイフかな。たぶん自分もろとも電撃で止めろといっているのだ。

いくら痛みを無視できても強制的に筋肉が止まればどうしようもない。


……私が、フェリスに、電撃を?

暴れるフェリスを見る。

頭から血が出てる……。



「トモシビ、チェックメイトよ」



アナスタシアがいつのまにか私の眼前に立っていた。



「もうおやめなさい」

「……」

「私達に攻撃できないんでしょう? 貴女優しいから」

「……うん」



できない。フェリスとアナスタシアしか動かない時点で私に攻撃の手はないのだ。

向こうではイキリがやられたみたいだ。彼らもダメージは治療したが疲れが溜まってるのかもしれない。潮時か……。



「なら、もう降参しましょう。ね? いい子だから」



…………。

……やっぱりダメだ。

私はなんでこんなに負けず嫌いなんだろう。″俺″のせいか? 私か? たぶんどちらもそうだ。

足裏からジェット噴射。緊急避難発動だ。今回はジャンプするだけなのでそんなに魔力は消費しない。



「あっトモシビ!」



そのままフェリスの目の前に着地する。フェリスの真っ赤な目が私を捉えた。



「危ねえぞ!下がれ!」

「フェリス、来て」



両手を広げる私に飛びかかるフェリス。そのまま押し倒される。

全然危なくない。だってフェリスだから。



「ほら、髪の毛触っていいよ」

「にゃぉ〜……」



フェリスはゴロゴロと喉を鳴らしはじめた。私の髪の毛を弄ったり身体を擦り付けたり尻尾を巻きつけて甘えてくる。

私達はしばし地面で抱き合って転がった。

やっぱりいつものフェリスと同じだ。

……頭にコブがある。ここから血が出ていたのだ。肩や腕も所々青く内出血している。

全部、私を守るための傷だ。



「フェリス、お願い」

「にゃ?」

「アナスタシアを捕まえて」

「……」

「絶対バルザックに勝つから、お願い」



フェリスは少し迷った様子だったが、一つにゃあと鳴くとアナスタシアに飛びかかった。そのまま地面に押し倒してじゃれ始める。



「ちょっと!」



アナスタシアが抗議の声を上げる。

アナスタシアは私を優しいと言った。たしかに私は彼女達を傷付けたくない。

だがみんなも私に攻撃してこないではないか。それどころかチームメンバーであるバルザックやグレンから守ろうとしてくれた。みんなは彼らが私を攻撃する前に決着をつけようとしていた。

