ゴブリン退治
※6月1日、3月1日誤字修正しました。ご報告ありがとうございます!
今日は城外活動部の日だ。
今回から私達は女子パーティーで行動することになる。これでもっと探索が楽しくなるはずだ。
トイレ対策もしてきた。ただの携帯簡易ウォシュレットと紙だが、葉っぱよりずっとマシであろう。水の魔術を習ったので手を洗う事もできる。
と、そう思っていたのだが……今回は部員全員で行動するらしい。なかなか思うようにはいかないものだ。
「今回の任務はな……喜べ!ゴブリン退治じゃ!!」
「ヒャッハー!」
「そうそう、そういうのでいいんだよ」
「えっ、今日は全員ゴブリン殺していいのか!?」
やっぱり血の気が多いのが集まってるらしい。ちなみに体験入部で50人いた人数は30人ほどに減っている。残ったのはこんな奴らというわけだ。
この前私達が行った森とは別方向にゴブリンの巣があるらしい。ゴブリンとは人間の子供くらい、つまり私くらいの背丈をした醜悪な魔物だ。知能が高く、刃物を使ったりするのでなかなか厄介ではあるが、身体強化を使う魔法戦士の敵ではない。
根絶してもどこからか湧いて巣を作るというゴキブリのような生命力が特徴である。
「ゴブリンなんか雑魚だと思って油断するでないぞ。隙を突かれて急所を刺されたら死ぬんじゃからな。お主らの制服は下手な刃物なんざ通さんが、それに頼ってるようでは三流じゃ。各自ノーダメージで制圧せよ!」
今回の作戦はゴブリンの巣の殲滅が目標ということで、全員がかりで一匹残らず殲滅することになる。
ゴブリンは廃棄された小さな村を根城にしているそうだ。軒数は10に満たないらしい。当然どれも廃墟となっている。
伝えられた作戦はこうだ。
まず気付かれないように包囲して、各自炎の魔術で最大火力を叩き込む。炙り出したゴブリンを殲滅。
単純明快だ。
「お嬢様の一撃で全滅するかもしれませんね」
「まかせて」
私は炎の魔術には自信がある。家の一軒くらいは焼き尽くすくらいの魔術を使えるのだ。ゴブリンは出てくる前に終わりだろう。
現在、私達はぞろぞろと廃村に向かっている。これだけの人数がいれば警戒も薄れる。ピクニック気分である。
「そういえばトモシビの純粋な炎の魔術って見た事ないですわね」
「私は試験会場で見たけど、すごく綺麗だったわ……」
「お嬢様は、お可愛そうに、威力が高すぎて全力が出せないのです。本気ならバルザックやグレンなど寝ている間に地獄行きです」
「マフィアの抗争みたいだね」
「トモシビ様はお優しいのですね。私なら毒を盛ります」
メイは底の見えない目で言った。
エステレアといい、メイドの思考はとても物騒である。
魔物退治では頼もしいかな……。
安全な街道から外れて荒地に入る。
ここからは少し警戒が必要だ。
丈の長い草が多いので、何かが潜んでる可能性があるのだ。
各班が交代で先頭を勤めて前方を探りながら進み、残りは脇を警戒する。
ちなみに私達はスカートなので、タイツやニーハイソックスなどで各自足をガードしている。
そうしないと草で足を切ったり、虫に刺されたりするからだ。
と、その時、何かが草むらの中で動いた。
「わっ」
「蛇ですね」
「あっち行けぇ」
びっくりした。
アンが剣を振ると蛇はニョロニョロと去っていく。
今は私達が先頭を勤める番である。
今のところ魔物などはいないが、動物が多くてその度に驚かされる。
「油断しないで、慣れてきた時が一番危ないですわ」
アナスタシアが注意を促す。たしかにその通りだ。今、草むらから突然ゴブリンがナイフを構えて突進してきたらやられてたかもしれない。
……そろそろその廃村付近だ。
ハンドサインで後ろの班に静かにするよう伝える。私達もなるべく音を立てないように慎重に草を伐採して道を作っていく。
……話し声が消えた。進軍速度が遅くなり、嫌でも緊張感が増してくる。
ゴブリンは夜活動するらしいが、昼間無防備なんてことはないだろう。最低でも見張りくらいはいるはずだ。
既に皆に身体強化はかけてある。それに今回は視力強化もかけておいた。
一口に強化魔法といっても実は色々ある。
私がいつもかけているのは全ての筋力を強化するものだが、例えば腕力だけ一点集中で強化することもできる。バランスが悪いので普通あまりやらない。これと全筋力強化は併用しないのが普通だ。
