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Past:code ー無力な凡人と万能人ー  作者: 翠 紫代
第1章 始まりの一週間、唯一無二の万能人。
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プロローグ:満月輝く炎の夜に

 


 悪を罰しない者は悪をなせと命じている。

                   ーーーレオナルド・ダ・ヴィンチ




白く輝く満月の下、城下町から離れた郊外の小さな町にて。


物が焼けた鼻をつく様な嫌な臭いがする。


閑静な木造の住宅が建ち並ぶ一角で夜なのにもかかわらず、酷く明るかった...。

その光はこの状況がただ事では無いのを表していた。

炎が見える。何かが燃える音が住宅街に響いている。

その炎は高く、燃え上がる。

その火元となった家の二階は潰れ、一階も半壊していた。

その一階に服はボロボロになり体中傷だらけの少年がいた。

目の前には炎、少年の周りを炎が覆う。

その少年は崩落した瓦礫の下敷きになった老人を助けようと、必死に手を伸ばしてた。



「ここで死ぬなッおっさん!!」



なかなか手がとどかない。



「あと少し...あと少しなんだ。」



この家が燃え尽きるのに時間はあまりない。

それでも少年は必死に手を伸ばす。

体は痛く全方位から針で刺されているようで、沸騰した湯に浸かっているようだ。

そんな傷だらけの体に鞭を打ち、少年は手を伸ばす。



「とどいた!...おっさんッもう少しだ!!」



だがその手は振りほどかれた。



「え?...おっさんなにしてんだ!」



その老人は力なさそうに少年に訴えた。



「君は...ここで死んじゃならない。」


「はぁ?何言ってんだ、早く手を!」



確かに老人の言葉は最もなのかもしれない。



「君はこの国を...この世界を救済しなくては...。」



?理解が追い付かない。

自分はこの老人も助けられそうにもないのに。

自分が無力だから目の前の人も救済できないのに。



「おっさんッ早くしてくれ時間がねぇ!!」


「早く行け...君だけは...助からなくては。」



少年は構わず手を伸ばす。

そうしているうちにも家は崩れていく。



「お願いだ.."瞬"...森へ急いでくれ。」


「おっさん、あんたも一緒に行くんだ。」


「だめだ...わたしは一緒に行けない。」


「どうしてだッ!手を出してくれ!」



するといきなり老人の居る天井がさらに崩れ落ちて、もう手が届かなくなってしまった。



「畜生ーーーーーーッ!!」



少年は固く握られたその傷だらけの拳で床を殴りつけた。

さぞ痛いだろうに傷ついたその拳は大量の血液で濡れていた。

少年の痛覚などはとうに振り切っていた。

老人がいた瓦礫から少年の足元に血が流れて来ていた。

この瓦礫の下に、あの爺は骸となり焼かれていくのか。

家屋は燃え尽きようとしている。

少年はやむを得ずその場をあとにした。



■■■■■■■■ ■■■■■■ ■■■■■■■■■



外に出ると人だかりができていた。

とても騒々しい。

人が死んでいるのに本当に騒がしい。

家が燃えているのに集まるだけでなにもしないのか?

"ふざけていやがる。"

助けを必要としていたのにも拘わらず誰も助けてくれなかった助けようともしなかった。

その人々の口元は笑っているようにも見えた。

少年は人だかりを別け入って町の外れの森に急ぐ。ーーーーー

 


『絶対にこれ以上は殺させない。』



少年は心にそう固く誓った。


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