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女子会パーティー結成記念女子会パーティー

※6月1日誤字修正。ご報告ありがとうございます!



「先生これなんかどう?」

「幼児服ではないか!馬鹿にするな!」

「そんなこと言っても先生のサイズの大人用なんてありませんわよ」

「じゃよねー!」

「先生テンション高い」



現在私達はヤコ先生と一緒にショッピングをしている。この前皆で服を買いに行ったと言ったら先生も行きたがっていたので、誘ってみたらホイホイついて来たのである。



「だってワシ、友達とショッピングなんて初めてなんじゃもん」



はたして先生は友達と言って良いのか、ということは空気を読んで誰も言わなかった。

でもたしかに友達のような感覚で話しているので、もう友達でいいと思う。


ただ、問題は先生に合う服が全くないということである。何しろ先生は私より小さいのだ。女児服がダメとなるとどうしようもない。いつも巫女みたいな一張羅を着ているのはそういうわけだったのだ。



「オーダーメイドするしかなさそうですわねえ」

「先生はどのような服がお好きなのですか?」

「スーツじゃな!大人の色気が出るようなのを着たいぞ!」

「……なるほど」



大人の色気は難しいのではないだろうか、ということは空気を読んで誰も言わなかった。

まあスーツならいくらでもオーダーメイドしてもらえるだろう。


ちなみに今日は先生だけではなくエクレア、アン、トルテも一緒である。

私はお給料を前払いするつもりで彼女らに服を買おうと考えただが、それは嫌がられるかもしれないと思いとどまった。

彼女たちを欲しい服も買えないなどとまるで見下しているような考えではないか、いや事実どこかで見下していたのかもしれない。

私は領主の親がくれるお小遣いで服を買ってるだけなのに、である。

そういう考えを反省できたのは、決して裕福でなかった″俺″の経験のおかげかもしれない。


ただそれでも何かしたい気持ちはある。ということでみんなで相談して女子会パーティー結成を記念してパーティーを開くことにした。

先日アンとトルテがアナスタシアチームに入ることで私達は晴れて5人5人の女子会パーティーとなったのである。その結成を祝って楽しもうと思ったのだ。

費用はリーダーの私とアナスタシア持ちである。このくらいなら良いだろう。

まあパーティーと言ってもファミリーレストランで食べるだけなのだが。



「では先生、乾杯の挨拶を」

「ワシかー? ……では、女子会チームとやらの結成じゃったか。ワシも成果を楽しみにしておるぞ!乾杯!」

「「「「乾杯!!」」」



そう言って私達は近くの人とグラスをぶつけ合った。

私達は当然ジュースだが先生はワインである。



「ワシだけ飲んですまんが……しかしここのチーズとワインはよく合うんじゃ。うひひひひ」

「わたくし達未成年ですし当たり前なんですけれどね」

「この味を知らんとは人生の半分は損しとるぞ!」



既に出来上がってるようなテンションだが、先生はいつもこんな感じである。

チーズは外側が白カビで覆われており、切ると中身がトロリと出てくる。先生はチーズを美味しそうに咀嚼し、クリムゾンレッドのワインを流し込んだ。



「くぅー!うまい!」



幸せそうである。

私もそのうち飲めるようになるのだろうか? この前の事件を鑑みるに私にはアルコール耐性がない可能性がある。

前世は普通に飲める方だったので味は知ってる。

でもあまり良い感情がないな。こういった席では一人寂しく端っこで飲んでような……。

いや、これは私の記憶と混じってるのか?

一応、私も貴族の端くれなので他の貴族や豪商との会食はたまにあった。

もちろん喋るのが苦手な私はろくに話もできず、同年代の子がいても仲良くなれなどしなかった。

……つまり、こういう状況はどちらの人生でも苦手だったのだ。


先生と話すアナスタシア達3人。アンとトルテはエクレアを通じてフェリスクロエエステレアと話している。

私が言葉少ないのはいつものことだ。

でも今だけはそれを過剰に意識してしまう。

何か喋った方が良いだろうか? でも何を言えば良いのだろう?

エクレア達のことを聞いてみようか? でも嫌な事聞いて傷付けたりしないだろうか?

