029.5 真紀編 後日談
色々勉強になった話でした。
思い描いたものを正確に書き出すことのなんと難しいことか。
「あれ?マッキー?」
そうウチに声をかけてきたのは翔太だった。
映画館から出てきたウチたち。
「翔太じゃん?珍しいねってかマッキーやめろ」
たかたかとこっちに駆け寄ってくる翔太にチョップ
「あたっ!?」
「で?なんでいるん?」
「映画の割引券貰ったんだよ。で、芽衣姉と来たんだ」
「・・・へぇ」
それとなく芽衣を探す。
ちょいとエマージェンシーが脳裏で鳴り響く。
それに気付いたのか翔太が続けていった。
「芽衣姉は今トイレ行ってるよ---あれ?」
そしてやはりというか、当然というか、ウチの相方に気づいてしまった。
さっきからウチの背中に隠れようと必死だった人。
いや、無理だから。
二人とも同じくらいの背丈なんだし。
っと、それどころじゃない。
速攻で言い訳を考える。
「あ~~。ウチの友達で、い--折紙さん」
「ふ~ん。そうなんだ」
ん?
意外と勘の鋭い子だからなにか気づいたかな?
「伊織兄ちゃんの親戚?」
ビクリと背後の折紙さんの身体が震えるのを感じた。
「え?ど、どして?」
「だってそっくりじゃん」
こともなげに言った。
うん。この子たまに凄いわ。感心する。
「よ・・・くわかったわね。い、従姉なのよ」
「従姉?ああ、だからかぁ」
「たまたまこっち来てて、人見知りでさ。今日はウチが相手してるん」
「へえ。初めまして。和泉翔太って言います。伊織兄ちゃんとは友達なんです」
こくりと頷くいおりん。
うん。知ってるよね。
知らないはずないし。
でもそれどころじゃないだろうなぁ。
たぶん生きた心地しないんだろなぁって思う。
さすがに旧知の間柄の人に出会ったのは今日が初めて。
心臓に毛が生えているさすがのいおりんも冷や汗出まくり。
そんないおりんを翔太はじっと見つめてる。
なんだろ?珍しいな、この子がこんなに気にするなんて。
まさか一目惚れ?
・・・・・あり得る。
そんなウチのしょーもない思惑を知ってか知らずか、翔太はいおりんに問いかけた。
「高校生ですか?」
「そ、そうだけど?」
と、いおりんの代わりにウチが答える。
「・・・・」
またじーっと翔太の小さな目が、いおりんに注がれる。
映画館でざわついているというのに、
この場だけは切り取られたかのような緊迫した空気。
それに堪え切れず、ウチは聞いてしまう。
「なに?翔太どうしたん?」
「いや、そのさぁ・・・もしよかったらなんだけど」
これまた翔太には珍しく、ちょっと歯切れの悪い言い方。
え?
マジ告白?
「俺の友達、その紹介とか、したいんだけど・・・どうかなぁ?」
と、予想外の申し出がなされた。
「友達?」
ガシガシと髪の毛をかきながら、翔太は口を尖らせて言った。
不本意そうだけど、ほんとはその人を心配しているような感じ。
「そいつさぁ、友達、マジでいなくてさ。
伊織兄ちゃんの従姉なら俺も安心だし。
実際にいい人そうだし」
「・・・え~っと」
こまった。
結構まともなお願いで、断りづらい。
横目で見たいおりんも困惑気味で、どうすべきか迷う。
いや、断らないと後々まずいことになるのは決まってるので、断らざるを得ないんだけど。
そんな躊躇うウチに翔太はさらに言葉を告げる。
「あ、大丈夫。そいつ女だし」
「ダメ!!」
それはウチがゆるさない!
自分自身フラストレーション溜まりまくりなので、取り敢えず次の話を創作中。
主人公sideに戻ります。