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023 兄と弟

唐突話題

群像劇とか好きです。

主人公が一人だけより、何人もいるとお得感?があって。

デルフィニア戦記とかアルスラーン戦記で目覚めた感じ。

まぁあれらはどっちかというと戦記物ですけど。

最近だとアニメアイドルマスターとか良いですな。


で、そんな感じを目指してのオネ×ショタ×ボンなのですが・・・

いやはや、難しいですね(泣)

商店街の中を歩いていくと、翔太は不思議な現象に遭遇する。

何人かの高校生たちが蓮二を見て、すぐさま頭を下げる光景が連続して起こったのだ。

これはアレだろうか。

蓮二はもしかしなくても、俗にいう番長というやつなのかもしれない。

テレビの中でしか見たことなかった存在に、翔太は思わず蓮二を見上げた。

「ん?なんだ?」

「あの吾妻さんて、もしかして番長ってやつ?」

随分直接的な物言い。

もし蓮二の同じ高校の人間がいたら顔面を蒼白にさせたことだろう。

だが、翔太は彼に春と同じ雰囲気を感じ取っており、春と同じ対応をしてしまったのだ。

果たして蓮二は当然のようにそれを受け取り、気分を害することもなくハハハと笑った。

「あっはっは!番長か。初めて言われたぜ。どうしてそう思う」

「なんとなく春にぃっぽかったから」

「・・・へぇ」

翔太の言葉を聞くと、蓮二は表情に喜色を浮かばせて翔太の背中をバンと叩いた。

「あたっ!」

特に起こった様子もなかったので翔太は小首を傾げた。

「そういや、なんで俺のこと知ってたの?」

「ん?そりゃあ春さんからに決まってる。で、ちょっと頼まれてな」

「頼まれたって何を?」

「お前に会ってくれってさ。最初、詫び入れろってことなのかと思ったんだけどよ。

どうもそうじゃないらしくてな。ただ会ってくれるだけでいいとさ」

「なにそれ?」

「さぁなぁ。春さん時々俺が分かんねぇこと言うし。

でも、まぁ春さんからの頼まれごとだしな。できるだけのことはするさ」

この人も随分春を慕ってくれているらしい。

なんとなく翔太もうれしくなった。



やがて翔太の家と春の店が見えてきた。

遠目ではっきりとはわからないが、

店の前にはタンクトップにエプロン姿の春の背中が見えた。

どうやら誰かお客の対応をしているようだった。

話しているのは同じくらい年頃の女性。

黒髪のセミロングの女性。

ピンク色のカーディガンを羽織り、手には白いポーチを下げていた。

見覚えはあった。

たまに春の店で花を買っていく女の人だった。

確か春の高校時代の同級生だったはず。

織笠遊子さん。

翔太や芽衣も何度か話したことがある。

ほんわかとした雰囲気のとても優しい人だ。

遊子はどうやらこちらに気づいたようだった。

うっすらと微笑んで、右手を上げた。

そして見つめた先には蓮二。


「れんちゃん!」


蓮二は獣の唸り声のような声を吐き出して、遊子を睨み付ける。

「遊子。その呼び名、止めろって言ったろ?」

春が振り向くと翔太と蓮二の二人を見て少し驚いたようだった。

「あ、翔太君もおかえりぃ」

と、遊子はへにゃっと翔太に微笑む。

「ただいま。遊子さん。春にぃ」

「おう。おかえり」

そういって春は翔太の頭にポンと手を置いた。

「意外な取り合わせだな」

「ちょっとそこで会ったんですよ。それに元々は春さんが頼んだことじゃないですか」

と蓮二は春に言いながら、遊子には懐から取り出したあの携帯を手渡した。

「あれれ?なんでれんちゃんが私の携帯持ってるの?」

「なんでじゃねえよ。お前、また携帯落としたろ?翔太が拾ってくれたんだぞ」

「あれぇ?ホントだ。無くなってるや」

自分のハンドバッグを探りながら、そんなことを呟く。

「翔太は遊子を知ってたのか」

と蓮二。

「うん。春の店のお得意さんだしね。たまにウチのパンも買ってくれるし」

「ああなるほど。まぁ見た通りボケた奴で良く携帯落とすんだ。お前が拾ってくれて助かった」

「ぶぅ~。酷い言い方。あ、でも翔太君ありがとね」

ちょっと気になったので翔太は聞いてみた。

「二人は吾妻さんと知り合いなの?」

すると蓮二は若干ばつの悪そうな表情を浮かべて視線を逸らす。

それを見た遊子がふふふと楽しそうに笑う。

「そうだよね~。仲良しさんだよね?河原で殴り合った仲だもんねぇ」

「まぁ俺は殴られただけだけどな」

と春は苦笑を浮かべながらチラリと蓮二を見る。

「ええっ!?」

「いや!それはそうだけどよ!いや、そうじゃなくてな!」

しどろもどろに弁解はじめる蓮二。

「ああくそう!遊子も春さんも余計なこと言うなよ」

カカカと春は笑う。

「まあ簡単にいうと・・・」

少しだけ考えてから

「暗い夜道で、死角から怒鳴り声とともに・・・殴られたことがあるだけだ」

「!??」

「おいぃぃぃ!それだと俺、マジで通り魔じゃねえか!!

