第2話 生きてる実感、その朝は。
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ーーーーーーーー静かで、寂しく何も見えない。
何時間経った?....此処は何処だ...何も分からない。
僕は死んだのか.....?いや、まだ死んじゃいない。
意識がある!まだ頭は動く。
沈んでいく.. ただ沈む。
死ねるか、まだ何も見えなくても、まだ立てなくても。
やり直すんだここから、ここで。
暗闇の中でもがく。必死に抵抗する。ーーーーー
もう...だめ....だよな。
諦めかけたその瞬間、
一筋の光が見えた。
なんだあれ?
反射的に手を伸ばした。ーーーーーー
届け、届いてくれーーーっ。
手がその光をかすめる。
お願いだ、俺を"そっち"に帰してくれ。
そう、願った。
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のどかな風と共に、賑わう声が聞こえる。
強い日差しが目蓋を照らす。ーーー眩しい。
とても温かく、温みのあるこの光。
懐かしい、これは僕の..欲してたものだ。
このままここに居たい、そう感じさえする。
生きている。
そう、実感できた。この痛み、この触覚これは僕の物だ。
重い目蓋を開ける。ーーーーーー
見知らぬ天井、見知らぬ壁、見知らぬお爺。
「どこだここぉーーーーっ!!!??」
この世での僕の第一声がそれだった。
聞こえてくる言語は聞き覚えも無いもの。
英語?ドイツ語?ラテン語?
どれも違う、全くの聞き覚えのない、全く知らない言語。
つまり此処はーーーーー
「いやいやいやいやぁーーーー確かにそっちに帰してくれとは言ったけど、僕が望んだのはあの...電波飛び交う、高層ビルディング建ち並びーの、騒々しい車の音が聞こえていたあの国、あの世界じゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
この状況に嘆き叫ぶ子供のような少年の姿がそこにはあった。
すると、隣の椅子に腰を掛けて寝ていた爺が起き上がり、少年に疾風の如く強烈な平手打ちを放った。
「やかましいわ!このあほがぁぁぁぁぁっっ!!」
少年はこの爺が放った平手打ちでベットから放り出される。
なんちゅう威力なんだよーーーーっ!
僕がそう心の中で叫びながら壁に激突するのであった。
痛い、脇腹の痛みも相まって物凄い激痛だ。ーーーーー
「ヤバい、もうダメだなこりゃ。」
そして僕はまた意識を失った。
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長い夢を見て、夢うつつなまま目が覚めた。
もうすっかり陽は落ちていた。
しっかりとベットに寝かされていて、頭の横には桶と木綿?の生地のような巾が置いてあった。
きっと、あの爺が看病してくれていたのだろう。
でも、何故あの爺、日本語を喋れたのだろうか?
その疑問だけが、心の中につっかえていた。
「何者だ、あのおっさん。」
こんなこと僕が言うべきではない、何せ向こうさんからしたら、僕の方が未知だ。
だから、この言葉は失礼にあたる。
だけど、気になって仕方がない。あの爺が日本語を喋れた理由が。
「こんな時間だし、聞くのは明日か。」
窓の外を見ると三日月が綺麗だった。
僕のいた世界じゃ、もっと黄色かったっけ。ーーーー
ボソリとそんなことを呟きながら、深い眠りについた。