私は奴隷です
「私を買ってください」
言いたくもない言葉が喉から勝手に発せられる。泣きたいし叫びたい膝をついてしゃがみ込みたい。でも、それは許されていない。
そう、私は奴隷なのだから。奴隷落ちした以上は奴隷の紋章があり、それは魔法契約だから逆らうことは許されない。今は私を買ってくれる人を奴隷商人の金と欲望にまみれた薄汚い男が見繕っている。そのために、その人と会うたび会うたびに私は笑顔を作らされる。
そんな日々が続いたある日のことだった。私を買うという人が現れた。その人はとても優しげだった。私は容姿もよく高いはずだった。にもかかわらずその人は即決で現金払いをしていた。きっと金持ちなのだろう。何をしているのかはよくわからない、しかし、今は私を買ってくれたことに感謝しよう。
「僕が君を買ったコージだよ。よろしく」
「わ、私はジュリアと申します。不束者ですが、夜伽も頑張りますからどうか見捨てられないようにお願いします」
「大丈夫。僕は、君とそういった行為をする気もないし、捨てることもしない。それなら、何をするのか?と気になったよね。僕はねこれでもそこそこ強い冒険者なんだ。それのために買ったんだよ。あと、家の管理そして一人だと寂しいからさ。そのためだよ。家族みたいな存在になれたらいいね」
ご主人様が言ったことはよくわからない。奴隷にそのようなことを求めないなんて、普通じゃない。でも、それはそれでありがたい。それに、私と家族になりたい!?冗談じゃない!!
「家族だなんて、滅相もないです。私は奴隷ですよ」
「いや、僕は確かに奴隷として買ったよ。でもね、僕自身は奴隷としては君を見ていない。だから、安心していいよ」
ご主人様はそう言うとも私に向かってニッコリと笑われました。その笑顔は太陽のようにいや、太陽よりも眩しかった。
「いけません。私などにそのような物」
「言ったろ?僕は君を家族として見たいって。僕に遠慮なんてする者じゃない。本音で話していいんだよ。ジュリア」
買い物をした後私たちはご主人様の住まわれているところに行きました。その家は大きくご主人様が自ら一流の冒険者とおっしゃっていたのも納得です。しかし、そんな大きな家にもかかわらず住人はご主人様ただ一人でした。寂しいと言うのはここから来ていたのです。
「さて、ご飯にしようか。ジュリア何が食べたい?」
「い、いえ、私が作ります。というか、作らせてくださいそれくらいはします車内と私を買っていただいた人に顔向けできません」
「そう…ならよろしくね!楽しみにしているよ」
ご主人様はそう仰ると台所から消えました。ここからは、私の腕の見せ所です。この日は芋がたくさんありました。そこで、芋を使ったスープを作りました。肉もたくさんあったので、肉と芋と葉物の野菜で炒め物を作りました。喜んでくれるか楽しみです。
「できました」
「おー!ジュリアは料理も美味しいね。さすがは、僕の妹だ」
ご主人様は最後によくわからないことを仰いました。なぜ私が妹であることを?そこで私はハッとしました。この人の名前はコージでした。
そして、それは私がその世界に来る前の兄の名前です。
「お兄ちゃん…なの?」
嬉しかった。絶対に会えないと思っていた兄と会えたのだから。
探したぞ桜のこと。お前はどれだけ僕を困らせたら気が済むんだ?お陰で君を探すのに一年もかかっちゃったよ」
「でも、どうして私が奴隷になってると?」
「うーん色々と探したいたら、不可解な経歴の人を見つけてね。一人一人当たっていたんだけど、顔があんまり違わなかったのもあるんだけど、なによりも雰囲気が似ていたんだよ。それくらいわからないと家族じゃないだろ?」
「なら、どうして黙っていたの!」
「だって、びっくりさせようと思ったから」
この兄は根底は全く変わっていなかった、でも、少し安心しました。だって、兄に救ってもらえたのですから。
「まったく、見つかってよかった。これで見つからなかったら僕は絶望していたね」
「私も嬉しい。お兄ちゃんがそんなになってまで私のこと探してくれたから」
「ああこれからは離れることはない。ずっと離さない。君自身が道を見つけるまではね」
兄は最後に本当に優しく言いました。私は嬉しくて本当に叫びそうでした。なによりも兄とまた生活できる。これだけでウキウキです。私はどんな生活を送るのでしょうか。
どうもご無沙汰しております。さて、今作品の前に本来なら別の短編投稿する予定が大幅な変更計算違いによりそちらはまだ書いている途中でありまして…なぜかこっちの方が先に上がりました。すーっと書いていた小説なのにね…
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