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修学旅行に行きます

※5月18日誤字修正&文章校正

※5月31日誤字修正、ご報告ありがとうございます。



「トモシビちゃん、トモシビちゃん……」

「うー……」



ほっぺをザラザラしたものが擦る感触で私は目を覚ました。

ピチャピチャ音がする。

頬が濡れてる。

これはフェリスの舌だ。

また寝ぼけて私のほっぺを舐めてるらしい。

私は彼女の猫耳を引っ張って抗議してみた。



「おはよ」

「あ、えへへ……おはよ、トモシビちゃん」

「私、おいしい?」

「トモシビちゃんは味じゃないんだよ〜」



抱きついてスリスリしてくる。

フェリスはおよそ猫らしくない性格をしている。人懐っこくて甘えたがりなのだ。


ここはミササギの街にある旅館である。

昨日は温泉に入った後、みんなで浴衣みたいなのを着て布団で寝た。

畳に布団を敷いて寝るなんて何年ぶりだろう?

布団をくっつけて中を移動したりしてとても楽しかった。

そしていつのまにかフェリスと一緒に寝てしまったらしい。



「お嬢様、お召し物が乱れ尽くしております」

「ほんとだ」

「みんなそうですけどね」



羽織って帯で締めるだけという浴衣の仕様上、動けばそれだけ乱れる。

具体的に言うと、はだけて下着が丸見えになる。

私は両側をぐいぐい引っ張ってキャミソールを隠した。

こういうのも旅館の醍醐味だろうか?