正確には併用しようと思えばできるのだが、効果がほとんどない。
だが、今回重ねがけした視力強化は動体視力や反応速度の向上が見込め、筋力強化と併用もできる。感覚器官の強化はまた別物なのだろう。
言うまでもなく、襲撃にいつでも対処できるようにするためにかけたものだ。疲れたが、このくらいなら歩いてるうちに回復するので大丈夫。
それから十数分が過ぎたころ、フェリスが小さく鋭い声を上げた。
「止まって!」
彼女は草むらの一点を凝視している。
よく見ると蜘蛛の糸のようなものがキラリと光って見える。
……糸に妙な形の木彫細工が吊り下げられているようだ。
「鳴子、かな?」
「剣が触れてたら危なかったわ」
ゴブリンが作ったのか?
彼らは相当な知能があるらしい。そして鳴子があるということは、それが鳴れば気付く距離に奴らがいるということである。
……どうしよう?
少し見て回ると鳴子は隙間なく張り巡らされていた。おそらく村を囲むように配置している可能性が高い。
糸は木々を利用して、高さを変えて何重にも張ってある。跨ぐのも潜るのも難しいだろう。
ヤコ先生は最後尾にいる。基本口は出さないと言っていたので自分達で判断していくしかない。
「慎重に取り除く?」
「それしかなさそうですわね」
幸い、木彫細工は深く引っかからない限り音は出ない作りになっているようだ。風で揺れた程度で鳴るようなら役に立たないので当然かもしれない。
1、2分ほどで全て取り除き、糸を切る。
そして改めて進軍を開始……しようとした。
その時である。
藪の間に何か動いた。
「……今の」
「見えた?」
みんな見えていたらしい。動物にしては大きい影だった。
「あっち!」
また。
視界の端で何か動いた。これはゴブリンに気付かれたと考えるべきだ。
「囲まれてるらしい。ここでやるぞ」
後ろの班が伝えてくる。作戦変更か。30人が固まって円陣を組んだ。
示し合わせたわけではないのだが、全方位を警戒してたら自然とお互いの背中を守る形になったのだ。
なかなか良い連携だ。普段は全然気にも留めないクラスメイトが頼もしく感じてくる。
「こっちが包囲されることになるなんて」
「甘く見過ぎましたわね」
「30人は多かったかもね」
鳴子とは別に見張りがいたのかもしれない。一筋縄ではいかなかったか。
……なかなか攻めてこないな。
そうだ、足の裏からジェット噴射して飛び上がれないだろうか?
空から索敵すれば丸見えのはずだ。
姿勢制御は難しそうだが上下左右四つくらい吹かせば……。
そんなことを考えていた、その時であった。
「お嬢様!」
ガン、とエステレアが剣で何かを弾いた。石だ。
私だけではない。全体に飛んできている。次から次へと矢継ぎ早に投石されている。
頭部に当たれば結構なダメージになるだろう。
もう考えてる場合ではない。
「私が撃つから前に出ないで」
「はい!」
「トモシビが撃ったら突撃しましょう」
教科書通りのエクスプロージョンだ。
味方を巻き込むので乱戦ではあまり使えないが今なら大丈夫。
両手で2つずつ魔法陣を描く。同じ魔術なら同時に複数使うのはそんなに難しくはない。
そこからチロチロと小さな炎が発射された。
それは扇状に広がって飛んで行き、数十メートル向こうで爆発とともに四つのキノコ雲を出現させた。一瞬遅れて爆音が届く。
「……すっげ!」
「トモシビちゃんすっごいね!」
「突撃!」
アナスタシア達が駆けていく。
他の班も概ね似たような戦法で対処しているようだ。
所々火の手が上がっているのが見える。
まあ、この程度の草むらが燃えたところでどうということもない。消火も容易だし、火に巻かれることもないだろう。
ちなみにエクスプロージョンは瞬間的な爆発力は高いが引火することはあまりない。多分酸素を食べてしまうんだろうと思う。
「油断は禁物です。お嬢様に絶対に近付けてはなりませんよ」
「はい!」
エステレアとクロエだ。逃げられては面倒なので殲滅に人数を割いたわけだが、2人は私を守ってくれている。
どうやら戦局は乱戦の様相を呈してきたらしい。あちこちでゴブリンの悲鳴と剣戟の音が聞こえる。
索敵の魔法とかないのだろうか?
