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026 姉崎邸訪問 お泊り会 後編

これにてお泊り会は終了


皆さんが楽しんでくれていたら嬉しいです

映画も終盤に差し掛かる。

時刻は午後十時を指していた。

やがてエンディングロールも終わって、翔太が溜息を一つ。


「うん。面白かった」

とまず簡単な感想を一言。

そのあとひとしきり感想を言いあい、紅茶もなくなりかけたころ。

ふと気が付けば翔太のまぶたは徐々に下がりつつあった。

会話の切れ間を見計らって萌絵が提案する。

「そろそろ寝る?」

「・・・ん。ああ、でもその前にお風呂入りたい」

「うん。こっち、もう用意できてるから」

萌絵に手を引かれ、着替えをもって部屋を出る翔太。

連れてこられたのは脱衣所と言うには広すぎる部屋だった。


「じゃあ、どうする?萌絵が先に入る?」

「え?」

「・・・・え?」

「・・・・・・」

「一緒には入らないからな?・・・絶対」


断固として、そして男として、これは決して譲れない。

誰かと一緒に入るなんてのは小学校4年生で卒業したのだから。

これは漢を見せる戦いであり、負けられない戦いである。

ここに翔太の絶対防衛戦の幕が上がったのだった。







で。


「うお~~ぃ。気持ちい~~広い~~でけえ~」


浴室に反響する歓声を上げながら、翔太は湯船にその身体を沈めた。

まるで天国にいるようだった。


しくしくしく


「あ~~癒されるわ~」


しくしくしく


「・・・・・・・・」


そして、どこからか漏れてくる女性の嘆きの声に眉をしかめた。


「入って来たら、絶交だからな」

「そんなぁ・・・翔太ぁ~」


半透明の入り口の床には崩れ落ちた黒い影。

萌絵がカリカリと扉をひっかく音が聞こえてくる。

いや、不気味だから。

マジで止めて。


「だってぇ~~。まだ下着見てもらってないぃ~」

「わけわかんねーことゆーな!!」


下着って見せる物じゃねえだろと、お子様な翔太はプンプンでしたとさ。




閑話休題そんなこんなで




なんとか入浴も無事終わり、翔太は縦線を浮かべた萌絵に連れられて寝室へと向かった。

そして、なかば予想通り。

キングサイズのダブルベッドが翔太を出迎えた。


「・・・おい」

「なにひょうたたたた!」


すまし顔で答えた萌絵のほっぺたを背伸びして抓る。

額に青筋を浮かべて問い詰めた。


「お前は、どういう、つもりで、ここに、連れてきたのかな?」

「だってぇ・・・私、さっき我慢したよ?すっごい我慢したんだよ?」


と恨めしげな目を向けてくる萌絵。

なんだそのいっぱい頑張りました的な言い方はと、ちょっと問い詰めたくなった。

だいたい我慢するとかしないとかの問題ではないのだが、

彼女の中ではどうもそういうことになっているらしい。

解せぬ翔太であった。


「大丈夫。一緒に寝るだけ。それだけ。なんにもしないから!」


さて、ここで問題です。

今日萌絵は何度、何もしないと口にしたのでしょーか?


「・・・」

「ねぇ翔太、一緒に寝よ?」

「・・・・・・」


まぁ確かに初めての友達の家での外泊だし、翔太にも不安は微かにあった。

しばらく迷っていると、萌絵が声を上げた。


「わかった!大丈夫。あれするから!」


あれ?あれとは何ぞや?と翔太は表情に疑問符を浮かべる。

すると萌絵は部屋の隅にあったスツールから、あるものを取り出して翔太に手渡してきた。


「・・・えっと、萌絵?」


ドン引き。



これはない。



マジでない。



手渡されたものを持つ手が震えてきた。






それは「て」で始まり「じょ」を経て、「う」で終わるもの。



そう。



手錠。



初めてみました。

ガチで犯罪臭プンプンのお道具です。


しかも、わっかの内側には肌がこすれないようにピンク色のふわふわが取り付けられてもいた。


なんだこれ!?


なんだこれ??


これで俺にどうしろっていうの?


っていうか、ナニするつもり!?


無言の問いかけをする翔太。

それを萌絵はわかっているといった笑顔で答えて

「はい」

と両手をくっつけて差し出す。


違う!そうじゃない!


くらりと眩暈を覚えた。


「いや、これ。どう考えてもアウトでしょ!?」

「え?・・・でも、これしないと、きっと私翔太襲っちゃうよ?」

「・・・・・俺はたまにお前が怖くなる」


きっとじゃねーよ・・・

ちゃうよじゃねーよ・・・



ガチャリ



結局、己の安全のために翔太は良心を捨てた。

手錠をかけた時、翔太は自分の中の何かが汚れてしまったような気がした。

しかも後ろ手にしたほうがと言う彼女からの提案もあったのだが、

それはもう色々とアレでアレなので勘弁してくださいと泣きついた。

さてこれを付けたということは、言外に一緒に寝ると許可したことにもなる。

手錠をかけられた萌絵は、うれしそうにベッドに飛び乗った。


手錠を付けた美少女がベッドの上で、楽しそうに笑いかけてくる。

かなりシュールな絵面であった。


おかげで入浴でのさっぱり感がすっかり消え去ってしまった翔太。

おっかなびっくり萌絵と同じベッドにその身を滑り込ませる。

向き合う様に横になる二人。

小学生の翔太ですら、見惚れるほどの美しい少女が目の前にいた。

視線があうと胸の奥が暖かくなった気がした。


チャリ---と鎖の音がしなければ・・・だが。


本当に残念な奴だと思う。

嬉しそうに微笑みを浮かべる萌絵を見て翔太は尋ねた。


「そんなに俺が好き?」

「うん。すごい好き。愛してる」

「・・・そうかい。ありがとな」


すると萌絵は手錠でつながれた両腕を翔太の頭から通して、ぎゅっと抱きしめてきた。


「・・・・・・」

「うふふ。翔太枕。あったかい、いい匂い」


もう抵抗するのが馬鹿らしくなってきた。

なんだかなぁと翔太は思いながらまぶたを閉じる。

静かに息を吸う。

暗やみの中で、そこは萌絵の匂いがした。




翌朝、帰宅した近重に起こされた二人。

その有様を見て、近重はひとこと。


「あまりお嬢様に無理はなされませぬように。お願いいたします」

「違うからね!?俺が主体じゃないからね!」


晴天の朝に翔太の悲鳴がこだましたとか、しなかったとか・・・

これくらいならまだR15ですよね?


明日、もう一話あげられると思います。

side:??? ←このタイトルは仕様です(意味深)

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