004 公園デート?
推敲もせずに投稿したらえらいことになりました・・・
これでも誤字とかあったらすみません
追記として
前話最後に翔太にげんこつしたのはご母堂の皐月さんです。
父親の名前は仁さんで、他にも設定はあるのですが、出てくる機会あるのでしょうか・・・少年野球チームの梵クラーズとか、出るのか??
良く晴れた公園の一角で異様な雰囲気を醸し出すモノが在った。
誰もがその姿を見て、すぐ視線を戻すが、ギョッとした表情でもう一度視線を投げる。
そして、そこを震源地に誰もが円を描くように迂回して通り過ぎていく。
天気が良くて、風も心地よく凪いで、気温も適温。
そんな爽やかさを一発で払拭させるブツを見て、翔太の足は踏み出すことを躊躇した。
五月人形・・・いや、西洋人形?
とにかくあの呪いの人形を彷彿させる彼女。
目元を覆い隠す前髪と、艶のある腰まで伸びた黒髪。
そして白いタイツと紺のドレス。
どこかのピアノの発表会に行くかのような服装は、場違い感が半端なく、翔太の心を速攻で砕きに来ていた。
いっそこのまま帰ってしまおうかという気にすらなった。
だがしかし、すでに彼女には自分の所在地を教えてしまっている。
いつまでも現れない翔太にしびれを切らし、呪い人形---もとい彼女なら自宅まで強襲しかねない。
まったく迂闊だったな翔太、と高笑いする誰かの声が聞こえた気がした。
大きめのスポーツバッグを担ぎ直し、呪い人形こと、萌絵のもとへ歩き出す。
萌絵はすぐにこちらに気づき、大きく手を振ってやってくる。
「お、はよう」
と息を切らしながら声をかけてきた。
「おはよう。で、ナニソレ」
「何が?」
「その服だよ。なに?これからピアノの発表会?俺、帰ろうか?」
「ち、違うよぅ。だってどんな服を着てきたらいいのか、わからなかったから」
だからってそれはないんじゃないかなぁ。
そんな服着て汚したらただじゃすまなさそうだし。
「あーもう。まず、着替えよう」
「着替え?」
「少なくとも動きやすい服じゃないと話にならない。お前んち行くぞ」
「・・・・」
公園を出ようとする翔太。
しかし、それを若干頬を膨らせて動こうとしない萌絵。
「・・・なんだよ」
「萌絵」
「は?」
「お前じゃなくて、萌絵」
「・・・お前なぁなんでそんなこと気にするのさ」
「萌絵!」
「っ・・・わかったよ。ほら萌絵行こうぜ。家まで案内してくれよ」
「---うん!!」
打って変わって朗らかな笑顔に毒気を抜かれ翔太は苦笑するしかなかった。
萌絵の家につく。
そして
「うおおおおおおおおおっ!!」
翔太の悲鳴が響き渡った。
「翔太?」
目を白黒させて、戸惑う萌絵。
「なんじゃあああああこりゃああああああ!!」
今、翔太の目の前には巨大な門が、そしてその奥に豪邸が、というよりは大豪邸が鎮座していた。
門の表札には「姉崎」と書かれている。
「あねざき?」
「うん。あねざきもえ。私の名前」
「萌絵って金持ちなのか?」
そこにねたみや嫉みはなく、少年らしい直截的な言い方は、この時期の美徳であるかもしれない。
「うん?どう、かな?ちょっとお金持ちくらい?だと思う・・・けど」
絶対違うと翔太は疑いの目で萌絵を睨む。
そういや、今着ている服も高価そうだしなぁと変に納得できた。
「まあいいや。とりあえずその服、着替えて来いよ」
「うん」
「動きやすい服なー」
「はーい」
で、出てきたのがこれである。
小豆色の布地に、肩に白のラインが入った梵天中学校指定のジャージ。
俗にいう芋ジャージであった。
幾らなんでも極端すぎるだろう。
そんな雰囲気を翔太の視線から感じとったのか、萌絵は弁解を始めた。
「あの・・・高校のは昨日体育があって、洗濯中なの」
「違う。そうじゃない」
「え?」
「・・・まぁいいやそれで。じゃあ戻るぞ」
「・・・なんか、感想ない?」
この女、正気か?
