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018 後日談?後時談?

side:芽衣を書いているときに思いついた話を組み込んでます


今回はヒロインの出番はありません

帰らないでと駄々をこねる萌絵を宥めて賺して、

這う這うの体で自宅へと帰還を果たした翔太。

「どっちが子供だ・・・」

梵ジュールの店先で壁にもたれかかって呟いた。

「おう。おかえり」

「ただいま・・・って、春にぃ!?」

頭上からかけられた言葉に反射的に答えてから、春を見上げた。

そこにいるのはいつもの春で、怪我も特に疲れてもいなかった。

「だ、大丈夫だったの?」

八人の高校生相手にして、いったいどうやって無傷で済ませられたのだろう。

そう思っての問いかけに、春は少し疲れぎみに息をついて。

「おう。なんとか午後の配達は間にあったぜ」

「いや、そうじゃなくってあいつらの方さ」

「あ?ああ、大丈夫だったよ。話せばわかる奴等だった」

「へ、へえ?」

そんな雰囲気では到底思えなかったのだけれど・・・

そういえば春はアクの強い商店街の大人たちとも、

対等に渡り合えるコミュニケーション能力を持っていたなと思い出す。

翔太は兄貴分のいうことを素直に信じた。

「それで?あの子ちゃんと送ってやったんだろ?」

「あー・・・うん。まあちゃんと送ったのは、送ったんだけど・・・」

「なんかあったのか?」

事情を知る春には、話しておこうとあの後のことを話す。

もちろん一部はそれとなく省いたけれど。

「へぇ。よかったな」

「え?よかったこと?これ」

場所は店先から路地裏へ移っていた。

互いの店の裏口で男同士の井戸端会議なう。

春は「んー」と悩んだ後

「まあ人に好かれるのは悪いことじゃないだろ」

と言った。

翔太も春に言われるとそんな気になってくる。

「そっか。そうだよね」

「そうそう。良く言うじゃねえか。嫁にするなら年上が一番て」

「そうなんだ!?」

「良くは言わないわよ」

ただ一言、それだけで翔太は心胆を寒からしめた。

「『ひとつ上の女房は、金の草鞋を履いてでも探せ』とはあるけど。

別に一番とは言ってないわ」

「・・・・・・・」

底冷えのする声が二人に突き刺さる。

季節は初夏だというのに春たちの肌には鳥肌が立った。

「男二人でこそこそと。最近ずいぶん仲がいいことね」

その瞳に静かな怒りを秘めて、雪の女王がそこに居た。

「め、芽衣姉!?」

「いつからそこに!?」

芽衣は肩を怒らせ、不愉快そうに答えた。

「は?そこの年上好きが「まあ人に好かれるのは」なんて知ったか言ってる時からよ」

「お、おう」

「ま・・・どうでもいいけど。翔太帰ってるならお風呂洗ってよ。今日当番でしょ?」

「う、うん。すぐ行く」

ぎろりと芽衣は春を睨み付ける。

「そっちの年上好きさんも、はやく自分の仕事に戻りなさいよ。鈴芽さんひとりで大変そうだったよ」

「お、おう。悪い」

なるほど、どうやら春を探していたようだった。

目的を果たした芽衣はそのまま二人の間を通り過ぎて、裏口から家の中に入って行った。

バタンと思いのほか大きな音を立ててドアが閉まる。

「春にぃ、ごめん」

「ん?まあ気にすんな」

頬をかきながらそう笑い飛ばす。

「なぁに、あいつは昔から食いモンに弱いからな。

今度一緒に行く水族館の近くに、美味い牛丼屋あるんだ。

それで機嫌は直るさ」

「・・・へえ」

そう自信満々に言って去っていく春を見て、翔太の胸に少し不安がよぎる。

確かに芽衣姉は食べ物好きだけど、最近ダイエットしてた気がしたのだ。


はたしてその日の和泉家の夕食は、どういう因縁か話題の牛丼だった。

ダイエット中であるはずの芽衣は輪をかけて不機嫌の様子。

しかし牛丼の魅惑には逆らえなかったのか、苦肉の策でご飯を少なめにして食べていた。

夕食後気になった翔太は、部屋に戻ろうとしていた芽衣に思い切って聞いてみた。

「デートに牛丼?」

吐き捨てるような返答でした。

その言い方と表情で、すべての答えがわかった。

わかった。もういいよと言う前に、鼻息荒く芽衣は続ける。

「ない。本っ気でないわね。

それが初デートだったら、殺意抱くレベル」

それでも怒りは収まらぬのか、さらに続ける。

「私だったら店に入らずにそのまま帰るわ。それでそいつとは終わり。

ジ・エンド、今生の別れね。次のデートなんかありえないから」

「・・・へえ、そっか~・・・へぇ~」

目が泳ぐ。

フヨフヨと。フラフラと。

「あんたも気をつけなさいよ。TPO!TPOが大事!

そして味はもとより、ちゃんと落ち着けて清潔な店を選ぶのよ」



その夜、翔太はこの真実を春に伝えるべきかどうか真剣に悩んだ。

しかし告げることで春の面目を折ることにもなりかねない。

こっちを立てればあちらが立たず。

小学生の翔太には難しすぎる難問であった。

脳裏をよぎるのは最後に見た春の笑顔。

守りたい。あの笑顔。








後日、憤懣やるかたない思いを抱え初デートから帰還した芽衣。

真剣な表情で厳選カフェ特集と銘打たれた雑誌を読み漁るのであった。

どうやら今度は場所を指定するつもりらしい。

今後、こんな感じ?でラブコメな感じで行くつもりです。


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