私はリーダーで主人だ。変なことは言えない。失望されたら……。

…………。


ふと。

私の膝の上で握りしめた手。

その上にエステレアが手を重ねた。

私は人見知りで話すのが苦手だ。そして″俺″は他人を拒絶していた。

他人からの拒絶が怖かった。

……でももう変わる。



「3人はいつから孤児院にいたの?」



今までの話題を全部無視して聞いてみた。

私は彼女達のことをあまり知らない。孤児院での生活も、何が欲しいのかも知らない。

私は彼女達に何かしてあげたいと思った。

そのためにはもっと知らなきゃならない。

もしかしたら嫌な話題かもしれないが、そうじゃないかもしれない。結局聞いてみないと分からないのだ。



「赤ちゃんの時らしいけど物心付く前だから全然覚えてないわ」

「あーしは覚えてるけどね」

「トルテと私がいて、ちょっとたってからエクレアがきたんだよ」

「そうそう最初は生意気な奴がきたと思って痛い目見せようと思ったんだけど」

「クロエのときみたいに?」

「ま、まあそうね」

「あれは悪かったよ。でも私らにとっては挨拶みたいなものだったんだ。エクレアとトルテなんて殴り合いしてたもん」



挨拶で殴り合い。

グレン達と気が合いそうである。王都で流行っていたのだろうか? 都会は怖いところだ。



「殴り合いっていうか馬乗りで一方的にボコボコにされたんだけどね」

「エクレアはあの頃から女捨ててたからね。だから正反対のセレストエイム様が好きなんだよ」



正反対というのはよく分からない。

エクレアはいつもよく手入れがされた綺麗なロングヘアにスカートと非常に女の子らしい格好をしている。



「ああ、エクレアがこんなになったのは学園入ってからなのよ。それまでは」

「それはいいでしょ!!イメチェンしたの!それだけ!」



アンの口をエクレアが物理的に塞いだ。よほど知られたくない事らしい。

そんな様子を見てフェリスが口を開く。



「何でイメチェンしようと思ったの?」

「それは……」



口をつぐむエクレア。言いにくそうだ。

だがトルテがペラペラ暴露してくれた。この子達は話し始めたら止まらない類らしい。何を話そうとか深刻に悩んでいた私が馬鹿みたいだ。



「入学試験の会場ですごく格好良い女の子がいて憧れたんだって。そんでそれがさー、笑っちゃうんだけど」

「……」

「セレストエイム様だったんだって!一目惚れじゃん!運命の人かよ!あははは!」



私がエクレアを見ると、エクレアも顔を赤くして私を見ていた。そういえばクロエの事件の時から彼女はこういう目で見ていた気がする。



「嬉しい」



と、私が言うと彼女はちょっとほっとしたようだった。

試験会場、私と同じだったのか。私が例の記憶を思い出す前である。あのときはたしか、ちょっとお嬢様な感じのフリルスカートで魔法を撃った後格好付けてカーテシーなどしていた。

