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ドラゴンを調教しました

※1月18日誤字修正、ありがとうございます!



今、私の″窓″にはペットという項目がある。

パーティー機能がゴーレムからの謎のアップデートによって拡張されたものだ。

そのペット欄には既にスライムとゴーレムのきなこもちとマンティコア4匹の名前がある。

人間は登録できなかった。

どうやらこれは魔物専用らしい。

おそらく、ゲームのモンスターテイミングのようなシステムを参考にして作られたのだろう。

作ったのはおそらく聖火神と呼ばれていた人物の可能性が高い。


クロエの話によると聖火神は私のように先っぽだけ赤い銀髪だったという。

私と同じようにこの世界の外から来て、私と同じ″窓″を持っていたのだろう。

そして私と同じ魔力の質を持っていた……そんな人間がそう何人もいるとは思えない。

ならば聖火神は魔王だった可能性が高い。あのカサンドラの態度もそれを裏付けている気がする。


いや……彼女に聞けば普通に教えてくれそうなんだけど。

まあ、わざわざ騒ぎ立てるようなこともない。昔の話である。

ともかく今言えることは、このペットシステムは便利だということだ。

私はペット欄の″窓″を開き、魔力を込めて操作した。


複雑な魔法陣が展開し、目の前に私の身長を超えるほど大きくなったスライムが現れた。

なんとこの″窓″は登録したペットを召喚できるのである。

今頃、生物室でアスカが慌ててるかもしれない。

ちなみにペットは魔物専用らしい。人間は登録できない。

やろうと思えば人間を召喚できるように改造も可能だとは思うが、迷惑なので実際に召喚することはないだろう。

召喚はやはり魔力を大量消費するが今の私なら余裕を持って使える。



「スライム、魔力いっぱい?」

「いっぱいですトモシビ。使うのですか?」

「使うかも」



これから少し危険な相手と会いに行くのだ。

この前の遠征で捕虜にしたドラゴンである。

ドラゴンは王都からほど近い廃村を再利用したオーク村にいるらしい。

色々あって後回しにしていたが、今回暇ができたのでピクニックがてら会いに行こうというわけだ。

もし万が一戦う事になっても、私とスライムの魔力があればどうにかなる。

ちなみに子供が私用で城外に出るのは通常は許可されないが、カサンドラの冒険者証があるので問題ない。

権力で押し通るよりスマートで私好みなやり方だ。







街道に沿ってマンティコアの馬車を走らせる。

私はペットの項目を開いて、マンティコア4匹の個別″窓″を開いた。

そこにはマンティコアの健康状態や感情などが表示されている。魔力からわかる情報をヘルスメーターみたいに表示しているのだ。

私はマンティコア4体に″窓″を通じて強化をかけた。

流れる景色の速度が目に見えて上がった。

それからマンティコアの感情ステータスが喜びの感情を伝えてきた。



「そんなこともできるんですねえ」

「作ったひと、優秀」

「くふふふふ」

「ねえ、人間もペットにできたら便利じゃない? わ、私で試してみてもいいのよ?」

「だめみたい」



人間は無理だ。

既にオタで試した。魔物専用のシステムである。

魔物ができて人間ができないという技術的な理由もなさそうなので、おそらく作った人が倫理的な価値観でそうしたのだろう。



「そう……じゃあたまには私に座ってみない? 」

「うん」

「あ、お嬢様」



私はスルリとエステレアから降りて、エクレアへの膝の上に移動した。

がっちりと力強く抱き抱えるエクレア。



「ああ、この耳すごい手触り。可愛いわ」

「お嬢様……猫ちゃんになられたので気まぐれなのでしょうか?」

「でもフェリスさんは気まぐれじゃないですよ?」

「私は猫人だから猫じゃないよ」

「エクレア、私の騎士団、どんなかんじ?」



私は猫耳を撫でられながら聞いてみた。

エクレアには私の騎士団を任せてある。

私の騎士団は大部分セレストエイムにいるわけだが、交代でこの王都に数人出向してもらっている。

彼らは毎週エクレアと模擬戦をして、進捗を見てもらっているのである。



「形にはなってきたと思うわ。トモシビ様のクラスの……ほら眼鏡かけた人、あれと同じくらいかな?」

「微妙なレベルではありませんか」

「剣は良いんだけど、やっぱり魔法が足りないわ。独学は難しいみたい」

「そっか」



眼鏡は何人もいるけど、大体あのくらいの強さなら及第点だ。ただ魔法の習熟が難しいのなら、この先は伸び悩みそうだ。

誰か先生を付けたいところである。



「あと神術に目覚めた子が何人かいるみたい。クロエみたいにトモシビ様に祈って使ってたわ」

「え〜! クロエちゃんの宗教で目覚めたってこと?」

「そうとしか考えられないわ。不思議なんだけど……」

「正しく信仰すればトモシビ様のお声を聞くのは難しくありませんよ」



一体そのトモシビ様とは何者なんだろう。

私は語りかけた覚えはない。

そろそろ本格的に不気味である。

まあそれはともかく、回復役も得ることができたのは喜ばしい。私直属の騎士団もそろそろ実戦投入すべきかもしれない。


治安部隊、魔法戦クラス、それから信者など私の味方は大勢いるが、私が自在に動かせる正式な軍は彼らだけだ。