違うだろ!?そうじゃないだろ春さん!」

「こまけえこと気にすんなよ」

「細かくねぇって!翔太、違うからな?これはそういうんじゃねえからな?」

とにかく必死な蓮二がさっきまでの彼とは打って変わってちょっと微笑ましい。

「あーもうめんどくせぇな。女とられると思った馬鹿が逆上して殴りかかってきたのは違いねえじゃねえか」

「女って・・・ああ彼女なの?遊子さん」

「ちげえよ!」

顔を真っ赤にさせて蓮二が叫ぶ。

「じゃあ嫁だ」

「それでもねえ!」

そんな春との掛け合いを隣の遊子は嬉しそうに眺めて、

その白い手を蓮二の金髪頭に伸ばす。

「従姉のお姉ちゃんなんだよねぇ」

言いながらナデナデと蓮二の頭を撫でる。

「それも大切なが枕につくな」

そんな掛け合いに翔太は自然と笑顔が浮かんでいた。


「・・・チッ!言ってろよ」


その手から逃げるように蓮二は身体を後ろに引くと、春に視線を向ける。

「とりあえず春さんに報告だ。翔太とは俺なりにケジメはつけた。

あいつらももう変な気を起こさせないようにしたしな」

「ああ、どうやら翔太も大丈夫みたいだしな。今回は助かったぜ」

チラリと翔太を見て春は答えた。

それについて尋ねる前に蓮二がぼやく。

「別に。悪いのは全面的にこっちだったからな」

そんな二人の会話に遊子が眉をひそめる。

「なに?また危ないこと?」

「ちげぇよ。そういうんじゃねえ。じゃ、俺は帰るわ。じゃあな翔太。悪かったな」

「あ、待ってよれんちゃん。私も一緒に帰る」

遊子は春から花束を受け取って、彼の後を追っていく。

蓮二は追いついた遊子に手を差し出して、花束を受け取る。

そしてこちらを振り向き翔太の名を呼んだ。

「俺のことは蓮二でいいぜ。名字呼び苦手なんだ」

「う、うん」

「じゃあまたな!」

「うん。またね」

そういって二人は連れ立って帰って行った。



「どうだった?」

と、突然の問いかけに翔太は隣立つ春を見上げた。

「どうって?」

「蓮二のやつ。口は悪いが気持ちのいい奴だったろ?」

「ん。そうだね。なんか番長!って感じだった」

「カカカ。番長か。なかなか言い得て妙って奴だな」

丁度その時、新しいお客が来て春が対応に出る。

翔太はもう一度、二人が消えた道に目を向けて考える。

もう二人の姿はそこにはなかった。

今日のこと。

そして春と蓮二のこと。

「春にぃ、もしかしてなんだけど」

お客が帰った時を見計らって今度は翔太が春に問いかける。

「んー?」

切り花が入ったバケツを寄せながら応える。

そんな春に翔太は幾分か逡巡した後、首を振った。

「---やっぱいいや」

「そうか?」

きっと春のことだから気づいているのだろう。

自分があの時から、特定の年齢の男子に拒否反応を持ち始めていたことを。

だからこその今日の蓮二だったのかもしれない。

あくまで翔太の想像だが、そう考えれば先ほど聞いた蓮二の春からの頼まれごとも腑に落ちる気がした。

蓮二という人物を知った今、それ以前までの拒否反応は薄れている気がした。

まだ完治とは言えないかもしれない。

だけど、自分を思いやってくれる人がいる。

それだけで心強い気にもなれたし、応えなければならないという気にもなってくる。

ゆえにこういう時はこう言うべきなのだと思う。


「春にぃ」


「んー?」


「ありがとね」


「おう」


兄が弟の為に行動を起こすことも。

弟が兄の期待に応えることも。

きっとそれは二人にとって当たり前のことなのだから。

22話と23話は唐突な話でしたが、いかがでしょうか?

実はこの2話がある意味では翔太の後日談という位置づけになっています(私の中では)


高校生から受けた一方的な暴力がすぐさま拭い切れるほど、小学生のメンタルは強くはないはず!

そう思ってこの話が出来上がりました。

実際に翔太のトラウマはまだ完治していません。

無意識に逃げようとしたところを、春に背中を押されてようやく自覚して前を向いた状態です。

解りづらいと思ったのであとがきでの補足でした。

本当は本文中に表現できるとよかったのですが、力不足ですみません。

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