第二王子殿下の訪問、隣国の皇太子と留学
マダム・ベルタンと会ってから3日。
今、私の部屋には何故か第二王子がいる。
「あの、何故殿下が…」
先程から何度聞いてもニコニコ笑って何も答えない。何が不満なのだ…‼︎
「殿下、何か言ってくださらないと何をご所望か分かりかねます。」
「レアー。」
「え?」
「殿下じゃなくて、レアーって呼んでと、この前言ったよね?」
どうやらこの王子は愛称で呼んでほしかったようだ。私がしぶしぶながらにも「レアー様」と呼ぶと「様はいらないのに」と文句を言いつつも、先程の冷たい笑みとは打って変わって上機嫌の笑みを浮かべている。
「で、レアー様。本日は如何様でしょうか?」
「ああ、遊びに来た。最近暇だったからね。」
そんな理由で私の貴重な1日を潰さないでいただきたい。そんな事は勿論言えずに、紅茶を飲みながら互いの近況を報告し合う事にした。
「最近、隣国の皇太子が決まった事は知っているかな?」
「存じ上げています。確か、正妃の第一皇子になったのですよね?」
隣国であるソフィア皇国は血筋に関係なく能力に優れた者が皇帝として即位するため、必ずしも正妃の第一皇子がなると言うわけではないのだ。現に、今のソフィア皇国の皇帝は先代皇帝の側妃の第二皇子だ。少し前まではソフィア皇国の内部は派閥争いで大分ゴタついていたらしいのだが、ようやく決着がついたらしい。
しかし、1つ言っておこう。これはあくまでも2歳児と4歳児の会話である。
「それで、だな。少し厄介なことがあって、ソフィア皇国の皇太子がこの国に暫く留学という形で避難してくる事になった。」
珍しく歯切れが悪かった殿下が言った言葉を私は当時、理解しきれていなかった。
「まあ、それはいきなりですね。でも、何があったかは聞いても答えてくれないのでしょう?」
「国家機密だからな。」
私はただ「大変そうだ」と客観的にしか見ていなかったのだ。
わざわざ第二王子殿下が公爵令嬢の元に尋ね、国家機密の一部を話したのだ。本当ならば『隣国の皇太子が留学でやってきた』しか伝えられなかったはずの話を『少し厄介なことがあった』『これ以上は国家機密だから』と噛み砕いて話したこの内容に、後々の私の運命が翻弄されることになるとは、この当時は私は知る由もなかったのだが話を伝えた張本人である殿下は内容まではいかなくとも、何かがあるとは予想できていたらしい。
あと少しで2歳編が終了します。
次はいきなり飛びまして10歳編です。
10歳編からはある大事件に巻き込まれていきます。