ソナーとかあれば……帰ったら調べてみよう。
ガサリ、と。
不意に横手から聞こえた音に目を向ける。
クロエに突き出される錆びたナイフ。
ゴブリンだ。
刺される。
そう思った瞬間、全てのショートカットのジェット噴射を発動した。
無茶苦茶な姿勢で回転しながらゴブリンに体当たりを食らわせる。
「ギャッ」
すかさずエステレアが、倒れたそいつの胸に剣を突き立てる。
「ギャアアアアアア!!」
「きゃあああああ!!」
人間のような悲鳴をあげるゴブリン。クロエも悲鳴をあげながらその胸を刺した。
ゴブリンは仰向けのまま痩せ細った手足をゴキブリのようにガサガサ動かしている。
続いて体勢を立て直した私も湧き上がる嫌悪感を我慢しながら、首を刺した。
そこでやっと手足を痙攣させて事切れた。
……見れば見るほど嫌な生き物だ。
何が嫌かって、人間と変わらない姿をしていることだ。手足が細長かったり顔が怖かったりするが、そういう人種と言われたら何も言えない。
ゴブリンの死体を見ながら3人とも黙って荒い息を吐く。各々似たようなことを考えているのかもしれない。
「クロエ、無事?」
「はい、ありがとございます……」
「お見事ですお嬢様。ですが……帰ったら制服をクリーニングに出しましょう」
……なんてことだ。
体当たりで触れた肩口に土のようなものが付いている。垢かな。しかも臭い。
少し触れただけでこうなるのか。剣についた血も臭い。
返り血をかけられなかったのは幸いだ。
これは直接戦う皆はもっと大変だろう。
よく考えるとこの制服は防刃仕様なので無茶する必要なかったのでは?
そんな考えがチラリと頭をよぎる。
……いやそんなことないか。万が一の場合がある。よくやった、私。
やがて、アナスタシア達が戻ってきた。皆表情が暗い。
「おかえり」
「ただいま、ここにも出たのね……」
「トモシビ様大丈夫だった?」
「うん」
「もうゴブリンはやりたくないわ……」
「そうだね……」
全員無事のようだ。肉体的には、だが。
私ももうやりたくない。
思いついて、アイテムボックスからトイレットペーパーを取り出して配ってみた。汚れた部分を拭けばいくらかマシになると考えたのだ。
「ありがとうトモシビちゃん」
「本当に助かるわ」
拭いた紙は地面に埋めて水をかければ分解される。何でも用意しておけば、思わぬところで役に立つものである。
汚れと悪臭には隣の班も苦労してしているようだ。
物欲しそうな顔でこちらを見ていることに気がついた。
「……いる?」
「いいのか?」
「いっぱいあるから」
「すまない、助かる」
せっかくだから全部の班に1ロールずつ配ろうか。
「……すまん、助かる」
「相変わらずお上品だなおめーは、もらうけどよ」
「お嬢様、天使か?」
「ありがとう。優しいんだね」
そういえば、私は男子の間でお嬢様と呼ばれてるらしい。部活が混合なのですぐBクラスでも広まりそうである。別に良いんだけどね。
「セレストエイム様のそういうとこがモテる秘訣なのかな」
「でもトモシビは男に興味ないんだよね?」
