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動く人形 〜闇夜に浮かぶ不気味な顔〜

作者: 神名代洸

ここに来て僕は怯えていた。

なにに?って?

目の前にあるものについてだよ。


一体の人形が置かれている。

よく言う日本人形だ。

何故怯えてるって?


この人形、動くんだよ。それも深夜に。



ただの普通の人形なんだよ?

電動付きじゃない。


だから怖いんじゃないか。

捨てても捨てても戻ってくる。

嫌になるよ。


母さんに話したら、この人形、婆ちゃんからもらったものだと言う。だから何?とっておくの?この不気味な人形を…。


一度だけ触った事があるけど、人形だからひやりと冷たい。

当たり前か。


だけど深夜には目の届かない場所に置くようにしている。動いてるの見たくないし。

でもね、見ちゃったんだよ。ついこの前の夜。

はじめは気づかなかったんだ。

けどジッと見てたら徐々に回転していくではないか。

怖かったけど携帯の動画で撮っておいたんだ。証拠としてね。

母さんなんか信じちゃいなさそうだし。

父さんはこの手のはまるで信じてない。


人形がこっちの方を見て止まった気がしたのは僕だけだろうか?

表情も笑ってるように見える。

僕は慌てて携帯カメラを消してその場から逃げ出したよ。

ふた部屋ほど離れてから録画した映像を確認の為見てみると確かに人形は動いている。

ガタガタと震えが止まらなかった。

すぐに両親が寝ている寝室へと駆け込んだ。

そして寝ていた両親を叩き起こして映像を見せた。


「何よ。何も変わらないじゃない。」

「変わってるよ!ちゃんと見て!!」

「そう怒鳴るな。ちゃんと見るから。」

父さんはそう言ってカメラに映る人形をジッと見ていた。けどね、それを見てたら顔が真っ青になっていく。

「おま…これどう言うことだ?」

「映像は加工したものじゃないよ。ついさっき録画したばかりだからね。」

そう言って録画開始時間を見せた。

確かにそう。録画はしたばかりだった。

じゃあ何?ホンモノ?父さんは信じられないと言う顔をしている。

母さんは…固まったまま。



「母さん、この人形捨てようよ。僕がなんども捨てても戻ってくるんだ。なんでか分からないけど。」「私が取りに行ってるのよ。お婆ちゃんの形見みたいなものだから。」

「だからって…父さんはどう思った?」

「あ、ああ。こんな不気味な人形は捨てたほうがいいな。母さんもいいな?」

「え、ええ。そうですね。こんなものを見せられたらそばに置いときたくはなりませんね。怖いもの。」「なら取りに行くようなことはするなよ?」

「分かってますよ。」


その日の朝、母さんは人形をゴミ捨て場に持って行った。これでもう怖い目には合わないと思うとちょっとだけ安心した。

でもね?おかしな事に人形が玄関に置かれていた。

一体誰が?

捨てるのを見てたのか?

まさか…ね。

母さんが捨てる所を見てたけど誰一人いなかったように記憶している。じゃあ何?人形が勝手に一人で歩いてきたとか?

まさか…テレビとかじゃあるまいに。

僕は携帯の録画ボタンを操作しながら人形をつかもうと手を伸ばした。

その時バチっと音がして何か感電するような音を聞いた。僕の手はビリビリしている。


「いって〜!何なんだよ。」

人形を見ると顔が怒っている風に見えた。

僕は怖くなって人形はそのままに自宅へと入った。

母さんにそのことを話すと、母さんも怯えている。

これって人形の呪い?

まさか…ね。


とりあえず人形に布をかけ父さんが仕事から帰ってくるのを待った。

一時間ほどだった頃父さんが帰ってきた。

「何玄関に布なんか置いてくんだ?そのままにしたらダメだろ?」

「父さん、それ…人形。」


「何?母さんか?」

「ううん、違う。僕見てたから。人形は確かにゴミとして出してたよ。」

「ならなんで?」

「人形が勝手に来たんだよ。うん、そうに違いない。」

「勝手に…って、まさか?!」

「嘘じゃ無いって。寺に持ってって供養してもらおうよ。」

「だがな…近くに寺なんてないぞ。車で行くか電車に乗っていかないと。」

「なら僕が持ってくよ。父さん、車出して?」

「分かった。だがお前…大丈夫か?真っ青な顔してるぞ?」

「父さんだっておんなしじゃないか。さっ、早く車出して行こう。」

「あ、ああ、そうだな。早く行こう。」

僕らはその足ですぐにお寺へと車を走らせ住職に事情を話して聞かせた。

「そうでしたか。それは怖かったでしょう。

こちらでちゃんと供養して燃やしますね〜。」


その言葉を聞いてホッとした僕らは車で自宅へ戻った。

そしたら先ほどの寺から自宅へ電話が。

念のために教えておいたのだ。


「あの〜ですね。申し上げにくいのですが、お預かりしていたはずの人形がなくなってましてね、まさかとは思いますが、持っていかれましたか?」

「まさか…?!」

僕はすぐ車の中を確認しに行った。

すると後部座席から人形が。


「ヒーッ!?」

「どうした?」

「父さん、人形が…人形が…。」

そう言って指差した先を見た父も固まっていた。

そこには人形があったのだ。

寺を出る前に確かに確認して何もなかったはず。

じゃあなんでここにあるの?

分からない。


ただ怖いとしか…。


父さんも怖がりだし、人形に触れることもできやしない。

ただこのままにはしておけないので再度二人で寺に向かった。

今度は住職も慎重に手に取り落とさないように持った。


「何度もすみません。」

「いえ、いいんですよ。時々こういった事ありますから。」

それはそれでまた怖いのだが、あえて何も言わずお辞儀だけして帰ってきた。

母さんは寝ずに待っていてくれた。

そして家族で話をし、仏壇にお参りをして久しぶりだが三人一緒に寝た。

その日は怖いことは何も起きなかった。

それ以降家族からは人形の話も出なかったし、お寺から電話がかかることもなかった。

無事にお祓いしてくれたんだろう。



ただね?あの顔だけは忘れられなかった。

人形のあの睨んだような顔だけは…。



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