鏡よ鏡、最終話
張ったお腹を誠に愛撫させることも、誠に抱かれることも、ひとみにとっては重要なことだったのかもしれない。妊娠中、夫の浮気に悩まされる女性は少なくない。
私は悩まないわ
身重な状態にあるパートナーを差し置いて、自由に行動する男たち。
身重な女だって、自由にやらせてもらう。男だけ自由ってのはおかしい。
「しかし、達成してみると…どうでもいいことだったな(笑)」
「せっかくズル休みしたことだし、飲むか」
缶ビールをふたつと灰皿をテーブルに置いた。この前、誠が忘れて行ったセブンスターに火を着けた。
「くらくらすんな〜あはは〜」
母親みたいになりたくない。いっつも、それだけでやってきたんだなあ。
父親みたいな男が悪いとはかぎらない。でも…良くはないわな…
「あはは」
今まで付き合ってきた男がベッドの上で、これからって時に、手とか口で無理矢理イカしたりしたのも、男に対して、どっか怨みみたいなもんがあったからなのかなあ…
男なんか全然偉くないじゃん。女も偉くないけど。
「秀ちゃんも誠くんもいままでごめんね。これからは無理矢理射精させたりしないで、ほどよいところでやめてあげるからね。あはは」
煙を吐き出しながら、ひとみは突き出た腹を撫で回した。
最後まで読んでいただいてありがとうございました。ラストの候補は幾つかありましたが、このかたちにしました。候補のひとつは、もちろんひとみの出産で終わるものでした。それは私にとって違和感があるラストでした。もうひとつ、「元気に生まれてくれなかった」ラストも少し考えましたが「それだと、ひとみさんがかわいそうすぎる」ので却下、です。
読んでくださる方の人生に役立つようなものは私には書けないな、ということが今回よくわかりました。それが一番の収穫でした。