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033 そして、それから

最終話です。

短い間でしたが、今までありがとうございました。


ラストちょっと駆け足気味です。

後日、修正します。

友達ができたよ。







・・・・・・・・・・・・は?




萌絵から唐突に言い渡された言葉に、翔太は間の抜けた声を出すのを止められなかった。

ゆっくりと数秒、その言葉の意味を吟味してから、居住まいを正す。

正座で萌絵を見つめる。


「マジで?金で買ったとかじゃなくて?」


何気に酷いことをさらりと言い放つ翔太。

とはいえ最初はまさにその通りの行動をしていた萌絵なので、

彼女をよく理解していると言えよう。

そんな翔太を前に、萌絵はニコニコ笑顔で携帯を操作する。

頬を真っ赤に染めながらドヤ顔で一枚の写真を見せてきた。


それはどこか古めかしい教室の中、萌絵の隣でピースサインを掲げる少女がいた。

黒い髪と白い肌の綺麗な少女だった。

でも・・・どこか・・・


「なぁなんでこの人、こんなにやつれてんの?」

と、当然のごとく浮かんだ疑問を萌絵に投げた。

写真に写った彼女、笑顔なのは笑顔なのだが、

その目の下には大きな隈が浮かんでいた。

病的な白い肌と相まって幽霊のような佇まいだった。

「ああ、それは締切明けだったみたいだから」

「絞め斬り明け?・・・やっぱり拷問か何かしたのか?」

「しないよぅ」

心外だとばかりにへにゃりと眉を下げた。

口をへの字口に曲げて、今度は携帯である番号を呼び出した。


コールは長い。

たっぷり十回は鳴らして、ようやく相手は出たようだ。

「私。そう。翔太が信じてくれないようだから、貴女から言ってちょうだい」

そう言って、今度は携帯を翔太に差し出す。

初対面の年上の女性が携帯の向こうにいる。

恐る恐る携帯に耳をそえる。


「もしもし?」




「ハレーールヤァーーーー!主は居ませりーーーー!!」




歓声がスピーカーを通して翔太の耳朶を打つ。

あまりの声量に思わず耳から携帯を突き放してしまう。

「!?ハ、ハレルヤ?」

「いや、すまない。あまりの感動に神に感謝してしまったよ。ボクとしたことがね。どうか笑ってくれたまえ」

はっはっはと、そう言いながらも逆に向こう側の彼女が笑っていた。


「フフン。初めましてだ。サー・翔太」

「は、初めまして。サー?」

「ボクなりの君への敬意の表れさ。君の偉業はそれでもまだ不十分なほどさ」

言ってることがいまいち解らない。

なんだろう。ちょっとおかしな人なのかな。

まぁ萌絵の友達だしな。

と、これまた意外と的を射た評価を下す翔太。

「フフン。ボクの名は黒羽百合子。姉崎萌絵の友人という名誉を拝した幸運な人間だよ」

「えっと、本当に萌絵の友達なんだ?」

「ああ。彼女の言っていることは本当さ。どうか信じてやってくれ」

「あ、ハイ」

「フフン。翔太クン。和泉翔太クン。ボクは君とは一度、じっくり話をしてみたかった」

「・・・話ですか?」

こっちはただの小学生だ。

いくら萌絵の友人と言えど興味を持たれていたとは驚きだった。

「そうさ。一度聞いてみたかった。姉崎は仲を深まれば深めるほど、そのクソっぷりがわかるからね」

「・・・・・」

「こんなクソ女と交流を深める少年なんて、それこそどんな聖人君子なんだろうとね」

HAHAHAと、さも愉快げに、そして高らかに笑いあげる百合子。

あれ?この人萌絵の友達なんだよね?

「いやいやいや。君の言いたいこともよくわかる。だが、ボクの言い分も聞いてほしい。

語るも涙、聞くも涙のボクへの仕打ちを」

「はぁ・・・」

「どうだい?今度、姉崎抜きで二人きりで会えないかな?」

「え?」

「きっとボクらは相性がいいよ?それも最高にね。ボクにはわかる。翔太クンきみと---」


「百合子?」

「・・・・・・・・・・・おや、誰かと思ったら我が心の友萌絵君ではないか?

おかしいね。今ボクは翔太君と話していたはずなんだが?

