幼少期編第一話
こんばんは、作者です。
あの二人の名前が決まりました。
ふと、体に感じていた心地いい揺れが止まったのを感じた
どうやら家に到着したらしい
「ん、、、。」
「おや、起こしてしまったか?もう少し寝ていても良いぞ?
俺がちゃっちゃと体とか洗っておくからな」
「ば、ばぶ(ゑ、あの)」
「流石に知らない奴の俺に、洗われるのは嫌か?
とりあえず、家の中に入るから少しだけ待ってくれよ。」
起きるといきなりそんなことを言われてしまった、、、って
待ってー!お願いします、ちょっと待ってくださいって!
仮にも私は、女の子なんです~!
家の中に入られる前にそう言いたいけれど、伝わりそうにない。
「ばぶっばぶぶ(待って、待って下さいってば!)」
「こらこら、暴れるなよ。もしかして、早くお風呂に入りたいのか?」
あーもう、なんでこんなに伝えたいことが伝わりにくいのかな。
ファンタジー小説なら、念話とかあるのに、、、
あ、そうだ念じて伝えようとしたらもしかして伝えられるはず!
伝われ!私の気持ち!
『ちょっと待ってくださいっ~!』
「っつ!?なんだ?誰の声だ!」
あれ、もしかして伝わった?
もう一度やってみよう!
『私です、今あなたの腕の中にいる赤子です!』
「ほう。赤子が普通、念話をしてくるか?」
『うっ、そ、それは確かに普通では無いかもしれませんが、、、。
とりあえず話を聞いてください!』
お願いです、信じてください。
私にはあなたしか、話を聞いてくれる人がいないんです!(泣
「話の掛け合いが出来ていると言うことは、やはりこの赤子か。
分かった、ひとまず信じて話を聞いてみようか。」
『ありがとうございます。では、一つだけ言わせて下さい
私、女の子の赤子なんですよ』
「ほう、それで?」
『一応、その、、、恥じらいがありましてですね、
あの、体を洗うってことは裸にされる訳ですよね?』
「そうだな、それ以外の方法は聞いた事がないな。」
あーやっぱり最後まで伝えないと、分かりませんかぁ。
すごく恥ずかしいけれどここは、腹を括るとしますか。
『あの、つまりはですね、男の方と予想されるあなた様に
裸を見られるのが恥ずかしいって事を申し上げたい訳でして。』
「ん?あぁ、なるほどな。男の俺に女の子として
裸を見られるのが恥ずかしいって事か?」
『はい、出来れば一人で入りたいところなのですが、、、
ダメ、ですかね?』
「一人で入りたい、と言うのは分かるんだがな。
今、君は赤子だろう?だから一人で入ると、、、溺れるぞ?」
あ、、、そうだった。今私は赤子なんだった。
確かに赤子のままだと溺れるかも、、、。
『あ、、、そうでした。』
「気持ちは分かるのだがな、とりあえず君の体は俺に洗わせてくれるな?」
『ぜひ、お願いします。』
「理解してくれたようで何よりだ。さて、家の中に入るか。
あぁ、そうだ。今使っている念話は、とりあえずそのまま使っていてくれ。
その方が、意思を確認しやすいからな。」
『分かりました。』
返事をするとその人の家と思われる、純和風の大きな屋敷に向かって歩き出した
立派な門構えの門をくぐるとそこは老舗旅館のような雰囲気で、
大小様々な敷石が玄関まで伸びており、
周りを見渡せば趣のある庭が広がっていた
『すごく綺麗な、お屋敷ですね。』
「そうか?普通の屋敷だろう。」
いや、たぶん普通ではないですよ。この大きさだと高級旅館ですって。
いったい何部屋あるんですか、このお屋敷は。
ガラガラガラ
玄関扉を開けてその人は履いていた下駄を脱ぎ、
奥へと続く明るく照らされた廊下を歩いて
脱衣所にに入った
「さて、と。服を脱がすぞ」
『え、待ってください。心のじゅn――――』
言い終わる前に服を脱がされ、お風呂に連れていかれ全身を洗われた。
お風呂は檜風呂で、檜のいい香りで心が休まるようだった
一人で入っていたならの話ではあるが。
