この世界では勇者はたくさんいるようです
ダンジョン。それは、唐突に世界に現れ、魔物を排出する世界の悪。ダンジョンは階層ごとに分かれていて、下に行けば行くほど、魔素が濃くなり、魔物が強い。
人々は、ダンジョンを恐れ、避けて暮らしている…かというとそうでもない。危険なところにはお金が生まれる。世の中の論理である。
だから、冒険者は、自分たちの能力を過信せず、自分たちにあった階で、魔物を倒し、それの素材を売って暮らしていた。
だというのに・。それは先月の出来事
「るみあ。俺は…ダンジョンに行きたい。」
私は感動で震えた。ついに、ついに!勇者様が勇者らしくなったのだと。
そうだ。こうやってダラダラしてるわけには行かないのだ。なぜなら、まだ悪いことはしてないようだが、魔王復活の際に、魔王を倒すべく、鍛錬しなければならないのだ!
「俺はハーレム王になりたいのだ!その為には!実績がいる…。つーか、なんで、この世界勇者がたくさんいんだよ。」
勇者様の言葉に首を傾げる。
「なぜって…。自分が勇者だと名乗ったら、その瞬間勇者になるからでしょうか?」
「それがおかしいだろー!ただの冒険者じゃねーか。」
「でも、勇者と名乗る人には、半年に一回責務が訪れます。それが、ダンジョンの…一掃です。それが来月からの1ヶ月です。勇者と名乗るパーティーにランダムで1ダンジョンずつ与えられ…行かなければ死が。中途半端な強さなものは行っても死が訪れます。」
ダンジョンは一掃したからといって、無くなることは無い。
だが、ダンジョンの魔物があふれてきているのは事実で、それを食い止めろという無茶な命令だ。最下層までいけば、転移で、戻ってくることは可能だが、それまで帰ってはこれない。
つまり、ダンジョン内での寝泊まりが必須である。転移魔法や、アイテムはあるにはあるものの、街に戻る時オンリーの片道切符である。
一掃といっても全部の魔物を倒さなければいけないわけではない。最下層のボス…さえ倒せばしばらくの間、魔物は湧いてこない。
「こわっ。え、マジかあ。そーいえば、ギルドから通知来てたなあ。あ、でもちょうどいいじゃん。俺は…『異世界からの使者』だしダンジョンの攻略行こうぜ」
「ちょうどよくなんてないです。なんてったって…その通知…。勇者様の割り当てられたダンジョンは《色香の谷》」
過去の勇者と名乗る誰もが…攻略できなかった。つまりは、死んでしまった、最難関と言っても過言でないダンジョンだった。