表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/38

028 真紀編 続

作者「あれ?マッキー、君ってば結構むつかしい子?」

真紀「マッキーいうな」


まぁそんな感じの四苦八苦中です。

「ん」


そう言って目の前に差し出されたのはウチの好きなオレンジジュース。

反射的に受け取ってから、ウチはいつのまにかそこに居た親友に聞いてみた。


「なんでめーちゃんがここいるん?」

「はぁ!?真紀が電話で泣いてたからでしょうが!」

ああ、そういやした気がする。

結構あやふやな記憶だけど。

ウチなんでめーちゃんに電話したんだろ?

「別に・・・泣いてないし」

「いや、現在進行形で泣いてるじゃん。それもガチで」


そういってめーちゃんは隣の切り株椅子に座った。

ウチは鼻水をすすりながら改めて辺りを見渡す。


「・・・ここ、どこ?」

「梵天公園に決まってんでしょ」


隣で盛大なため息が聞こえた。

いや、そこまでオーバーリアクションするほど?


「辺りじゅうに響くような泣き声上げてたくせに。散歩のおばあちゃん心配そうに見てたわよ」


え・・・マジで?

それはマジでハズイんですけど。

聞いたところによると、後から来ためーちゃんに託して心配しながらも帰って行ったらしい。

騒がしくてゴメンよ。どっかのおばあちゃん。


「で?なに?一体どうしたってのよ。真紀、今日伊織さんとこ行くって言ってたじゃない」


いおりんの名前を聞いて、また涙があふれてきた。


「ちょ!?真紀??」

「ふぇぇぇぇぇ!」


あ・・・また鼻水出てきた。

ウチってば何してんだろ。ホントしょーもない。

なんとか気分を落ち着けて、鼻をかむ。

隣ではめーちゃんがウチが落ち着くのを待っていてくれた。

昔からずっとこの子はそう。

だからウチはめーちゃんには話す気になった。


「あのね・・・」

「うん」


息がつまりそうだったけど、なんとか言葉を吐き出す。


「いおりんね・・・彼女いたん」

「は?・・・・いや?いやいやいや!なわけないじゃない!!」


なんでめーちゃんが言い切れるのかすっごい不思議なんだけど。

でも、そうは言うけど、ウチは確かに見た。

すっごく、すっごく綺麗な女の子だった。


「今日いおりんの家に行ったら会った。間違いない」

「え?えぇ~。なんかの間違いじゃない?」

「でも・・・」


またあふれてきた涙を袖で拭う。

目の周りが擦り切れて、ちょっと痛かった。

ぐずぐずしているウチの隣で、めーちゃんが立ったのがわかる。

ぐいっと服の袖を引かれた。


「あ~もぅ!ここじゃ埒あかない!とりあえず真紀の家いこ?もうすぐ夜だし」

「え?だって、めーちゃん今日お泊りじゃなかった?」

「いいから。真紀ほうってはいけないでしょ!」


そういうとめーちゃんはウチの手をぐいぐい引っ張って、

商店街へ向かっていった。





店のドアを開けてめーちゃん。

「あ、おばさーん。お邪魔しまーす」

「あら?芽衣ちゃん?久しぶりね」

ママに挨拶するめーちゃんの背に隠れながら、ウチはそそくさと家に上がる。

なんとなく泣いている姿を見せたくなかったから。


「すみません、突然。あと、いきなりなんですけど、今日泊まってもいいですか?」

「え?構わないけど。今日、ウチはコロッケなんだけどいいかしら?」

「わ!もしかして、おばさんのおからコロッケ?あたし大好き!」


階下でのそんな二人の話を聞きながら、ウチは自分の部屋に向かう。

もう悩みをぶちまけたいというよりは、引きこもりたい気分になってた。

置いてきぼりにしためーちゃんが、まだ下でママと話している声が聞こえる。

ウチは制服を適当に脱ぎ散らかすと、下着姿のままベッドの中に潜り込んだ。

あ、これ良いかもしんない。

真っ暗な中でそう思う。

もうこのまま一生出なくてもいいかなという気持ち。

考えれば考えるほど、とてもいいアイディアのような気がした。

ここなら他人からビッチとか言われないし、いおりんの彼女にも会わなくても済むし。

そうだ。今日からウチは布団女になろう。

そうしよう。

・・・・・・。



でも、きっとウチの親友は、ほうっておいてくれない。

ほぅら聞こえてきた。

ドスドスと音を立てて階段を上がってくる魔女の足音。

ドアが開く音と盛大なため息がほぼ同時に聞こえた。

人の姿を見て溜息なんて、なんか失礼。

布団女の何がいけないっていうん?

