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転生画家は旅をする  作者: 空穂
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異世界の全てをかきあげます!

今でも思い出す。絵の具の独特の匂いが漂う教室に、夕日のオレンジ色に染まる少女の姿を。彼女はこちらに気付かず一心不乱に絵筆をすすめている。差し込む夕日のオレンジとは対称的に描かれる絵は青い世界だった。その対比がとても美しく、さながら別世界のようだった。

私は彼女にもう下校時刻だと告げる。それに返事はすれど彼女の手が止まることはない。その姿がまた私の中で美しく記憶されていく。そして青い世界は少しずつ完成に向かっていく。だが無情にも下校時刻になりその日、完成を見ることは叶わなかった。


・・・


『お疲れ様です。貴方の魂は地球での1000回目の人生に終了しました。これより転生先を選べます』

その声で意識が浮上する。懐かしいあのオレンジと青の世界が終わり寂しいような悲しいような感情を感じながら目を開ける。そこには一人の青年がたっていた。いや、おそらく青年だと思われる人物だ。髪は長く白い。腰までの長さをひとまとめにし肩から手前に流している。目はハッキリとした二重にすっと高い鼻。口はあまり大きくなく目とバランスがとれている。瞳は真っ赤で力強さが感じられた。ただ表情はかった。肩幅があるからおそらく青年だと思うがその美しさに女性にも見える。

『田中 満さん、享年83歳。肺がんによる病死。覚えていらっしゃいますか?』

青年は優しげな声色でこちらに声をかけてきた。

「……はい。覚えております。タバコの吸いすぎから肺がんになり病院で緩和ケアをしておりました。享年ということはもう私は死んでいるのですね?」

『はい。理解が早く助かります。今貴方は天界にいます。そして私は神と呼ばれる存在です。ここまではよろしいでしょうか?』

自分という存在が死んでしまったことへの悲しみを感じる暇なく神と名乗った彼は話をすすめる。もともと肺がんを患った時点で覚悟はしていた。それよりも83歳まで生きれたということのほうが驚きだった。

タバコは何度もやめようとした。だがどうしてもやめられなかった。禁煙パッチも禁煙外来も水蒸気タイプのタバコもどれも最初は頑張れたが結局長続きしなかった。そして50歳を越えたあたりでもう諦めた。その代わり人様の迷惑になるようなコンビニ前や食事処などは控え、もっぱら自宅のみで吸っていた。まぁ結局吸っているのには変わらないのだからあまり意味はなかったが。

『田中さん?お話を続けてもよろしいですか?』

「これは失礼しました。ついタバコについて想いを馳せておりました」

ぽりぽりと頭をかきながら神と名乗った青年に目線を向ける。そういえば話の途中だったのだ。

『では続けます。貴方の魂は地球での1000回の人生に終了しました。私が地球を作り出したときに決めた掟として、1001回目の人生はお好きな世界に転生させることとしております。ですので次の転生先をお選びください』

声は優しげなのに表情ひとつ変えず淡々と説明を受ける。あまりにも表情が変わらないので機械と話をしてる気分になってきてしまった。とりあえず転生先は以下の通りらしい。


1、剣と魔法と魔獣がいる世界

2、剣と魔法はあるが魔獣はいない世界

3、何もない世界

4、地球

5、天界で仕事


正直5は論外だと思った。この無表情の神のもと仕事をするのはどれほど苦痛だろうかと。想像だがおそらく神の部下も少なからずいるだろうがきっと無表情だと思う。機械と話してるみたいに仕事をしていると自分まで機械になりそうだった。

次は4の地球もあまり選びたくない。せっかく他の世界に転生できるのに地球を選んだらつまらないだろう。ただ3の何もない世界も楽しみもやりがいも無さそうだから却下である。

あとは1と2の剣と魔法と魔獣がいるかいないかの世界だ。男なら剣や魔法に憧れを抱かない者は多くないだろう。ただ自分の姿を見下ろす。きっと魂はこのままで新しい身体の自分がその世界に産まれ落ちるのだろう。その時に本当に剣や魔法を駆使し自分は魔獣と相対できるのだろうか。うーんうーんと悩みながらちらりと神をみる。相変わらず無表情に近い顔でこちらを見ていた。

