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ダンジョンを攻略します

※8月24日、文章校正しました。



ヒンヤリとした空気が私のマシュマロみたいな頬を撫でた。

隣に着地したフェリスの尻尾が私の尻尾絡む。

魔導具のランタンに火を灯すと白っぽい壁がふわりと浮かび上がった。



「フェリス、なんかいる?」

「この辺にはいないみたい……奥からはゴソゴソ音がするよ」

「またゴーレムですかね?」



男子がドタドタ走って奥へ進んで行く。

ツリ目達だ。



「罠とか、きをつけて」

「わかってんよ!」



ツリ目達は全くわかってなさそうな返事をして奥へと消えて行った。

まあ彼らも1年以上もの間部活だの何だので実戦経験を積んできたのだ。

見た目ほど迂闊ではないと思う。

私は歩を進めながらマップを開いた。

光点がひしめき合いながら広い通路を進んで行く。



「人多すぎじゃね?」

「そうねえ……でも規模によってはこれでも足りないかもしれませんわね」



発見当初、腕に覚えのある村人が冒険者を伴って少しだけ中に入ったらしい。

それによるとこの大通路はいくつも横道があり、そのどれもが底が見えないくらい深かったそうだ。



『お嬢、横道に入るぞ。見えてるか?』

「みえてる」



ツリ目達が早くも分岐にたどり着いたみたいだ。

光点がいくつか本流から分かれて支流に入って行く。

これからが本番だ。

それから次々と横道が見つかり、その度に何人かを送り込むこととなった。

分岐が多いので各チームに探知能力者を配置することはできなかったが、そこはエル子の虫を付けることでカバーできた。


私達本体は神殿みたいな柱の立ち並ぶ大通路を進んで行く。

先頭はメイ、その次にフェリスだ。



「……崩落しております。お気をつけ下さい」



メイがかざすカンデラが瓦礫と土砂の山を浮かび上がらせた。

天井ではなく真正面の壁が崩れたものらしい。



「元々行き止まりだったのかしら?」

「隠し通路だったんでしょうか?」

「ラッキーじゃん。勝手に崩れてくれるなんて」



勝手に崩れたにしては……瓦礫があまりない。

というか脇に除けられているように見える。

誰かが通ったのだろうか。

私が訝しんでいると通信が鳴った。



『お嬢、デカイのと遭遇した。応援くれ』

「どんなの?」

『体が長くてでかい!』



ツリ目だ。珍しく助けを求めているらしい。

マップから近場にいる人を探して連絡を取ってみる。



「アスラームかバルザック、いける?」

『忙しいんだよ。自分で何とかしろ雑魚』

『こちらも蜘蛛の魔物の群れと戦ってる。時間がかかるよ』

「……わたくしが行きましょうか。トモシビはここにいて」

「まって」



私は予備の剣を取り出すと、エクスプロージョンのリンカーを付与した。



「合図くれたら、発動してあげる」

「頭に刺せば良いんですわね」



大きな敵にはこれが効果的だ。

私が行っても良いんだけど、オペレーターができるのも私しかいないので私はいざという時に備えておくべきだろう。

アナスタシアのチームが救援に向かい、私のチームはこの瓦礫地帯で休憩することとなった。







『グレンだ。こっちは終わった。救援は?』

「大丈夫、進んで」

『別れ道だが』

「じゃあ右」

『トモシビ、おねがい!』



アナスタシアの合図でリンカーをリリースすると、通信から篭った爆発音が聞こえた。

仕留めたらしい。

勝利の声を聞いて私は紅茶を一口飲んだ。

基本のロイヤルミルクティーだ。



「はい、お嬢様」



エステレアの差し出した一口サイズのスコーンが私の口に運ばれる。

クロテッドクリームとジャムのたっぷりついたそれを味わい。

また紅茶を飲む。

みんな頑張ってる時にこんな風に過ごすのは悪い気もするけど、生粋のお嬢様たる私にティータイムは欠かせない。



「でも隠し通路があるのに横道も深いんですねえ」

「普通隠し通路の方が正解だよね」



王道的な作りと見せかけて中身はかなり凝った迷宮なのかもしれない。

今までの遺跡とはちょっと違うらしい。

そもそもこれが隠し通路なのかも疑問だ。この瓦礫の多さからしてよほどの厚さの壁があったのではないだろうか?

