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017 翔太と萌絵

これでとりあえずの幕です。

よろしくお願いします。


そういやR15ってどこまでセーフ?

翔太はまさに茫然自失していた。

いま萌絵が言った言葉。

それは全くとは言わないまでも、予想の埒外にあった。

てっきりお礼を言われるかと思ったら、いきなりの告白であった。

「えっと・・・聞き間違いかな?もしかして好きっていった?」

「・・・うん」

「あー・・・そうなんだ。そっか、そっか」

「好き。すごい好きなの」

感極まった---そんな表情の萌絵。

これは良くない。

なにが良くないかって、彼女との彼我の距離が20㎝もないこと。

そしてこの体勢もよくない。

仰向けの翔太の上に、萌絵が覆いかぶさったまま膠着している。

萌絵の左手が翔太の右肩付近に、右手は左脇の下付近に、それぞれ陣取っている。

まるで逃がさないと言っているかのような体勢だった。

不意に萌絵の香りが翔太の鼻孔をくすぐった。

「そ、そう。まず落ち着こう」

「落ち着いてる」

嘘だ!!

思わず叫びそうになる。

大体、好きとは言ったがどの程度の好きなのかはっきりしていない。

もしかしたら友情としての好きなのかもしれない。

そうだった。

翔太は小学生で萌絵は高校生なのだから、そっちのほうだ、きっと。

でも、一応確認はしないとな・・・。

「えっと、好きって。どういう風に?」

若干引きつった笑顔で尋ねる。

友達としてだよな?

異性として、付き合いたいとかではないよね?

萌絵は少しだけ考えてから、その桜色の唇を開く。

「翔太の赤ちゃんが欲しいくらい」

「色々すっ飛ばしたなぁ!」

翔太は思わす悲鳴を上げてしまう。

小学生の翔太だって知っている。

男女というのは交際を得て、結婚それからようやく出産なのだ。

一部例外はあるかもしれないが、大抵はそうだ。

自らその一部例外になるつもりもない。

だというのに萌絵の思考は、少なくともその過程を吹っ飛ばしてしまっていた。

「でも翔太の赤ちゃんならきっと可愛いよ?」

「でもっていう意味がまるで分かんねえんだけど!!」

「だめ?」

「ダメっていうか俺、小学生なんだけど」

「気にしない」

いや、そこは気にしろよ。と翔太。

法律とかあるじゃん。

「翔太は私のこと嫌い?」

それは殺し文句だ・・・逃げ道がない。

「いや、嫌いじゃねえけど。まだ早いっていうか」

「なら、いつならいい?」

あれ?その言い方だと、赤ちゃんはもう萌絵の中では決定事項なの?

「ほ、ほら。もしかしたら俺よりもっとかっこいい人と出会うかもしれないじゃん?」

「ありえない」

「いや、もしかしたらの話。もしの話で考えてみてよ」

「・・・それが翔太だったら考える」

それ全然考えてないよね!

だめだ。コイツなんでこうなっちまったのかなぁ。

天井のシャンデリアを見つめながら考える。

「・・・俺のせいか」

どうもあのヘアピンがトドメだったようだ。

憶えてろ真紀ちゃん。

ここにはいない梵天商店街のやり手商人に報復を誓い、翔太は諦めることにした。

「俺、萌絵と4つ違うんだけど」

「大丈夫」

まぁ大人になれば4歳差なんて微々たるものなのだろうと翔太は思い直す。

「俺、萌絵んちみたいに金持ちじゃなくて、実家パン屋なんだけど」

「私、昨日翔太の家のコロッケパン食べた。美味しかった」

「え?来たの?声かけてくれれば---って、そうじゃなくて」

いかん。主導権が握れない。

「俺、あんまり頭良くないし、背も高くないぜ?」

「翔太の全部が好きなの」

「・・・・」

ああ困った。本当に言うことが無くなってしまった。

付き合うのは簡単だ。しかし翔太はどうしても自分に負い目がある。

どうあがいたって自分はまだ小学生。

萌絵と同じステージには立てない。

自分と一緒にいることで萌絵に迷惑をかけるのは、あの時だけで十分だった。

そのうち自分より、もっと萌絵にふさわしい奴が現れる。

翔太が見とれるくらいの美人なのだ。それは間違いない。

仕方ないか・・・と、ため息をついた。

その時、自分が諦められるよう、こっちが本気にならないように気を付ければいいだけか。

そんなことを思っていると、目の前で萌絵が小さく笑った。

「翔太の考えてること私わかるよ。でもね。それは間違い。

翔太だけ。私の一番は、これからはずっと翔太だけ」

その言葉と見下ろす瞳に、翔太の胸は不覚にも高鳴った。

「翔太だけでいいの」

「・・・わかったよ。じゃあ、つきあう?」

「うん。つ、つきあう!」

「ただし、エッチなのは禁止だからな。そういうのは大人になってからな」

「うん。うん!」

凄い勢いで頷き始めた。

「じゃ、じゃあ翔太触ってもいい?」

「・・・変なところはダメだからな」

萌絵は許可を得ると震えるその手で、翔太の頬を包み込むように触れる。

するとその手は翔太の背中を這うように伸びて、抱きしめてきた。

やばい。ヤバい。ヤバイ!

これは本当にまずい。

萌絵の柔らかさとか、暖かさとか、いい匂いだとかが、ダイレクトに伝わってくる。

萌絵の全身が翔太を搦めとろうと蠢き、彼の理性を犯し始めた。

翔太の顔を萌絵が頬ずりを始めた。

「ちょ、ちょっと、は、離れて」

意外なことに萌絵はその言葉を聞いてくれた。

かに見えたが、その表情は熱病に浮かされた病人のように真っ赤だ。

酷く蠱惑的な紅い唇が震えるように言葉を紡いだ。

「か、彼女になったってことは、何してもいいのよね?」

「話聞いてた!?よくないからね?」

「彼女になったから、これ私のよね?」

「これ言うな!!」

「どうしよう。死にそう!」

「とりあえず落ち着け!」

と、また全身で全力で抱きしめられる。

されるがままの翔太。

まったくこちらの声が聞こえてない。

「翔太。キスしてもいい?」

そういって、戒めを解いた萌絵。

「え?えーっと、でもこれ、なんか男女逆だよね?」

状況とか、位置関係とか、その他もろもろとか。

「ねえ、したい。する。するから。いいよね?」

爛々と光るオニキスの瞳に見つめられ、翔太は仕方なく首肯する。

「・・・わかっ---フガッ」




初めては紅茶の味がしました。




こうして男の子と少女の始まりの物語は終幕を迎えた。


手綱を持つのは年下の男の子。


たびたびその手綱は主人の手を離れ暴走しがちではあるものの、

それはそれでお互い幸せであったという。





さて、有史以来いくつもの恋物語は、結ばれてその話を終える。

それ以後は蛇足と呼ばれるものと言うのかもしれない。


だが、ここはあえてこういう結びで幕間としよう。





ここから二人の物語は始まった---と

今後の予定ですが、明日あたりに、この直後の翔太の話をアップする予定です。


それ以後の話はまったりアップしていこうと思います。

パン作りの話とか、ドキドキお泊り会とか、芽衣編とかその辺を蛇足にならない程度に。


拙い作品でしたが、見に来てくださった方ありがとうございました。

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