「うん」
好かれるのは良いけど恋愛感情を抱かれるのは困る。難しいところである。
「お嬢様が慈悲深すぎて私、心配です」
各班、水や携帯食を取り出して一息ついている。あたりにはゴブリンの死体が転がっているが、もうあまり気にならないようだ。
そんな中、ヤコ先生の叱咤の声が飛んできた。
「おおい!たるんどるぞ!気を抜くな!ゴブリンがあれだけだと誰が言った!」
みんなから嘆きの声が上がった。
「疲れたか? もう帰りたいか? だが敵はお主らの都合で動いたりはせん!巣に向かうぞ、任務はやつらの全滅じゃ!」
……たしかにそうだ。もうやりたくない、という願望で現実から目を逸らしていた。
敵という存在は、私達の都合の悪いことを必死で考えて実行してくるのだ。今こうしてる間に二度目の襲撃だってないとも限らない。
「先生、部隊を分けてはどうでしょう? 半分は周辺を探索して逃げたゴブリンを掃討する班。もう半分は村を殲滅する班」
「良いじゃろう。時間が命じゃ。すぐにやれ」
Bクラス男子の提案ですぐに半分が散っていく。全力疾走だ。
ゴブリンは見た目通り子供ほどの走力しかない。例え逃げた奴らがいても追いつくだろう。
私達は村の殲滅に行くことになる。こちらも全力疾走だ。
逃げたゴブリンが村に危機を知らせている可能性がある。
少し走るとすぐに村が見えた。
「フェリス、お願い」
「乗って!」
集中するためにフェリスにおぶってもらう。
使うのはただのファイアボール。
とにかく手当たり次第放火して出てきたら殺す。それだけだ。
私の全身から速射砲のように炎の塊が飛び出していく。そしてそのまま村に入り、駆け回った。
焼け出されて飛び出してきた数匹は瞬く間に殺された。さっきのやつらより小さい。全部幼体だ。
……本当に、気持ち悪い。
「トモシビちゃん大丈夫?」
「……大丈夫」
人間に似ていても彼らは魔物だ。
こいつらが生き残れば、またすぐに増えて近隣の村や街道を通る人を襲う。この廃村だって魔物のせいでこうなったのかもしれない。
「お嬢様やるやん!」
「こんなものかしらね」
戻ると今度こそ終わったというムードが出迎えた。廃村は火の海となり、逃げ場はない、もうあたりに潜むゴブリンはいないだろう。
後は掃討部隊が戻るのを待つだけだ。
いや……気を抜くなと言われたばかりではないか。
燃え盛る家々を見ながら考える。
私ならどうやって逃れる?
廃屋から出たら殺される。炎をやり過ごす事ができるやり方はあるだろうか?
「……井戸とか、穴があるかも?」
「そうですわね。火が消えたら探してみましょう」
あとは……そうだ。
こういう時に備えて抜け穴など掘っている可能性はないだろうか?
狡猾な奴らだ。考え過ぎなくらいで良い。
村に元からあったのを利用してる可能性もある。
「あ」
私の脳裏に電流が走った。
さっきやつらはどこから現れた?
やつらの背丈は私と同じくらいだ。
潜ることも跨ぐこともできない鳴子が村の周囲に張り巡らされているにも拘わらず、どうやって無音で私達を包囲した?