ただ破壊されて繋がっただけかもしれない。

そんなことを考えながらまた一口紅茶を飲む。

その時、フェリスが弾かれたように頭を上げ、猫耳が奥を向いた。



「トモシビちゃん! 奥から来るよ!」



魔物だ。フェリスの表情からすると結構危険かとしれない。

私はカンテラの光を収束し、瓦礫の先の闇に向けた。



「……やば」



エクレアが呟いた。

通路の先が白い。

ぬらりとした質感の白い物体がこちらに迫ってきている。

魔物だ。魔力を感じる。

ヌメヌメと光る顔は目も鼻もない。

ミミズかと思ったがどうやら足があるらしい。

ヒタヒタとした足音がもう私にも聞こえてくる。

つまり……この通路の幅とほぼ同じくらい巨大な魔物が向こうから走ってきてのである。



「さがって」



私は冷却魔法陣を展開した。

レーヴァテインを撃てば1発で片がつく。

逃げ場はない。

この魔物を頭からお尻まで貫いてはるか後方まで焼き尽くしていくだろう。

崩落が怖いけど……仕方がない。


私の中から漏れでる灼熱の光が前方に放たれる寸前、目も鼻もない顔の口がカパっと開いた。

視界が白く染まる。



「……?」



変わった魔力を感じる。嫌な予感がする。

光が消える。

目の前にヌメヌメした白い壁があった。

衝撃が体に走った。







「くっ……」

「トモシビ様!?」



頭上からみんなの声が聞こえる。

4人は無事らしい。

いくら道幅いっぱいと言っても上や下に少しの隙間はある。

そこに入り込んだのだろう。



「大丈夫」

「お嬢様! ご無事で!?」



一方、私は地面の下にいた。

私にそんな超人みたいな運動神経はないので、咄嗟に土の魔術で穴を掘って落ちたのだ。

無事を喜ぶも束の間、白い魔物が体をくねらせて暴れ始めた。

誰も倒せなかったことに気付いたのだろう。

だが足が止まればこっちのものだ。


私の周囲に″窓″が展開する。

白い魔物がビクンと硬直した。

そして次に全身の力が抜け、ズシンと音を立てて沈む。

落雷を体内に送り込んだのだ。これに耐えられる生物は早々いない。

魔力が霧散していくのがわかる。



「お嬢様、お手を……」

「ありがと」



エステレアに穴から引っ張り上げてもらう私。

……危なかった。

レーヴァテインがかき消されるとは思わなかった。

一歩間違えたら死んでいた。

変わった霊術を使う魔物だ。

頭部を保存して魔導院に持っていこう。

わざわざ落雷で倒したのはそのためだ。なるべく原型を残したかったのである。

私はこの細長いウーパールーパーみたいな魔物を観察するべく回り込んだ。

その時だった。



「トモシビちゃん! 下がって!」



フェリスが叫ぶ。

バシッと音がした。

見ると、何か黒いものが先ほど倒したウーパールーパーの体に巻きついていた。

思わず魔物の死体から飛びのく。

黒い……なんだろう? 触手のように見える。

ズズッと死体が動いた。すごい力で引っ張っているようだ。

触手は奥から来ている。

死体が持ち上がった。引っ張り込むスピードが上がる。

ドラゴンほどもある魔物の死体が飛ぶような速さで持っていかれる。

それを息を呑んで見ている4人。

一方、私はスカイドライブを発動した。



「トモシビちゃん!?」

「つかまって」



このままでは見失ってしまう。

どう考えてもこの触手は脅威だ。

暗がりからあの速さで奇襲されたら厳しい。

追いかけて正体を見極めるべきだ。

私と4人は闇に消えようとする死体と魔物に向かって疾走した。




ダンジョンってリアルに考えると怖いですよね。

ただの洞窟探検ですら怖いのに危害加える生き物がいたら恐怖しかないと思います。

トモシビちゃん達は勇敢ですね。


※次回更新は8月31日になります。

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