今考えるとちょっと恥ずかしい。



「あの時のお嬢様はまるで演劇のワンシーンのようでした」

「そ、そうなの! 優雅で可憐で少しでもあんな風になれたらと思ったの!」

「よくわかります。トモシビ様は所作が綺麗でゾクゾクするんです」



何だかんだで見た目は大事である。それでエクレアに見初められたのだから気を使ってる甲斐があったというものだ。



「かぁー!罪な女よのう!昔のワシにそっくりじゃ!」



いつのまにか先生とアナスタシア達も話を聞いていたようだ。先生は私の隣まで歩いてくると肩に手を回して絡み始めた。



「のう!トモシビ!お互いモテる女はつらいな!」

「そうでもない」

「くぅーこの余裕!喜べ、トモシビも満更でもないぞ!くぅーっ!」

「せ、先生、もうその辺で」



タチが悪い。アナスタシアの制止を無視してまた一杯ワインを飲み干す。もうチーズとかはどうでもいいらしい。



「しっかし、お主ら揃いも揃って女同士でイチャイチャと。好きな男とかおらんのか? のうトモシビ」



その場が凍りついた、ような気がした。



「おらん」

「またまたーグレンのやつなんかどうじゃ?」

「はぁ?!」



エステレアはヤコ先生が私の肩に回した手を解くと自分の方に抱き寄せる。そして先生を汚物でも見るような目で見た。



「な、なんじゃその目は。恋バナくらい普通であろう……」

「お嬢様は男に興味などありません」



言い切られてしまった。まあ、ないけど。

エステレアは当然としてクロエ、エクレアもあまり興味なさそうである。フェリスは……バルザックとは幼馴染らしいが彼はダメだと思う。



「ろくな男がいないからねえ」

「先生、グレンのような変態とトモシビを関わらせないでくださいな」

「お主達は男ともつるんでおるではないか、ほれ、あの、魔物を追い払ったあいつはどうじゃ?」

「ルーク?」

「真面目だし悪くないんだけど、うーん……」

「えっ王女様のグループ男もいるの?」



トルテとアンが食いついた。この2人は男に興味があるらしい。そのままルーク達の品評会が始まった。

私のチームの5人はというとそのまま化粧品の話題に移ってしまった。

私達の歳ではあまりメイクなどしていないのだが、それでも普通は化粧水くらいはつける。エクレアは私が何を使ってるか知りたがった。



「お嬢様は100%天然無添加ですわ。口に入れても安心なのです」

「そういえば朝もお顔を洗って髪の毛を整えておしまいですからね」

「嘘でしょ……肌とかどうやったらそんなになるの? 」

「よく寝るとか……?」

「私もよく寝てるけどお肉がつくだけだよ〜」



それは食べた後寝るからじゃないだろうか。

フェリスは本当によく寝る。私の部屋に来ても遊んだりしてるうちに寝る。釣られて私も一緒に寝てたりする。



「じゃあ香水は? すごく良い香りがするわ」



香水はつけてないからシャンプーかな? それとも洗剤か何かだろうか。



「お嬢様香です」

「お嬢様香!?」

「それって体臭ってこと?」

「お嬢様が毎朝お飲みになるスムージーに体から良い香りがするようになる成分を入れているのです」



衝撃の事実である。私はそんなに匂うほど体臭を撒き散らしてるのか……。

ひょっとして元は臭かった?

急に恥ずかしく思えてきた。

フェリスが私の匂いを遠慮なく嗅ぎにきたので猫耳をコリコリしてやった。



「あはは、トモシビちゃんくすぐったい」



知らぬ間に私を改造していたエステレアは請われるままにレシピを教えている。



「これはお嬢様に合わせたブレンドですので個人に合わせて変えた方がよろしいかと」

「バラの花にハスの花? どこで売ってるのかしら」

「ああ、ハーブティーのお店にありますよ。結構高いですけど」



……ピンときた。これをプレゼントしたら良いのではないだろうか。



「じゃあうちにあるの分けてあげる」

「いいの?」

「いっぱいあるよね?」

「ぬかりありません」



やっぱり相手を知るのは大切だ。話さなきゃ何も分からなかった。

お屋敷で知らない人と会食するときでもこのくらいは話せたらいいのだが……。



「はい! あーしはシャンプーとか何使ってるのか知りたいでーす」



ギャルっぽいトルテが勢いよく質問してきた。彼女はたぶん教室でもこんな感じなんだろうなと思う。



「そんな長いのに毛先までトゥルントゥルンじゃん。赤いとこは染めてないってほんと?」

「本当」

「おかしいでしょ!カラーリングから庶民と違うじゃん、そりゃ目立つって」

「ちょっと!トモシビ様に失礼なこと言わないで!」



エクレアが憤慨している。本当になんでこんな色してるんだろう? キャラメイク……ではないとして。



「ごめん、でも本当に目立ってるよ。あんたらが歩いてたらみんな見てる」

「Bクラスの男どももさあ、あんた達の話けっこうしてるんだよね。セレストエイム様だけじゃなくて」

「私たちも?」

「メイドさんの胸がどうとか、いつも百合ん百合んしてるから混ざりたいとか」


「気持ち悪いです」

「しねばいいですのに」

「百合ん百合んってなぁに?」



クロエ、エステレア、フェリスがそれぞれの感想を述べた。しかしこれほどの美少女揃いでいつもいっしょにいたならそんな妄想もするだろうとは思う。男とはそういうものだ。まあ、悪口よりはマシと思うしかないか。



「そ、それよりトモシビ様の髪の毛はどんなお手入れしてるの? 」



空気に耐えかねたエクレアが話題を元に戻した。何かしていただろうか? 家にあるのは市販のシャンプーとコンディショナーとトリートメントだ。



「トモシビちゃんの髪の毛触るの私好きだよ」

「それはわたくしたちみんな好きですわね」

「櫛で梳かしてても全然引っかからないですよね」

「普通に洗ってるだけでこんなにならなくない? ヘアオイルとか使ってないの?」



髪の毛は私の自慢である。枝毛の一本すらない。サラサラで細やかなのに毛先まで纏まっている完璧な髪だ。どういうわけか魔力を通す事もできる。

洗う前に梳かすとか、濡らしたまま放置しないとかは気をつけてる。櫛が良いのかも。



「お嬢様セラムです」

「お嬢様セラム!?」

「お嬢様から分泌される大変髪や肌に良い美容成分です」

「……ええと、冗談ではなくて?」

「はい。私はお嬢様との触れ合いの後お肌の艶が目に見えて良くなっていることに気づきました。また、お嬢様と自分の髪の毛を同時に洗ったところ、私の髪の毛がお嬢様のようにサラサラツヤツヤになりました」