そんな親友には声なんてかけてやらないんだから。


ドン


黙っていると突然上から大きな振動が伝わった。

ウチの上体が横に激しく揺れる。

あ!この感触は手じゃない、足だ!!

この女、親友を足蹴にしやがった!

信じらんない!!

傷心のウチになんて仕打ち。

自分も一度振られてみればいいのに。


神様、どうかこの乱暴女にバチを。

きっついバチを与えてください!

例えば・・・えっと、そう!便秘が一週間続くような、そんな感じで!!



・・・とまぁそれは半分冗談なんだけど。

つまり半分は本気だったんだけど。



その後は静かなものでしたね。

めーちゃんはそのままこの部屋に居座っているようだった。

布団越しでもその気配だけは伝わってくる。

なんか怒りを纏った気配がそりゃもうヒシヒシと。


なんか怖いんですけど・・・。


すると動く気配がした。

また蹴りに来るか!?と思わず身構えた。

だけどいつになっても衝撃は来ない。

そっと布団の隙間から外を覗き見てみる。

なんとめーちゃんは、ウチが脱ぎ散らかした制服をハンガーにかけているところだった。


ウチの親友マジ天使。


神様さっきのお願いちょっと変更お願いします。

便秘は三日くらいで。


片付けの終わっためーちゃんは、適当に部屋のクッションを寄せ集めて、どかりと座り込む。

スカートの合間から白い布地が見えた。

女の子が胡坐はどうかと思うなぁなんて思ってると、あ、ヤバ。


目が合っちゃった。


「・・・・・・・」

「・・・・・・・」


それでもお互いずっと無言。

でも、ウチそういうのが一番苦手で、それはめーちゃんも知ってる。

だからやっぱりというか、先に負けたのはウチだった。


「なにも聞かないの?」

「聞いてほしいの?」

「・・・別に」


はぁっとため息が聞こえた。

いや、めーちゃんさっきからため息つきすぎだから。

幸せ逃げるって知ってるでしょ?

そんなことを思っていたら、今度はめーちゃんが聞いてきた。


「それで?何があったの?もう一度詳しく聞かせて」

「詳しくって・・・ウチすぐ逃げたし」

「逃げんなよ」


即座にダメ出しされた。

それってひどくない?