「さっきの場所に戻ろ」
「え?」
「抜け穴があるかも」
私の辿々しい説明などをしてる暇はない。早く行こう。すぐ近くだ。
その場は他の班に任せて、私達は再び全力で駆け出した。と言っても、私はフェリスに乗ってるだけだが。
現場に到着すると、そこには掃討部隊の一班がいた。Bクラスの人達だ。
リーダーらしき白銀の髪の男子が声をかけてきた。
「姫様たちも気付いたかい?」
「……抜け穴?」
「そう。奴らがどこから来たのか気になってね。どうやらそちらも頭の良い子がいるみたいだね」
気位の高そうな人だ。
自分も気付いたのなら、自分が頭良いと言ってるに等しい。
「なるほど、鳴子の外から出てきたんですね」
「言われてみればその通りですわ。わたくしとしたことが……」
「えぇ〜!なんでそんなことわかるのトモシビちゃん!?」
しかしどうやら彼らの方が一枚上手だったらしい。ちょっと悔しい。
冷静になれば皆気付くような事である。ただこんなに目紛しく変わる状況で次々と対応に迫られれば、落ち着いて考える機会がないのだ。
「木の根元にあったよ。出てきたやつらは全滅させた」
彼はそう言って木の根元の暗がりを指した。近くにはゴブリンの死体が数匹重なっている。
今からその穴に突入するところだったそうだ。
それなら私達はここらの探索を続けた方が良いだろう。廃村の方は炎で出口などないのだから一班入れば十分だ。
そう伝えると彼は微笑んだ。
「そうしてくれると助かるよ。まだ他に出口があるかもしれないからね」
「メイは彼らについて行って、通信機で状況を知らせて」
「かしこまりました」
彼らが順に穴に突入していく、私の体格でも狭いだろうによく行けるものだ。
中にはゲジゲジやカマドウマがビッシリいるかも……。
嫌な想像をしてしまう。鳥肌が立ってきた。メイは大丈夫かな。
『こちらメイです。別れ道がありますが片方は落盤で塞がれているようです』
「了解。ひとまず安心みたいね」
やっぱり複数抜け穴を用意していたのだろう。だが崩れて通れなくなっていた。相手も相手で大変だったわけだ。
もう一つの穴がどこにあったのかはいくら探しても分からなかった。
この辺は私のエクスプロージョンの着弾した場所だ。複数の焼け焦げた跡がある。それにゴブリンの焼死体もその辺に散らばっている。
あの一瞬でここまで焼け焦げ、損壊したのだ。中には手足や頭がない死体もある。
……何の対策もしてない人間がエクスプロージョン級の爆発を浴びるとこうなるということだ。これは覚えておかなきゃならない。
それにしてもこのゴブリンの死体の山は放置で良いのかな。
流石にこの後、死体の処理までする体力はない。
『こちらメイです。村の出口に着きました。他には分岐はありませんでした』
「そう、お疲れ様。わたくし達も村に向かいます」
炎はほぼ鎮火されたとの事だ。廃村に戻ると、既に私達以外の部員全員が集まっていた。
私達を待ってたらしい、慌てて整列するとヤコ先生の話が始まった。
「まずはよくやった!任務完了じゃ」
村の抜け穴も他にないことを確認し、周辺の探索も済んだ。あとは帰るだけだ。今回もハードだった。
「どうじゃ? ゴブリンと思って甘く見たじゃろ? 考えてみろ、30人いたからなんとかなったが、お主らの班だけで討伐できたか?」
無理だったと思う。全方位から投石されるだけでかなりきつい。もし勝てたとしても大部分逃げられてしまっていただろう。
「評価としてはおまけして70点といったところかのう。襲撃を退けて気を抜いたところでマイナス50点。抜け穴を発見したのでプラス20点じゃ」
私とBクラスの人を交互に見て言う。
想定外の連続だった。
ゴブリンの生態を知らなかったとはいえ最初の作戦が適当すぎた気がする。まさかゴブリンがあんなに狡猾だとは。
「いい経験になったじゃろ。これで懲りて辞めたくなった者以外は次も同じ時間同じ場所に集合じゃぞ。では解散!」
疲れた。
前と違って負傷者はいないが、誰も彼もが汚くて臭くてボロボロである。
しかしそれでもどこか達成感が窺える良い顔をしている。
私もそんな顔をしているかもしれない。
だって今回は文句なしに活躍できたのだ。私だってやればできるということだ。
私は一つ自信をつけて帰ったのであった。
ゴブリンの設定は大体一般的なファンタジーと同じです。
よく考えると色んな意味で恐ろしい生き物ですよね。




