006 戸惑いと躊躇いと閃きと
だいたい1話5キロバイトを目標にしてるんですが、長さ的にどうでしょうか。
まぁ今回のは4キロなんですけど
「おろ?翔太じゃん。はろはろ~」
名前を呼ばれて顔を上げる。
見知った顔がこちらを見下ろしていた。
「なんだ、マッキーか」
「マッキー言うな。私は油性ペンじゃない。小早川先輩って言いなさい」
「はいはい。マッキー先輩。これでいい?」
「このチビスケ・・・帰り?」
「そう。真紀ちゃんは?」
あっけなくいつもの呼び名に戻す。
「私は部活の帰り」
声をかけてきたのは小早川真紀。
姉の親友にして商店街のアクセサリー小物店の長女だ。
幼い頃からの付き合いで気の置けない幼馴染。
やや赤みがかった茶髪が目を引く背の高い少女だ。
見た目は遊んでそうな雰囲気だが、その実彼女の部屋の本棚は少女漫画で埋まっているのを翔太は知っている。
「なに?」
帰り道が同じなのだから隣を歩くのはわかるが、何故か見られてる気がして疑問を投げる。
「いや、なんか落ち込んでる?」
「・・・別に」
「デート上手くいかなかったん?」
商店街の情報網マジパナイな!
翔太は表情そのままに胸中で悲鳴を上げる。
しかも、完璧に情報間違って伝わってるし、これの情報元は間違いなくあの姉だろう。
余計なことをしてくれる。
「まぁ誰だって最初は失敗するものよ。気にしない。気にしない」
「いや、違うから」
「で?次に会う約束はしたの?」
「聞けよ。人の話。・・・したけど」
「なら心配いらないっしょ。その時に挽回すればいいのよ」
どうしても初デート失敗エンドにしたいらしい。
なに?自分、仲間にしたいの?
そういえば真紀には彼氏がいる。
真紀のひとつ上の久我先輩。
勿論、翔太たちとも以前から交流のある少年だ。
眉目秀麗、品行方正を地で行く美少年。
なんで真紀と付き合ってるのか不思議な人。
いや、真紀も普通以上に美人なのだが、久我先輩は格が違うっていう感じなのだ。
閑話休題。
「そうだ。次のデートはプレゼント用意しなよ」
「ぷれぜんとぉ?」
「そう。彼氏から贈られる記念のプレゼント。
それは乙女にとって、何物にも代えがたい最高の想い出!!」
「いや、そんな昭和初期のおトメさんなんて人の想い出話されても困るから」
「人の名前じゃないし。乙女だっつってんでしょ、クソガキ」
そんな掛け合いをしているといつの間にか商店街についていた。
「ほら、ちょっとこっち来な」
「お、おい。引っ張るなって」
連れてこられたのは商店街の中ほどにあるアクセサリーショップ『ファムファタル』
真紀の実家だ。
彼女に手を引かれ、自動ドアをくぐる。
「いや、宝石とか無理だって」
「当たり前じゃん。そんなんじゃないよ。
てかいきなり最初のプレゼントが宝石とか無いから。重いっしょ」
彩り豊かな店内を見回して、それもそうだなと納得する。
「で、旦那。ご予算は?」
「300円」
「・・・やっすいのも無理じゃん」
これ見よがしに肩をすくめるのやめてもらえませんかね。
無理やり連れてきたのそっちなんだからな?
「で、彼女どんな感じなの?」
「どんな感じって?」
「ほら、あるじゃない。背が高いとか。太ってるとか。胸が・・・大きいとか」
一瞬自分の慎ましい胸元を見てから、苦渋を噛みしめるように吐き出す。
「ああ第一印象だけね。今はそれ以外の情報は邪魔だろうし」
「・・・黒い」
「黒?」
「髪がくそ長ぇ」
「ああ、黒髪なのね。くそぅ羨ましいなぁ」
ブツブツ言いながら真紀は翔太をある一角に連れてくる。
「翔太の予算とその第一印象からだとこの辺ね」
見ると髪留めとかが所狭しと広げられている。
確かに値段は手ごろなものが多いようだった。
と、そこまで来てからハッと気づく。
「いや、だからプレゼントとかする相手じゃねーんだって・・・あ、これ」
ふと気になったものに視線が止まり、手を伸ばす。
それを見た真紀はへぇと声を漏らす。
「どうする?旦那。消費税くらいはおまけしとくよ?お得意様になりそうだし」
その笑顔はとても乙女という感じではなくないですか?
難波の商人かもしくは高利貸しって感じで、ケツの毛まで毟られそうなんですけど。
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