エステレアがおかしなことを言い始めた。あまりの常軌を逸した発言に皆顔を見合わせている。



「でもたしかに、トモシビ様とエステレアさんはいつも一緒に髪を洗ってます。そしてたしかにエステレアさんの髪の毛もお肌もツヤツヤになってます」

「そういえばトモシビちゃんが尻尾触った後はすごく毛並みがいいような……それに……」

「わたくしもトモシビの髪の毛を弄るようになってからハンドクリームがいらなくなりましたわ」

「全てお嬢様セラムによるものです」



……本当だろうか? 私の身体は一体どうなっているんだ。そんなよくわからない物質を知らずに垂れ流していたなんて。

アナスタシアやトルテはもう珍獣を見るような目になっている。



「じゃあセレストエイム様とお風呂に入ればいいの?」

「……そういうことだよね」

「ず、ずるいです!だからいつもエステレアさんがトモシビ様とのお風呂独占してるんですね!」



クロエがメイドになった後も入浴の世話はエステレアの仕事である。私としては全て分かってるエステレアに任せるのが一番なのだが。



「失礼な!私がお肌や髪のためにお世話をしていると思っているのですか!!」

「い、いえ、そこまでは……すみません」

「エステレアさんの忠誠は疑いようがありませんよ」



と、メイ。

エステレアは奇行が目立つが、それは私への行き過ぎた愛情が暴走しているのだ。たぶん。

だから私も同じくらい愛おしく思ってる事を伝えようと思うのだが恥ずかしくてできない。



「ありがとうございます。でもクロエもそろそろ湯浴みのお世話を教えても良いかもしれませんね」

「本当ですか!?」

「あーしも一緒に入りたーい」

「みんなで入ろ」



たまにはそういうのも良いだろう。湯船が狭いので2、3人ずつ入るしかなさそうだけど。



「そ、それなら私も……」

「エクレア目やばいよ」

「もう完全にそっちに目覚めたのね」

「でも貴女達もトモシビセラムとかいうのに興味あるでしょう。みんなでお城でお泊り会したらどうかしら?」

「まじで!?」



一瞬にして皆乗り気になった。

一般人としてはお城に上がる機会自体が希少なのに、お風呂にお泊りなんてよほどのお客様しか許されていないはずだ。


しかし、一体私をどうするつもりなのか。湯船に浮かべて入浴剤代わりにするのだろうか。

というか、私から分泌されるその変な物質って要するに汗とか皮脂では……?

私は変な匂いだけでなく変な物質も知らずに垂れ流していたのだろうか。

奇跡的に良い効果があるからまだ良いが、逆に臭くて肌に悪いとかだったら迫害されてそうである。



「心配しなくても別に変なことはしませんわ。一緒にお風呂入って戯れるだけ」



と、アナスタシアが私の頭を撫でた。

浮かない顔をしてる理由を勘違いしたらしい。

いや勘違いというわけでもないが。



「それにしても本当に不思議な子ねぇ。何がどうなってるのかしら? このほっぺからもその何かが出てるの?」



むにーっと頰を引っ張られる。私にこんなことができるのはアナスタシアとギリギリでフェリスだけだ。

エステレアはある意味もっとやばいことするけど。



「ひゃめて」

「ふふ、トモシビは私のベッドで一緒に寝るんですのよ。楽しみね」



もう出ましょうか、と言って立ち上がるアナスタシア。いつのまにか時間が経ってしまった。

ちなみにヤコ先生は酔い潰れて寝ている。威厳のない教師である。


今日は私も頑張った甲斐があり、普段と同じかそれ以上に喋ることができたと思う。アンとトルテの事も知ることができたし、自分の体の謎は増えたが……何より楽しかった。このチームならうまくやっていけそうだ。

私達は、二次会行くと騒ぐ先生を馬車に放り込んで帰路に就いたのであった。



パーティーやイベント開いたり計画したりする人ってすごいですよね。コミュ力お化けだと思います。私にはとてもできない。

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