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辺りは、シンと静まり返った。
鳥の囀りだけが遠くで聞こえる。
私は目の前で俯いて座る自身の従者に、震える唇で問い返した。
「もう、一度…。もう一度、言ってもらえるかしら……」
彼はぎゅっと唇を噛み締め、声を絞り出す。
「私は、ルイス様を……、愛してしまったのです、お嬢様。」
彼はそう、私の友人への愛をもう一度呟いた。
今にも泣きそうな顔で俯き、苦しい胸の内を吐露する彼に、私は何を言えば良いのか分からなかった。
彼は二つの禁忌を犯している。
一つは使用人の身で、貴族に想いを寄せた事。
もう一つは。
「ルイスは………、男性よ、貴方と同じ。―――分かっているの?」
彼の眼からついには、涙が零れ落ちる。
彼の犯した禁忌。
もう一つは、同性愛が忌まれているこの王国で、同性に想いを寄せた事、だ。
分かっている、としっかり頷く彼を見て、私は天を仰ぐ。
彼は我が家の使用人。
この事実は彼一人の問題ではない。
私はやるせのない気持ちを込めて、強く拳を握り締めた。