逃げるに決まってるじゃん。


「だって、その人、服着てる最中で・・・ってことは、そのアレでしょ?」

「アレって?」


こうゆうのめーちゃんは本当に鈍い。

もう壊滅的なレベル。

しぶしぶウチが補足してあげる。

そうはいってもウチもそんなに詳しいわけじゃないけど。

最近の少女漫画は結構際どいの多いので知識はあるのだ。


「その・・・アレじゃん。キスとかその先とか」

「!?・・・あ、ああ、そっか。アレね。うん。アレ!」


ヤバ。

思い出したらまた泣けてきた。

布団で目元をぬぐう。

あ~目元痛い。

もうホントしょーもない。


「でもなぁ~。それ信じられないんだけど」

「・・・なんでそんなこと言えるん?いおりん超かっこいいじゃん。

高校生になってもっとかっこよくなってるし」

「いや、そういうあんたの伊織さん自慢は聞いてないから。

じゃなくて・・・あ~でも、これってば言っていいのかな?」

「?」

「あ~もう知らない。伊織さんが悪いんだ!!」

「??・・・何切れてるん?」

「伊織さん。先々月からバイトはじめたでしょ?風華堂の」


うん。知ってる。

そのお店もウチたちには馴染みの店だし。

風華堂は商店街にある甘味処。

よくウチもめーちゃんと行ったりする。


「あれ、真紀の為のバイトだから」

「・・・へ?聞いてないし。そんなん」


大体、ウチの為ってのがわからないし。


「そりゃ言わないでしょ。あんたの誕生日プレゼントの為のバイトだもの」


そう言えばバイトはじめた時、なんで始めたのか聞いたらはぐらかせたことがあった。


「なんでめーちゃんが知ってるの?」

「いや、たまたまカマかけてみたら、思ったより簡単に引っかかってくれてね」


あれは性格だねと、めーちゃん。

そこはせめて嘘がつけないとか、正直者とか言ってほしい気がする。


「で、今度はあたしが聞かれたのよ。真紀の日焼け止めについて。

あの外国のやつ。高いんでしょ?お年玉で買ったって聞いたし」


うん。それは正解。

ウチは油断すると春先でも日焼けする。

しかも日本のは効果が弱いみたいで、わざわざ外国から取り寄せている。


「日用品で、消えモノ。ちょっと高価だけどなかなか悪くないチョイスだと思わない?」


ウチの知らない情報を知ってるめーちゃん。

それはちょっとずるい気がした。


「ちょっと布団被ったまま睨まないでよ」


とほっぺを膨らませた。

なんか可愛い。

ちょっと癒されました。


「だから、真紀のはきっと勘違い。きっと学校の用事とかでたまたま居合わせたとかそういうのよ」

「でも・・・」


それでも彼女はいおりんの部屋で着替えていた。

あれはどういうことだったのか、考えてもわからない。


「そんなグジグジするくらいなら、もういっそ泣いて縋りつけば?私を捨てないで!とかさぁ」

「そんなん出来るわけないじゃん。みっともない」

「あのねぇそうやってるだけでも十分みっともないから。自覚しろっての」

「・・・別にいおりんに見られてないからいいんだもん」


「良いわけないでょ。あ~ホントにもぅ!昔っからグジグジ癖直らないんだから!!」


めーちゃんが癇癪を起しかけた時、ウチの携帯が鳴った。

自然とウチたちの視線がそこに向かう。

めーちゃんが携帯を拾って、画面を見つめる。


「もうこうなったら聞いてみなよ。本人に」


そう言って携帯をウチに差し出した。


着信画面に表示された相手の名前、それは---








『真紀?』


その声はいつもウチを落ち着かせてくれる人の声だった。

でも、今日だけは違う。

聞いているだけでウチの心は騒めいていく。


『真紀?』


またウチの名前が呼ばれる。


「・・・うん」


カラカラに干上がった口を開いて、なんとか頷く。

受話器の向こうで、安堵の息が漏れたのを感じた。


『「あの」』


二人の声が重なる。

そうなるとそのまま言葉を続けるのは憚られた。

ウチはじっと待つ。


『なに?』

「・・・いいよ。いおりんからで」

『・・・そう』


また少し黙る。


『明日、会えるかな?』

「・・・なんで?」

『どうしても真紀に言っておきたいことがあるんだ』

ドクンと胸が鳴った。

「・・・電話じゃ、ダメなん?」

『うん。会って話したい』


はっきりとした言葉。

うん。昔からいおりんは変わらない。

自分の信念がちゃんとある人。

ウチみたいにグジグジ悩んだりなんかしない。

即断即決の人。

たまに突き進み過ぎたりするけど、ウチなんかよりずっといい。

きっと今回も、もう決めているんだろうな。

それでも、ウチはあえて聞いてみる。


「それって・・・あの人のこと?」

『あの人?・・・ああ、うん。まあそうかな?』


そうかな?だって。

別にいいのに。

いまさらだってば。

いつもみたいにはっきり言えばいいんだ。

電話で済むことじゃん。

彼女ができたから、これからは家には来ないでほしいって。

そしたらよっぽど手間がかからないのに。

あ、もしかしたら彼女に説明するためにウチに同席してほしいってことなのかも。

ただの幼馴染だって証言させるため?

それは・・・ちょっとやだなぁ・・・。


『今日あんなことがあって・・・だから聞いてほしいんだ』

「・・・」

『真紀、どうかお願いだ』

「・・・いいよ」


しばらく考えた。

よく考えた方だと思う。

そして、受けた。

まぁ昔からウチはいおりんのお願いを断ったことないんだけど。

やりたくないけど、いきたくないけど。

そこはぐっとこらえて。

行って頷くくらいはしてやるさ。

ついでに、言えたらおめでとうを言ってあげよう。

伊達に被害妄想でイメトレしてたわけじゃない。


『ありがとう。それじゃあ、明日朝の10時に僕の家に来てくれないかな?』

「うん。わかった」


それからウチは電話を切って、息を吐く。


その後は特に何もなかった。

めーちゃんと一緒に部屋でご飯食べて、お風呂入って、一緒に寝た。

特別なことは何も話したりはしなかった。

今度やる映画の話とか、最近買った漫画の話、CDの話そんなの。

眠れなかったから、二人布団の中でずっとしゃべっていた。


まぁ気づかない内にウチは寝ちゃってたんだけど。





翌朝、めーちゃんは帰った。

ウチの髪の毛を入念に櫛で梳いてから。

そんなんでウチのくせっ毛が治るはずはないんだけど。

それでもまぁ少し元気は補充できた。

めーちゃん力補充完了。







さぁて、ふられに行きますか!


えいやとばかりに立ち上がる。

ウチはいおりんの家を目指し家を出た。

作者自身、正直納得できてない場所も多々ありますが、どうかご寛恕ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