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(6)

 いいバイト先だった。穏やかで、店長もいい人で。

 でも、あの日を境に全てが変わったてしまった。


「ヤコ、終わったよ」


 監視カメラに映っていた、矢代ヤコが今井に犯されてる映像を見るまでは。





「らっしゃい」

「タムタム、板前みたい。おでんちょうだい」

「あいよ! ってか俺が入れるんじゃねえから。自分でとれ」

「あいよ!」


 ヤコはいつものように嬉しそうにおでんを器にすくった。

 矢代ヤコはただの客だった。深夜帯にたまに訪れる女の子で、いつもだらんとしたジャージ姿だった。髪の毛は見るからに傷んだ銀髪で、何やら問題でも抱えてそうな印象の女の子だった。

 深夜で客も少ないので、ヤコとはよく喋った。プライベートな事は喋らなかったが、お互い音楽が好きだった。

 ヤコと喋っている時間は楽しかった。恋愛感情はなかったがそうやって仕事の合間に話す時間が、なんだか愛おしく思ってる自分がいた。


 だが、ある時からヤコは全く店に来なくなった。俺はその事をあまり気にしなかった。友達と遊んでたり、まっとうになったりと、向こうの事情があるのだろうと思っていた。

 しかし、そんな予想は残酷に裏切られる。


「……んだよ、これ」


 たまたまだった。暇だった俺は監視カメラの画像をぼんやり眺め、そういえば過去に撮ったテープってどうしてるんだろうと思った時に、偶然一本のテープを見つけてそれを再生してみた。それが最悪の瞬間を映したものだなんて事も知らずに。

 

 荒い画像。そこに映る二人の人間。一人は女の子でもう一人は今井だった。今井は女の子を後ろから抱えるような形で何やら必死に動いていた。その度に乱暴に女の子の身体が揺れていた。


 ――これって、まさか……。


 背中を冷たい汗が流れた。そして、俺はもう一つ気づいてしまった。


「……ヤコ?」


 今井に犯され、苦痛に顔を歪めていたのは、ヤコだった。

 

 どうしていいかわからなかった。これは現実か。夢か。でも、ヤコが店に現れる事はなかった。

 嘘だ。店長は、そんな人じゃない。何かの間違いだ。あんなに優しくて面白い人が、あんな酷い事をするわけがない。でも、あれはどう見ても今井だった。その現実を受け止められなくて、俺は考える事を止めてしまった。

 気のせいだ。気のせいだ。全部。そう思いながら、俺は咄嗟にテープを別の場所に隠した。


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