翔太は戦慄を隠せない。
芋ジャージの着こなしにどう感想を述べろと?
そういうのはせめてさっきの服装の時に聞くべきじゃないのか?
大体芋ジャージが似合うって、それ褒め言葉か?
冷たい汗が彼の頬を伝う。
今までの経験からここで無視すると、今後の予定に差支えが出かねない。
・・・もういい。疲れた・・・
「あー、まあいいんじゃない?似合ってる。似合ってる。」
「なんか・・・適当・・・そっかぁでも、似合うかぁえへへ」
と何故か嬉しそう。
それで納得するんだ!?
スキップでもしかねない調子で隣に並んで歩く萌絵に、翔太は愕然とした。
「なにこれ?」
「何って、やったことない?野球とバドミントンとフライングディスク」
ひとつひとつ、道具を指差して説明する翔太。
返答はないとのこと。
今までどういう生活してたんだろう。との疑問が浮かぶ。
「これやるの?」
「運動苦手なの?」
「別に普通」
「じゃあ、まずはやってみようぜ」
そう言って翔太はグローブを装着し、ボールをパシンと鳴らした。
結論から言おう。
奴はなんでも、そつなくこなした。
キャッチボールから始まり、バドミントンとフライングディスク。
特にバドミントンが妙技ともいえるほどで、瞬発力と先読みなど、そういうものが段違いで高い。
なんだこのチート、である。
なにか運動をやっていたのかと聞いたら、どうも母方の祖父母が合気道の道場を開いているらしい。
ほう。いいことを聞いた。
とりあえず、ガチ喧嘩はやめておこうと心に誓った翔太だった。
そんな感じで、午前中の萌絵は時折笑顔らしきものも浮かべるようになっていった。
大抵が勝ち取った時なので翔太的には歯痒いことこの上なかったが。
やがて時刻は正午を回り、二人は食事をとることにした。
「どこか行くの?」
「いや、そんな金無いし」
萌絵の問いかけに、翔太は素っ気なく答え、バッグをもって公園の休憩所に向かう。
まわりを見ると家族連れがお弁当を広げていた。
翔太も同じようにお弁当を広げる。
バックから出てきたのは焼きそばパンにコロッケパン、BLTサンドなど彩り様々。
紙コップを2つ置けば準備完了。
萌絵は翔太が準備するのを黙ってみていた。
呆けていたと言った方が正しいのかもしれない。
「どれ食う?」
「え?」
「好きなのとれよ」
そういうと、萌絵は恐る恐るといった体でコロッケパンを手に取る。
「コロッケ好きなの?」
「う、うん。でもどうしたのこれ?」
「ウチの。パン屋だって話したろ?でも、一応これ全部、俺が作ったんだぜ」
と得意げに言った。
「え?」
「まあもちろん生地を作ったのはおとう---親父だけどな。かたち整えたのは俺」
よく見ればどのパンも歪な形をしていたり、
サンドイッチは余計な力が加わってしまっているせいか、パンがつぶれてしまっていた。
「へ、へぇ・・・」
「そうだ。今度は萌絵も一緒に作ってみるか?」
「私も?で、できるかな?」
「別にできるできないじゃなくて、やってみるってのがまず大事なんだぜ?って知り合いの兄ちゃんが言ってた」
「う・・・ん。わかった」
そういうと萌絵は震える指先でコロッケパンの包装を解いて、それを口に含む。
口いっぱいに頬張って
「ほいひぃい・・・」
とだけ呟くと、すぐに俯いて黙り込んでしまった。
そして鼻水をすする音と咀嚼する音が交互に聞こえてくる。
「お前さぁ、食うか泣くかどっちかにしろよ」
「・・・・おはへやなくへ、もへばほん」
「そっちかよ」
それでも彼女の声は悲しそうなものではなかった。
まずは胃袋から。これが基本だと思います。
作った本人にはまったくそんな意図はありませんが・・・