幼少期編第十二話
あ、暑すぎる、、、バタッ。
お屋敷に入った後、大広間では宴を始めた。
大広間で招待をされた人達(妖)を改めてみると
美男美女ばかりで、ここの空間に居るのが間違っているんじゃないかと
思う位だった。
「それでは宴を始めよう。ゆっくり楽しんでいってくれ。」
すこしウトウトしながら挨拶をしている鵺黒さんを見ていると
いつの間にか挨拶を終えたみたいだった。
鵺黒さんが挨拶を終えると、
妖さんたちがワイワイと喋りながら出されている料理を食べ始めた。
挨拶を終えた鵺黒さんに私たちは何処に座ればいいのか、と聞いた。
「えーと、どこにすわるの?」
「あっちに座るところを用意している。
零の好きな物を用意しておいたから、とりあえず行こう。」
手を引かれて、挨拶をしていたところから少し離れたところに座った。
目の前には、いつもよりも気合の入った豊火おじ様が作ってくれたであろう
私の好きなきゅうりの漬物やいろんな野菜のごった煮が置かれていて
いい匂いが漂ってきた。
「わあ、ほんとうにわたしのすきなものだ。
たべていい?やこく。」
「あぁ、良いぞ。」
「では、いただきます。」
頂きますと言ってまず最初にとって食べたのはきゅうりの漬物だ。
浅漬けにしてあるきゅうりは食べるとぽりっぽりっと
美味しい音がする。
「もぐもぐごっくん。おいしいよ、やこく。」
「良かったな、後で豊火に会ったらお礼を言おうな。」
「うん。」
そんな会話をしながら食べ始めて二十分ほどで
私はすぐにお腹いっぱいになった。
「ぷはっ。ごちそうさまでした。」
「早いな、もうお腹いっぱいなのか?」
「もうこれいじょうは、おなかにはいらないよ。」
「そうだな、この後はどうするんだ零。」
「ちょっとだけ、おてあらいにいってきていい?」
本当は八咫烏さんと話すつもりで鵺黒さんにそう言った。
嘘はいけないとは分かっているけれど
あの最後の言葉が気になって仕方が無いのだ。
「あぁ。、、、八咫烏と話すつもりか?」
「えっ、な、なんで、、、」
「そんなことだろうとは思ったが、嘘は良くないぞ。」
「ごめんなさい、やこく。でも、やたがらすさんとは
はなさないと、いけないことがあるの。」
「、、、後で全部話してくれるなら、話に行っても良い。」
「わかったよ、あとでぜんぶはなすよ。」
「なら、行ってくると良い。危険な真似だけはしないでくれ。」
「うん、じゃあはなしてくるよ。」
そう言って私は、八咫烏さんを探そうと席を立った。
しかし見回しても、大広間には居ないようだった。
仕方が無いので私は大広間を抜けて、廊下を歩きだした。
「うーん、やたがらすさん、どこにいるんだろう?」
「俺の事を、呼んだのかなァ?」
すると後ろから声を掛けられて、振り向くと
八咫烏さんが、にっこりと笑っていた。
「うわ、いきなりでてこないでくださいよ。
びっくりするでしょう?」
「くくく、そうだねェ。それより、俺を探していたってことは
話をすることで良いんだなァ?」
「はい、そうです。」
「ふゥん、ならちょっと手を貸してくれる?
この屋敷の中では話せないからさァ。」
「どこにつれていくつもりですか。」
「なァに、この屋敷の屋根で話そうと思ってよォ
じゃあ、行くぞ。」
八咫烏さんは私の手をそっと握ると、玄関へと歩き出した。
そして自分はブーツ、私には下駄を履かせて外に出た。
外は寒く、思わず身震いをするほどだった。
「そうだった、何も上着を着せてなかったなァ。
、、、よっと、これなら寒くないだろゥ?」
身を震わせていると、八咫烏さんは私をそっと抱きかかえて
コートに包んだ。正直、さっきから言葉の粗さとは違う
優しい接し方に戸惑うばかりで、正直怖い。
何を企んでいるんだろうか。
「えっと、ありがとうございます。」
「礼は別に良い。それじゃあ少し捕まっていろよォ
手を離せば落とすかもなァ。」
「えっ、うわあっ。」
そう言うと八咫烏さんは私を抱えたまま、屋根に向かって
大きく跳んだ。いや、飛んだと言った方が良いだろう。
背中から黒い翼を広げて飛んだみたいだったから。
屋根の少し上に飛ぶと、ふわっと着地をして
私を抱えたまま屋根の上に腰を下ろした。
私は八咫烏さんの膝の上に乗り、背中から抱きしめられるような形となった。
「えっと、あの、はなしてくれませんか?」
「嫌だ、やっと会えたんだからこれぐらいは許してくれ頼む。
もう、後悔だけはしたくねえからよォ。」
聞こえてきたのは、泣きそうな声だった。
さっきまで胡散臭そうな喋り方をしていた八咫烏さんとは
思えないほどの儚い声だった。
「えっと、やたがらすさん?」
「、、、流石に分からないか。なァ、美鈴
思い出してくれないのかァ?あんなに抱き合った仲なのによォ。」
「だ、だきあった!?そんなこと、、、ってちょっとまってください
なぜあなたは、わたしのぜんせのなまえをしってるんですか?
あなたはいったい、だれなんですか?」
思わずのけぞって八咫烏さんを見ると、
何かを考えているような表情をしていた。
「誰なんて、、、ん?あぁ、そうか俺が記憶を預かっているんだったなァ。
なァ、今から記憶を返そうと思うんだけど、欲しいか?」
「え、それはもちろんほしいですけど、、、。
どうゆうことですか、きおくをあずかるなんて、、、。」
「まあ、あまり今は気にするな。
じゃあ、覚悟はいいか?かなりキツイと思うが
耐えてくれよなァ。美鈴、いくぞ。」
そう言うと、八咫烏さんは私の頭をそっと持つと
コツンと額と額をくっつけた。
その時だった、それが起きたのは。
「っ!?、、、く、、、あぁ、、、なに、、、これ
、、、なにを、、、っぐああ、、、!」
私は流れてくる何かに頭を揺さぶられたような
感覚を味わった。それは、記憶だった、私の。
前世の記憶が一気に流れてきたのだった。
「今なら、美鈴は受け入れる事が出来ると思ったから
やったが、ごめんなァ。もう少し、耐えてくれ。」
「、、、ふうっ!、、、があぁ!、、、やた、、、がらす、、、さん
どうして、、、なんで、、、。」
「もう、分かったはずだろォ?俺は今は八咫烏、と呼ばれているが
美鈴と居た前世では美鈴に付けて貰った名前がある。
今なら、呼べるよなァ、美鈴。」
「、、、『 』、、、?」
「そうだ、やっと、呼んでくれた、俺の名前。
美鈴、もう俺を捨てないでくれよォ?」
名前を呼ぶと、泣きそうに笑った。
私はそれを見ながら、意識を飛ばしていった。
次の更新、遅くなったらすみません。
今回も読んで下さりありがとうございました。