『お決まりになられましたか?』

「いや……1か2か迷っていましてね」

『なるほど……では詳しいご説明をしますね。まずの剣と魔法と魔獣のいる世界ですが、名前はアギレと申します。こちらの世界はスキルや攻撃魔法の発達が盛んで多くの者が戦闘者となり魔獣を討伐しています。戦闘者とは…そうですね、地球風に言うと冒険者や勇者などに該当しますね』

神が手を振ると目の前にアギレという惑星が表示される。そして惑星の横には狼型の魔獣と戦う多くの戦闘者の映像が流れる。汗を飛び散らしながら魔獣に切りかかる屈強な男に後ろから援護射撃をする女魔法使い。魔獣は狼より一回りも大きく鋭い牙をもち、額に一本の太い太い角があった。口からはヨダレが垂れ落ち目は血走り、その姿は確かに獣と言うにはあまりにも醜かった。その横には別の戦闘者が魔獣の皮を剥ぐ映像も流れている。必死に戦い勝ち得た獲物獲得に笑う姿はかっこよくも見えた。醜くい魔獣ではあったが戦闘者が必死に戦う姿は確かに男心をくすぐる映像だった。

『次は魔獣のいない世界、リースです。リースは剣は暴漢や盗賊対策に、魔法は生活魔法程度にしか発達していない世界です。魔獣がいないのであまり発達することがありませんでした。放牧や農業、文字など勉学はある程度の発達がみられます。しかし生活魔法があるせいか機械などの物はあまり発達しておりません』

神が反対の手をふると一人の男の子が映る。その男の子は牛の水飲み場になにもない手から水を出し注いでいく。おそらくあれが魔法なのだろう。さらにそのとなりでは教会で勉学に励む10人くらいの男女が写し出された。真剣な眼差しで何やら計算問題を解いていた。

『どちらになさいますか?』

どちらも魅力的ではあった。戦いの中に身を置き戦いを楽しむ、逆に牛や仲間とのんびりと生活するのよまた心地が良さそうだった。しばらく目をつむりどちらにするか考える。その時にふっとあのオレンジ色に染まる少女を思い出す。あの子は確か農家の家の子だったなと。その瞬間自分の中で決まった答えを伝えていた。

「魔獣のいない世界でおねがいします」

『わかりました。ではいくつか注意事項をお伝えします。地球の娯楽でよくあるチートはありません。才能は産まれたときの両親と努力によります。ただし私から唯一の祝福として今生の記憶は残しておきます。また両親の選別などは私のほうでは管理しておらず、完全なランダムです。もしかしたら不遇の子どもの可能性もあります。その時は今生の記憶を頼りに頑張ってください。最後に私と話をするのはこれで最後となります。何かご質問等はありますか?』

言われたことをひとつひとつ頭に刻み込む。そして何かわからないこと、知らなければならないことを考える。そしてふと思い付いた。この転生には何か意味があるのだろうかと。掟とは言ったが何かしなければいけないのなら聞いておかなければ。

「リース、でしたか?その世界で何かしないといけないことはあるのですか?」

『いいえ、ありません。この転生は勇者召喚や私の失敗からの死亡などではありません。掟としての転生です。ですのでただごく普通に一生を送っていただければそれで構いません』

「そうですか……何もないのならば自由に生きますね。少し楽しみです」

何もしないでいいなんて嬉しい誤算だ。自由に楽しもう。そう決心して神ににこりと笑うと神の顔がほんのすこし変わった。それはあまりにも不器用なニヤリ顔で少しおかしかった。

『ではそろそろおわかれの時間です。話の理解が早く本当に助かりました。ありがとうございました』

また元の無表情に戻ると私の胸をぽんっと押す。その瞬間淡い黄色の光が私の身体を包み込む。少しずつ視線が黄色の光に包まれながら神の姿を目に焼き付けた。無表情であまり親近感がなかった神だがあのニヤリ顔でただ不器用なのだと理解してしまった。もう会うこともないのがまた寂しくて。

「ありがとうございました。神様もお体にお気をつけて」

『よい人生を送ってくださいね』

神のその言葉と共に視界は全て黄色くなり完全に意識がなくなった。


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