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邪竜研究ノート。③~とあるドラゴンの雑記より~邪なる竜の箱庭。上

 ――――邪竜伝承。


 邪なる竜の箱庭イヴィルドラゴンズ・ガーデン


 其処(そこ)は、


 人間の侵入を拒むような、

 雲海を見下ろす峻険(しゅんけん)な岩山、

 毒を放つ底無し沼、

 または灼熱の砂漠、

 断崖絶壁を昇り切った天涯の地、

 痛い程の寒風吹き荒ぶ雪山、

 猛獣蔓延(はびこ)る密林の奥深く、

 大渦潮に囲まれた絶海の孤島などなど……


 数々の踏破困難な地を命懸けで乗り越え、更に深くへ進むと、その先に(ようや)辿(たど)り着けるという美しい幻想の庭。


 邪竜の守る箱庭には、壮麗なる絶景、美しい花々、美味なる果実、万病に効く薬草、(きら)めく宝石の数々が隠されていると()われている。


 邪悪なる竜は強欲に蒐集(しゅうしゅう)した宝の数々を独占し、何人(なんぴと)にも渡さぬよう守り、近付く人間を威嚇(いかく)して攻撃するという。


 そして、運良く邪竜を退け、それらの宝を手にした人間は英雄になれるのだとも謂われている。


 しかし、英雄や聖竜(ホーリー・ドラゴン)に追われた邪竜が箱庭を去ると、どれ程大切に世話をしようとも、箱庭の美しい植物の数々は直ぐに枯れ果ててしまう。それは、退けられた邪竜の呪いなのだとされており――――







 とある山の岩壁に刻まれた神聖言語での文字。



『ふはははははははっ!!


 われ さんじょうっ!!


 甘いものに 目のない のうみそ ハチミツづけな 甘とうやろうの おまえに、われが たんせい こめて つくった この びみなる くだもの たちを ほどこして やる。


 かんるいに むせび なきながら むさぼり くらうが いい。


 のんだくれ どらごんに かんしゃ せよ。』




 邪竜の日記と同じ筆…爪蹟? の神聖言語で刻まれた文字だと見受けられる。



 そして、同上の山の標高違いの場所にある洞窟内部に刻まれた神聖言語での文字が以下となる。




『山の岩壁に、箱詰めされた幾種類かの果物が沢山置かれていた。


 恐らくは――――というか、十中八九アレはロキからの果物だと思うのだが。


 なんだ、あの頭の悪そうな文言は。高笑いを伝言に書く意味はあるのか?


 全く、あの阿呆は覚えた変な言葉ばかりを使いたがって。困ったものだ。


 そして、飲んだくれドラゴンとはスカアハのことか? 感謝とは一体?


 しかし、箱に掛かっていた魔術は非常に面白い。


 果物は空気に反応、または自身の呼吸時に出すガスに()って熟成を促進するものが多い。

 熟成が過度に進むことで発酵。更に、そこに細菌が付くことで傷んだり、終いには腐敗してしまう。


 そのことを踏まえ、箱に掛かっていた魔術は真空状態の維持。そして、箱に入っている物体の代謝を極めて緩やかにする効果が施されていた。

 具体的には、一日の時間経過が箱の中では一時間程度になると言ったところだろうか。

 真空状態である為、真空中で生存し得ない生物は死亡するだろうが。


 触媒は箱に乗せられていた水晶。水晶を退()かせば魔術が解除されるようになっていた。


 それにしても、真空状態と代謝速度の低下に拠り、果物の熟成を遅らせるとは、ロキもなかなかやるではないか。


 今度、果物を採取したりドライフルーツを作ったときの保存の参考にしよう。


 そして果物は、ロキの言う通り大変美味だった。というか、今まで食したどの果物よりも甘かった。


 人間が育てし果物も、野生の果実その物よりは多少甘いのだが、ロキの育てた果物は、それを遥に越える段違いの味をしている。


 どのようにしてこの味を作ったのか、その方法を知りたいくらいに。


 林檎(りんご)蜜柑(みかん)、梨、葡萄(ぶどう)無花果(いちじく)、柿、クランベリー、ネクタリン、プラム、柘榴(ざくろ)木通(あけび)、キウイ、猿梨(ベビーキウイ)木通柿(ポポー)(なつめ)、プルーン。


 本当に、どの果物も今まで食したことが無い程に糖度が高くて美味だった。


 感動は覚えたが、さすがに泣きはしない。』



 ※注、現代語訳に力を尽くしたが、この意訳が真実適当であるとは限らない。



 飲んだくれドラゴンに感謝せよ、というのは、邪竜(イーヴィル・ドラゴン)古代竜エンシェント・ドラゴン林檎酒(シードル)を作るという約束のことだろうか?


 その、シードルを作るついで(以前、林檎の栽培から行った上、酒を仕込むとの記述があった)に、沢山の果物を栽培したから、そのお裾分けだったりするのかもしれない。

 または、聖竜の飼っていた養蜂の蜂を全て逃がしたことへのお詫びも含まれているのかもしれない。

 はたまた、お茶目な邪竜のことだ。果樹の交粉(こうふん)用に蜂を失敬して(以前に、蜂の引っ越し大成功という記述もあった)いたりもするかもしれない。


 いずれもわたしの推測の域を出ないが、このロキ(恐らくは邪竜)のことは、やはりとても愛らしく思えてしまう。


 ドラゴンが果物を育てる為に農作業をしているかと想像すると、とても微笑ましく思う。


 そして、この岩壁の神聖言語で記された手記? に登場している『ロキが邪竜(イーヴィル・ドラゴン)』で、『ウォーダンが聖竜(ホーリー・ドラゴン)』で、『スカアハが古代竜エンシェント・ドラゴン』であるという考えは、やはり間違っていないのではないだろうか?

 読んでくださり、ありがとうございました。


 すみません。夏バテてました。

 長く更新が無かったら、大抵体調崩してるかスランプです。ああコイツ、また調子悪いんだなと思ってください。


 次回、邪竜の大暴れ?です。

 そして、ウォーダンがロキにドン引き。

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