優しいのは彼女達だ。

守られてるのは私だ。彼女達は自分を犠牲にしてまで私を守ってくれている。



「先生」



私は2人を指差して見せる。この状態なら私の勝ちでいいはずだ。



「わかったわかった、もう何も言うまい。アナスタシア、フェリス敗退じゃ」

「そんな!?」

「手心加えるなとあれだけ言うたのに……」



ぶつぶつとヤコ先生が愚痴る。

これで私は優しい2人の作戦を無にしてしまった。



「あーあ、何やってんだフェリスお前」



さて残るはバルザックだけだ。いやメガネ2人もいるけど、実質バルザックだけのようなものだ。


ここで証明する必要がある。

私はもう保護されるだけではないと。

これまでの全てをぶつけて証明しなければならない。



「もう飼い猫だなありゃ」

「友達」

「獣人の友達ってのはそんな甘ったるい関係じゃねえんだよ」



バルザックはフェリスにいつもそういう事を言う。彼はレプタット村にいた頃のフェリスを知ってる。もしかして前はこんな性格じゃなかったんだろうか。



「あいつは同年代じゃ俺の次に強くてな」

「すごい」

「ああ、だがいつも一人で狩りに行ってやがって……」

「うん」

「……まっ、済んだことだ。さっさとやんぞ」



聞けなかった。

いいか、そのうち話したければフェリス本人が話してくれるだろう。

私の前にツリ目と関西が立ち、守りを固める。

それを見てバルザックはニヤリと笑った。こちらの出方を待っているらしい。

手始めに爆弾の魔術を放つ。



「あめえ!」



鉄の扉を凹ませるそれをバルザックはあろうことかぶん殴って消した。

そして突っ込んでくる。

そのまま勢いをつけた拳の一撃でツリ目のガードの上から殴りつけて吹き飛ばした。



「目瞑って」



まずい、閃光弾を放つ。

この隙に……。

だが、その瞬間、彼は閃光弾の光をバックに私の目の前で拳を構えていた。



「顔は勘弁してやる」



私の腹部に衝撃が走った。息ができない。鳩尾をやられたらしい。

足から力が抜ける。

目の前が暗くなっていく……。


……遠くで悲鳴が聞こえる。



『私を、置いていかないでください……』



ごめん。でも今は。

今、私もみんなに追いつくから。



「かはっ」



息を吸えた。危なかった。バルザックはトドメを刺さずに観察している。



「意識あるのか? 加減がわかんねえな」



そんな余裕を見せているバルザックに、背後から近づいていた関西が模擬刀を振り下ろした。

しかしこいつは背後に目でもついてるのか。普通に躱して回し蹴りでカウンターを食らわせた。数メートルほど地面を削って崩れ落ちる関西。


でも彼の犠牲は無駄ではない。逃げるチャンスは作ってくれた。私はその隙に緊急避難で飛び上がり、すかさず投げナイフを投擲。

そして、彼がナイフを弾く瞬間に電撃をエンチャントした。

膝をつくバルザック。

……通じる。私の編み出してきた魔術の数々はあのバルザックにも通じる。


まだだ。

こいつには炎を解禁する。

爆弾……今回は炎成分を多めにしたそれを四発同時撃ちで放つ。彼の周囲を囲むような配置で、ミサイルのように。

筋肉が硬直したバルザックには避けられない。

ドン、というお腹に響く打ち上げ花火のような音がした。

そして炎を撒き散らす。辺りが火の海と化した。

熱い。上空にいても熱い。

ナパームとでも名付けようか。



「うおおおお!!」



炎の中で雄叫びを上げているバルザック。

まだ元気だ。

こうなればエクスプロージョンを使うしかない。

魔術は自分でいくらでもアレンジできるのだが、大体使いやすいものは最適化した型が決められている。エクスプロージョンやファイアボールなどがそうだ。

原理は知らなくても、幼い頃から何度も何度も練習した。

その型に沿って正確に魔法陣を描く。

魔法陣からマッチの火のような小さな炎が飛んでいく。

それが着弾すると一際大きな爆発音が轟いた。

小規模なキノコ雲が立ち上る。

ナパームの炎も一緒に吹き飛んでしまった。



「……生きてる?」



粉塵が巻き上げられてよく見えない。ゴブリンの死体が脳裏にチラつく。

着地した私は彼の安否確認のために近づいた。

それがいけなかった。


突然、馬車にでも跳ねられたような凄まじい衝撃が走った。

何が起こった?

数メートルは吹き飛ばされただろうか。

咄嗟に地面に手をついて立ち上がろうとして、体を支えているのが左手だけであることに気づく。

……右手が動かない。

ぐにゃりと曲がったまま私の命令を受け付けなくなっていた。

ぞくっとした。

……まさか骨折した?



「グルルルル」



唸り声が聞こえる。バルザックだ。

首を掴まれて釣り上げられる。バルザックは凄まじい形相をしていた。目は真っ赤に染まり、口からは涎を垂らしている。全身の火傷が痛々しい。

このまま……窒息? 殴りつけられる? 地面に投げつけられる? 顔面を破壊される?

一瞬の思考。怖気が走る。何をされても致命傷だ。

相手が何かする前に……その前に行動を起こさなければならない。


ショートカットでもう一度電撃をエンチャント。

武器はない、だらりと下げた私の手から電流が流れる。

ビクンと体が跳ねた。動かないはずの右手が変な方向に曲がろうとする。

痛い。ものすごい痛い。声すら出せない。

バルザックは?

私は浮いた状態なのだから電流は私の右手から私の首、バルザックの体、そして地面へと流れるはずだ。

ドサッと私の体が落ちた。 計算通りだ。


全身が痛いし、酸欠で視界が暗い。

それに電撃で動けない。

でも私はまだやれることがある。

ショートカットを起動、さらに魔力の流れだけで魔法陣を描く。

とっておきの切り札だ。

入学初日、運動場に大穴を開けたアレ。色んな偶然が重なって起きた事故だった。

あの破壊力を再現しようと試行錯誤して生み出した魔術だ。

グレンから学んだ障壁は結局、未だに実用化できていない。

だがその代わりショートカットで作った魔術に壁を作ることはできたのだ。

内部に凄まじい圧力を秘めた球体。

それを発射する。

名付けるなら……。



「パイルバンカー……」



それは私と同じく硬直しているバルザックの頭部に着弾し、轟音とともに彼をぶっ飛ばした。

この魔法は球体の障壁が割れた方向に全衝撃が放たれる。地面に大穴を開けたのはそういう理由だったのだ。

吹っ飛んだバルザックはピクリとも動かない。起き上がってきたらもうどうしようもない。

10秒……20秒……30秒、その後はよく分からない。いつのまにか私の意識は闇に沈んでいったのだった。



電気とか衝撃系とかが決定打になってますがトモシビちゃんは一応火属性的な主人公です。

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