私が構想しているのは、スライムやドラゴンなど目立った魔物もそこに組み込んでしまおうということである。







猛スピードで進む馬車はさしたる時間もかけずに目的に到着した。

オークの生活する村の隣に何十メートルもある黒い塊が鎮座している。

これがドラゴンだ。



「トモシビ様、ヤバカワ」



馬車から降りた私達を潤滑油ことオーガ亜種が出迎えた。

オーク達は何事かと家から出てきて見守っている。まるで人間みたいだ。



「あなた達って何食べてるの?」

「魔物ニク、タベマス……視察、デスカ?」

「ドラゴンと、はなしたい」



私がそう言うと、オーガ亜種の返事を待たずにドラゴンが吐息を吐くような音を発してかま首をもたげた。

緊張が走る。

エクレア達が私の前に回った。

ドラゴンからテレパシーみたいに感情が伝わる。歓迎するでも嫌悪するでもない。

興味、が近いだろうか?



「まず、私のペットにしてあげる」



私はフワリと宙に浮くと、黒いドラゴンの鼻先に手を触れた。

シューシューと興奮した鼻息のような音が漏れている。

ドラゴンはペットと言われて少し怒りを感じているらしい。

素直に従うという感じではなさそうだ。



「お嬢様……」

「大丈夫」



害意は伝わってこない。少なくとも捕虜の立場は分かってるらしい。

ただ本当にプライドが高い。

私に落とされて降参したくせにまだ完全に従うのには迷いがあるのだ。

そんなドラゴンを見て私も少し……怒りが湧いた。

戦争とはいえ、このドラゴンはセレストエイム兵を大勢殺したはずだ。

それに私のお父様を取り囲んで殺そうした。

それでも命乞いを受け入れたのに……この態度は虫が良すぎるではないか。



「あなたは、何歳?」



すごく数が多い……みたいな感じ。何千歳かな。



「私は13歳……13歳に、屈服させられるのは、嫌?」

「フシュー……」

「でも、だぁーめ。屈服するの。私にふまれて、命令されて……ぜんぶ管理されるの」



明確な怒りの波動。顔も心なしか怒っている。馬鹿にするな、みたいな意思だ。

ドラゴンの口が開いて唸り声が聞こえてきた。



「グォォォ……」

「まず、調教してあげる」



真っ黒い″窓″がいくつも私の周りに展開した。

これはプラチナに使った改造日除け″窓″、すなわち魔力を同調させるための変換器だ。

私はその無数の″窓″から一斉に魔力を発した。

ドラゴンは戸惑っている。何をされているのか分からないのだ。



「みつけた」

「グ……!?」



苦しげに首を振るドラゴン。

私は鼻先から手を離した。

前回は精霊の魔力信号を私の魔力へと変換したが、今回は逆。

私の魔力を変換してドラゴンに効く信号を探ったのだ。

停止信号などではない。快楽中枢を刺激する信号である。

それを体内に″窓″を作って直接送り込む。



「逃げようとしても、だめ」

「グ、ギャアアアアア!!」

「ほら……ドラゴンなんて、こわくないよ?」



私はドラゴンを十分にいたぶってから、再び鼻先に手を当てる。

ゆっくり撫で回す。



「ペットになるの……私なしでは……生きていけなく、なっちゃうの」



そして頃合いを見て、最後に思いっきり強い信号を送った。



「まけちゃえ」



ピコン、とペット欄にブラックドラゴンの文字が現れた。

当初の予定とは違ったけどペット化完了だ。

ドラゴンは手負の蛇のようにぐったりと横たわった。

恐怖の感情が伝わってくる。

私はそのドラゴンの首筋あたりに腰掛けて、頭を撫でた。



「屈服できて、えらい……ね」

「シュー……」

「ペットにできたの? トモシビ様」

「うん」



私はドラゴンから降りて皆のところに戻った。オークは驚いて口を開けている。中には腰を抜かしてるのもいる。

その仕草がすごく人間っぽくてなんか可愛く思えてくる。

オーガ亜種は合掌して拝んでいる。こっちは人間的すぎて怖い。



「くふふ、さすがはトモシビ様……そのドラゴンは一番陰気で小狡くて私も悩まされました」

「シュー……」

「あら、恨まれる筋合いはありません」

「めすいぬ、仲良くして」



カサンドラはこのドラゴンの言いたいことが分かるらしい。普通に会話している。



「トモシビちゃん、名前どうするの?」



私はドラゴンを見た。

黒い……ほろ苦くて甘そうだ。

ショコラというのはどうだろう?

また食いしん坊すぎるとか言われるだろうか?

私の脳裏に昨日のエル子の言葉が浮かんだ。

…………。

でもエル子の方が食いしん坊だから。



「ショコラにする」

「美味しそうですねえ」



可愛いから良いのだ。

ここで食べ物系から変えたらまるで私が気にしてるみたいではないか。

こうして私のペットにドラゴンのショコラが加わったのであった。



ドラゴンは色が違いますけど、黒いと闇属性ブレスを吐くとかそんな事はないです。

全員熱線を吐きます。

でも得意な魔法は違いそうです。


※評価が1000p超えてました! 本当にありがとうございます! 嬉しいし恐れ多いです。

※次回更新は1月25日になります。

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