そして一時間後
「これで綺麗になっただろう。着るものなんだが、赤子用の服は持っていないから
この大きな手拭いで我慢してくれ。
明日には用意するから、今日はそれで頼む。」
『分かりました、急に来たのはこちらですし大丈夫です。』
綺麗さっぱりになった私は、大きめの手拭いに身を包んで
目の前の人と会話をしていた。
その人は改めて容姿を見ると、とてつもない美形だと言うのが分かった。
黒い艶やかな髪は後ろで一つに結わえられ、吸い込まれるような漆黒の瞳は
じっと私を見つめている。
さらに、少し緩く着ている紺色の和服から見える鎖骨のおかげで、
すごく色気が駄々洩れになっていて、見つめてくる瞳から
思いっきり目を逸らしたくなるくらい、その人は本当に美形なのだ。
「さて、聞きたいことがいくつかあるのだが、、、何から聞けばいいのだろうな」
『、、、とりあえず自己紹介をお互いにしませんか?』
名前を聞こうと思っていたのにすっかり忘れていたので、
とりあえずお互いに自己紹介をしようと言うことになった
「そうだな、では俺から自己紹介をしよう。
俺の普段の名前は鵺黒と言う」
『普段の名前、ですか?もう一つ名前があるのですか?』
「そうだな、鵺黒と言うのは普段のこの姿の時に使う偽名だからな。
本当の名前は、、、こっちの姿で使うんだ。」
そう言うと鵺黒さんは立ち上がり、すうっと息を吸い込んだ。
そして、徐々に鵺黒さんの姿が変わり始めた
黒く艶やかな髪は、真っ白い髪へと
吸い込まれるような漆黒の瞳は、藍白の瞳に
そして額からは、乳白色の大きな角と小さな角がそれぞれ二本ずつ生えていた
気づけば、鵺黒さんの全身の色が白くなっていた
「どうだ、この姿は?」
『、、、すごく、きれい。』
気づけば私は、きれい と言っていた。
その姿はとても神秘的に私の目に映ったからだ
まるで、雪が擬人化した、そんな感じに見えたのだ。
「、、、ほう、そんなことは初めて言われたな。鬼の俺に綺麗、とは。」
『不快、でしたか?』
「いや、少し驚いただけだ。同じ妖にこの姿を見せても怖がられるからな、
ましてや君みたいな赤子は、特にな。」
『、、、私は普通の赤子じゃ、ありませんから。』
「そのようだな。さて、こっちの姿で使う名前も教えておこう。
こっちの姿で使う名前は白零と言う、
普段は鵺黒の姿だから、あまり呼ぶことはないだろうが。』
そう言うと、ふっと息を吐いて元の姿に戻った
そして胡坐をかき、私をじっと見つめてきた
「さて、次は君の番だ。とりあえず、名前を聞こうか。」
『、、、えーと、前の名前でいいですか?』
「前の名前?どういう事だ?」
『実はですね、私は一度死んでいるんですよ。
今の姿になる前にとある世界で生きていたんですが、
死んだらしくて、気付いたらこの赤子の姿であの森にいたんですよ。』
「ふむ、もしかして「前世」と言うやつか。
妖にもたまに今より前の記憶を持って、生まれてくるものがいるが
そういう事で合っているか?」
『はい、そういうことです。それで名前ですが、美鈴 でした。』
「美鈴、か。良い名前だな。
それで今日からの名前はそのままで名乗るのか?」
あ、そう言えば今日からこの世界で生きて行くんだった
新しく生きて行くなら名前は少し変えて生きたいかも。
『そうですね、出来れば違う名前で生きて行きたいな、
とは思うのですが、、、。』
「そうだな、新しく名前を考えて付ける前に
一つ注意することがある。妖の中には、
名前を使って人を操る事が出来るものが居たりするんだが
操られたりしないように対応策として真名ともう一つ別に
仮名を付けることが必要になってくる。」
前の世界の時に使った、ニックネームとかあだ名みたいな事なのかな
にしても、名前で操られるなんて少し怖いな。
注意することは有るのだろうか?
『真名と仮名を付ける、ですか?