流石にエステレア達はもう整えているが、まだ寝ているアナスタシアやエル子などは酷いものだ。



「待ち合わせって何時だっけ?」

「後1時間くらいですね」

「エル子、おきて」

「んー!」



エル子を起こそうと揺さぶったら威嚇された。

起こされるのが嫌で寝ながら無意識にやっているのである。

そのまま体に布団を巻きつけて絶対に起きないという意思表示まで始めた。

手に負えない。

鼻を摘んで息できないようにしてみる。



「ふごっ」

「……おきた」

「何してんの!? 死ぬでしょ!」

「支度しよ」



今日は街を観光する予定なのだ。

クラスみんなで修学旅行みたいに回る予定だ。

ちなみにこれは私の提案だったりする。

魔法学園には修学旅行みたいなのがないので、この機会に作ってしまおうと考えたのである。


二国と同盟を結ぶという成果を上げた私だが、当初の目的である魔王軍への対応は中途半端なままだ。

彼らはまだウルス国に留まり、与えられた餌を食べて寝るという引きこもりニートのような生活をしている。

私も似たような生活をしていたのであまり悪くは言えないのだが……今の状態だとはっきり言って迷惑だし、同盟国となった以上ウルス国も捨てては置けない。

どうしたものかと考えていたら、アナスタシアが提案してくれた。



「援軍を待って、彼らと共にドラゴンを連れ帰れば良いのではなくて?」



そうだった。

議会が援軍を送ってくれたのだ。

ドラゴンを説得するにしろ力付くで従わせるにしろ、戦力は多い方が良い。

とりあえずグランドリアの援軍を待って、それからどうにかしようという事に決まった。

つまり、それまでは自由に観光ができるというわけだ。







「ヒャッハー! 街だ!」

「すげえ! 臭いが違うぜ!」

「像きめえ!」



男子がはしゃいでる。

ここはウガヤフキアエズ国の首都、ワダツミの街だ。

彼らは勝手に走りまわったり写真を撮ったり、やりたい放題である。



「像にらくがき、しないで」

「え、ダメなのか?」

「あと通行人、おどさないで」

「あっちが睨んでくるんだよ」

「君も大変だね」



と、アスラーム。

彼のクラスは大人しくて統率が取れている。

羨ましくもあるが、私も皆で行動してる感があって楽しいものだ。

もう私の言うことも皆ちゃんと聞いてくれるようになった。

それがまた嬉しい。



「僕も観光なんて久しぶりだからちょっと心が浮ついてるよ」



いつものように規律を守れって薫陶してほしいのだが、そのつもりはないらしい。

観光地をリストアップした修学旅行のしおり″窓″を出して、最初の目的地を見てみる。

『星送り遺跡』と書いてある。

私はどっかで聞いた名前だと思いながら、皆を引率するべく爆竹の魔術を使用したのであった。







街の各地にある転移装置から郊外に出てしばらく歩くと岩山みたいなのが見えてきた。

その岩肌を削った絶壁みたいな所に洞窟みたいな入り口がある。

これが星送り遺跡らしい。



「星送りか、グランドリアのお祭りと同じだね」

「だからリストに入れたのよ」

「全体、せいれつー!やすめー!」



入り口の前に陣取って私は声を張り上げた。

整列はしなかったがとりあえず皆こちらを注目した。



「注意じこう……飲食物は、ご遠慮して、いただく……ます」

「……おう」

「ベビーカーの入場は、おことわり。13歳以下は……保護者の同伴が、必要」

「お嬢入れねえな」



ほんとだ。

……どうしよう。

こんな罠があるとは思わなかった。



「エステレアぁ……」

「お嬢様はちっちゃくて可愛すぎるので、私とおててを繋いで入りましょうね」

「フェリスさんとエル子さんもわたくし達が保護者になれば良いですわね」

「うん〜」

「しょうがないわね」

「おい、もう行くぞ! 良いだろ?」



私の許可を待たず、駆け込んでいくクラスメイト。

観光地だからって危険がないわけではないと思うのだが、エネルギーの有り余る彼らはそんなの関係ないとばかりに暗闇に突っ込んで行く。

そんな彼らの後に続いて、私はエステレアと手を繋ぎながら洞窟遺跡へ足を踏み入れた。







「この冷たい空気、ジェノバを思い出すわ」

「また隠し部屋あったりするかもよ」



マップを見る限りでは……怪しい場所はなさそうだ。

私もあわよくば、と思っていたのでちょっとがっかりしている。

洞窟は起伏もほとんどなく平坦だ。

壁に反響して男子の声が聞こえる。魔物もいないようだ。

こう騒がしいと緊張感も次第に無くなってくる。

そうしてあまり深くもない洞窟遺跡をズンズン進み、私たちは最奥部と思われる場所に到達した。



「わ、寮の下の遺跡にそっくり」



フェリスが感嘆の声を上げた。確かに似てる。

さっきまで飾り気のない洞窟だったのに、ここはちゃんと遺跡してる。



「古代ではここも交流があったのかもね、南の大陸みたいにさ」

「スミスさんに教えてあげよっか」



なんでここだけ作りが良いのか?

それは床を見ればわかる。

複雑な文様が装飾のように床に描かれている。

魔法陣……の残骸だ。

所々焼け焦げたみたいに掠れて読めなくなった魔法陣、これが私の本来の目的である。

タマヨリに教えてもらってから、そのうち行こうと思っていたのだ。

男子の奇声や話し声を響く中を歩き回って魔法陣を撮影する。

予想通り、各地にあるやつと同じだ。

タマヨリによると、これは少し前に流れ込んだ巨大な地脈の影響で魔法陣が焼け飛んでしまったとのことだ。

できれば完全体を見たかったのだが、こればかりは仕方がない。

私は″窓″を開き、今まで見つけてきた魔法陣にこの魔法陣跡を重ね合わせてみた。

これである程度の復元はできるはずだ。



「どう? トモシビちゃん」

「……これ、学園タイプ」



学園迷宮の魔法陣は一つ、ジェノバ遺跡の魔法陣は2つあった。

前者と同じ機能を後者は二つの魔法陣で実現している。

つまり学園タイプとは二つに分かれていない魔法陣という意味だ。

面白くなってきた。

私の魔力の操作範囲は常人より広い。

地面に魔力で魔法陣を描くなど朝飯前である。

私の魔力で焼け飛んだ部分を補って、擬似的に復元するのだ。



「だ、大丈夫なんですか?」

「大丈夫」



地脈を集める魔法式は無視する。こうすれば復元した途端焼け飛ぶなんてことはなくなるはずだ。

渦を巻くような独特の圧縮魔法陣を丁寧に描き、石の地面の私の赤い魔力を浸透させていく。

騒いでた男子も大人しくなって見守り始めた。

出来上がった魔法陣の私の魔力でできた部分が光る。

その光はすぐに霞んだ本物の魔法陣の部分に伝染し、魔法陣全体がぼんやり光を放ち始めた。



「ほ、ほんとに大丈夫?」



……大丈夫のはずだ。

魔力はほとんど使ってない。

これで発動するならどこの遺跡も発動し放題のはずである。

焼け焦げた渦巻きの一部で光が本当に渦巻きのように回り始める、そしてそれは私の補った部分を巻き込んで大きな渦になる。

渦巻きの中心は私だ。



「あ」



衝撃が私を襲った。

肉体的な衝撃ではなかった。寝ている時にビクッとして起きるような、そんな感じ。

意識が覚醒したかのようにクリアになっていく。

ハイポーションとか飲むとこんな感じになるのだろうか?

なんだろう? 魔法陣は発動させてないはずだ。魔術は描いただけでは使えない。

現在が引き伸ばされ、止まった時の中のような一瞬で私の頭の中に様々なイメージが過ぎって……すぐ止まった。



「……何も起きないですわね」



アナスタシアがホッとしたように言う。

皆には何も起きてないように見えたようだ。



「お嬢様、尻尾をそんなにお立てになっては……」



お尻を見ると、尻尾がピンと立って下着が見えかけていた。

慌てて尻尾を下げる。

そんな感覚はなかった。完全に無意識だ。

……しかもなんか大きくなってる気がする。

魔力を操作して元の大きさに戻す。


まあ、とりあえず動画は撮れた。

これを教えてあげたら本格的な復元もできると思う。

私達はうんともすんとも言わなくなった魔法陣から離れ、出口へと歩を進めたのであった。




トモシビちゃんは子供なので、危なそうな所は保護者が必要です。今更ですけどね。


ところでお気に入り数が1000超えました!すごい!

ありがとうございます。完全に皆様のおかげであります。

長くなるのでお礼は改めて活動報告の方に書かせて頂きます。


※次回更新は5月24日なります

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