幾ら友人と言えど、少年との会話を邪魔するなんてどうかと思うぞ?」

「そうね。その辺も含めて、今度話しましょうか?貴女の望む通り、二人きりで」

「はっはっは。御免こうむると言っておこうか。なんか殺されそうだし!」


「まぁ恋人たちの語らいをこれ以上邪魔するのもなんだしね。ボクはこの辺で華麗に去るぜ。アディオス!」


そう言って電話は切れた。

沈黙が二人を間をよぎる。

嵐のような人だった。


「まぁなんというか、強烈な人だな」

との翔太の言葉に、萌絵は憎々しげに携帯を睨み付けながら言った。

「・・・翔太。もし百合子に会ったら、すぐ私に電話して」

「電話って、俺携帯持ってねーし」

ギラリと鈍く光る視線を翔太に向ける。

「なら用意するから!いい?」

「ええっ!?」

「いい!?」

「わかった。わかったから!」








「じゃ、またな」

「うん。また来週」

土曜日の夕暮れ時。

とはいっても、まだまだ日は高いが今日はこれまで。

翔太には風呂掃除という大仕事があるのだ。

これをしないと実姉からの折檻が待っている。

避けては通れぬ道なのだ。


そんな彼を見送る萌絵と近重。

いつもならすぐに背を向ける翔太が、今日は珍しく何かを迷っているようだった。


「翔太?」

「・・・あ~、うん。萌絵?」

「なに?」

「ちょい、屈んで」

「?うん」

翔太に言われて素直に従う萌絵。


ふわっと草むらの香りがした。


「おめでとう。萌絵」


次いで彼女の鼓膜を打つのは、心地よい翔太の言葉。

首に回された細い腕がぎゅっと強められたのを感じた。

「・・・うん。ありがとう」

心からの言葉に、萌絵も心からの言葉を返す。

いったん翔太は彼女から離れて、そして目を見てほほ笑む。

「頑張ったな。萌絵は頑張った!」

小さな両手が彼女の手を掴んで、ぎゅうっと握りしめてきた。

「うん・・・うん」

萌絵は再び翔太を優しく抱きしめる。

至福が彼女の心を満たしていった。


しばらく抱き合ったままの二人。


そして・・・





「おい?・・・・離せ?」

「・・・・・・・・・・・・・」





「おい。離せってば」

「・・・・・・・・・・・・・」



翔太の言葉に呼応するかのように、ぎゅうっと萌絵の腕の力が強まる。


「おい!キツイって、てかヤバイ!というか痛い!痛い痛い痛い!!」


ついには翔太の悲鳴が上がりはじめる。

「もう---もうね?」

「も、もう?」

「もう・・・辛抱たまらないの!」

一瞬翔太の思考が止まった。

「なんだそりゃ!?お前はどこぞのお代官様か!!」

ぬおおおっと萌絵の腕からなんとか抜け出す翔太。

しかし萌絵の右手がどうしても離れない。

「ふふふ。逃がさないよ翔太」

ダメだ。この女、目の中がダビデ像のようになってる。

萌絵の瞳を見て覚悟を決めた。

「くそ!血迷いやがって!いいぜ、来やがれ!」

と、かっこよくキメ台詞を放つ翔太。

実は昨日見たヒーローアニメでブラックが敵に放った言葉だったりする。

だが、それが今は裏目に出た。


「・・・行っていいの?」

我が意を得たりとばかりに、敵の瞳に怪しい光が灯る。


「・・・あ!ゴメン。今のナシ!」

うん。と萌絵は笑顔でうなずく。

「さ、このままベッドへ行こう?」

「意味わかんねーっつの!まだ昼間だってば!」


ずるずると引き摺られながらも抵抗を止めない少年は、傍らにたたずむメイドを見つけた。


「ちょ、ちょっと!近重さん!助けて!!」

「・・・申し訳ありません。主人の意向には最大限尊重すべきと思いますので」

「こっの駄メイドォ!!」


慇懃無礼に頭を下げる彼女に思い切り罵声を浴びせる。

すると彼女はいそいそと懐からビデオカメラを取り出し、RECランプに光を灯したのだった。

さぁっと翔太の顔から血の気が引いていく。

ハートマークを瞳に灯し、満面の笑顔を向けてくる彼女に戦慄を覚えた。

そして思いの丈をぶつけた。




「萌絵の馬鹿たれぇぇぇっ!!」




晴天の空に翔太の声が響いて渡る。

風は熱さを伴い、陽は中天から彼らを照らす。


季節はこれから本格的に夏を迎えようとしていた。

取り敢えずの完結です。

気が向けば第三部をやるつもり。

夏休み編、百合子と翔太のお買い物デート編、修学旅行京都炎上編とか。


次はもしかしたらファンタジーを書くかもです。

おっさんと少年のハートフルボッコな触れ合いを描いたダブル主人公モノ。

勿論、当然のようにオネショタは入れますけど。

今度はちゃんとプロットを立てます。

だからもしかしたらプロットでポシャるかもしれませんが・・・。

もし目にする機会がありましたら、読んでいただけると幸いです。




いや、でも曲がりなりにも完結できるとは思ってなかったですよ。ホント

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