その時に注意することはあるんですか?』
「そうだな、仮名は真名と同じ音の読み方にしないことだな。
同じ音だと、漢字が違っても音で操られたりして、
違う名前を付ける意味が無くなる。」
『なるほど、違う名前ですか。』
なかなか考えづらいけれど、操られたくはないから
ゲームで好きだったキャラや小説で見た名前を思い出しながら
自分の名前を考えた。
前の名前が美鈴で、、、あ、そうだ美鈴なら真名は
鈴に関係する名前にしよう。
そして仮名は、鵺黒さんに少し聞いてみて付けようかな。
『鵺黒さん、決まりました。真名は 凛 にしようと思います。
自分で言うのも恥ずかしいですが、堂々と自分らしく生きれるようにって
意味でつけました。』
「いい名前だと思うぞ。それで、仮名はどうするんだ?」
『そのことなんですが、この世界でも自分の
名前って人にあやかった名前にすることも出来ますよね?』
「そうだな、有名な人物の一文字を貰って名前に入れたり
漢字を変えてそのまま名前を付けたりすることもあるな。」
『なら鵺黒さんにお願いがあるのですが、、、。』
「ん?なんだ、言ってみるといい。」
『鵺黒さんのもう一つの名前の 白零 の名前から
「零」の文字を貰えませんか?』
仮名は鵺黒さんのもう一つの名前の白零から貰いたいと考えていた。
鬼の時に使う名前と言っていたので、その名前を貰って付けたなら
鬼の白零さんが守ってくれる、そんな気がしたからだ。
「零の文字、か?あまりいい意味は持たないが、、、。」
『でも強い鵺黒さんの名前を使ったら、守ってくれる気がするんです。
やっぱり、自分の名前を使われるのはお嫌ですか?』
「そういう訳ではなくて、君になら他に似合う良い名前があると思っただけだ。
その字でいいなら、君に零の文字を使って貰って構わない。」
『ありがとうございます、では今日から私は「零」と名乗ります。
今日から改めて、お世話になります!』
「こちらこそ。さて、俺にお世話になるなら堅苦しい喋り方はやめて、
楽な喋り方で話そうか。家族になるようなものだろう?」
『家族、ですか?確かに楽な喋り方でいいかもしれませんが、、、。
私は居候のようなものですし、けじめとして敬語を使った方が————————』
ふわっと、全部を言い終わる前に私の体は鵺黒さんに抱き上げられていた
訳が分からず鵺黒さんをじっと見ていると、真剣な目をした鵺黒さんがこう言った
「俺が最初に君を見つけたとき、俺はこの子を守っていこうと思った。
だが、君が一人であの場所で泣いていて、さっきの話を聞けばもう二度と
元の世界でやり残したことも家族にも会えないし、
君の居場所はもうこっちの世界だけだと確信したら
守るのではなく、家族になって居場所を作ってやりたいと思ったんだ。
だからせめて家族になるのなら、何でも言い合えるように
堅苦しい喋り方は止めたいんだ。ダメか?」
真剣な眼差しで、そう言われて私は改めて鵺黒さんに感謝した。
初めて出会った身元不明な赤子に対して家族になろうと言ってくれる
鵺黒さんが言うなら堅苦しい喋り方は止めて、家族になりたいと思った
だから、
『分かりました、っとそうじゃなくて。えーと、分かったよ鵺黒さん?』
「さん、もいらないぞ?」
『鵺黒、これでいいの?』
敬語は止めて、家族としての気軽な喋り方でこれから話していこうと決めた。
ついでに呼び捨てで呼ぶことになったけれど。
「あぁ、その呼び方でいい。さて、もう夜も深くなる頃だ
零、一緒に布団で寝ようか。」
『え、別に一緒じゃなくても、一人で寝れるよ?』
「急に零を迎えることになったからな、用意が出来てないんだ。
だから、一緒の布団で眠ろうか。」
え、私好みの声をした鵺黒さんと眠る?
それはつまり、鵺黒さんの寝起きでかすれた声の
おはよう、零。って感じの声を耳にささやかれるって事だと思うのだけれど。
合っているとしたら私が朝から悶えることに、、、。
ま、まあ幸せな朝を毎日迎えれると考えたらすごく良いことですけど。
『分かったよ。』
「さてと、移動するか」
鵺黒さんは私を抱え直して、今いたところの明かりと廊下の明かりを消して
歩いて階段を上がったすぐの部屋のふすまを開けて入った
そこはシンプルながらも品のいい家具と寝転ぶと気持ちよさそうな
布団が置いてあった。布団に私を寝かせると鵺黒さんは
私の横に寝転んで掛け布団を体に掛けて、
「おやすみ、零。」
と言ってくれた。なので私も
『おやすみなさい、鵺黒』
と言って私は眠って異世界転生初日は終わった。
これからは5日ごとぐらいに更新していこうと思います。
もしかしたら、ちょっと変わるかもしれませんが。
今回も読んで下さりありがとうございました!