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015 ヒーロー

バトルものになってきた・・・


あれぇ?

「春にぃがなんでここに?」

梵天公園で高校生8人に囲まれながら、突然現れた春に驚く翔太。

いつもなら春は仕事をしている時分だ。

それを春は肩をすくめて答えた。

「なんでって、お前を探してたからなんだけどな」

気負いもなく超然とした面持ちで、スタスタと高校生に囲まれた翔太の方へ入っていく。

状況がつかめずにいた高校生たちも、ようやく事ここに至って突然の闖入者である春に詰め寄る。

「一、二・・・八人。ああ全員いるな」

春は高校生たちを数えて、ちいさく頷く。

「な、なんだよ。あんた」

「どけ」

「・・・・!?」

たった一言。

それだけでまわりの高校生を竦ませて、悠々と翔太の前に立つ。

おもむろに翔太の頭に手を伸ばし、ポンポンと叩く。

「萌絵に手を出すな!か・・・男だなぁ。翔太」

ぼそりと呟いた春に、翔太は顔を真っ赤にさせて憤慨する。

「き、聞いてたの!?」

翔太の狼狽した声にここで初めてニヤリと笑う。

「カカカ、照れるな。かっこよかったぜ。で、あんたがモエさん?」

「!?は、はい」

突然話を振られた萌絵がビクッと身体を震わせる。

「俺は春っていう、こいつの隣に住んでる・・・まぁダチだ。よろしく」

「よ、よろしく?」

「春にぃ、それよりなんで俺を探してたのさ」

「んなの。お前が追い込みかけられてるって知ったからだよ」

素直に驚く。

それは翔太もさっき萌絵から聞いたばかりのことだから。

今朝から店で仕事をしていた春が、どうやって知りえたのか見当がつかない。

「なんで、知ってんの?」

すると春は今までの笑顔を消し、鋭い眼光を高校生たちに向けた。

今まさに背後から殴りかかろうとしていた彼らを、無言のプレッシャーで動きを封じる。

動けない高校生を確かめてから、あらためて翔太に顔を向ける。

「・・・まぁ俺も一昨日ここでガキを殴ったっていう奴を探しててな」

その言葉に金髪たちがたじろぐ。

「そんで実際に見たっておっさんに会って、そいつらの特徴聞けて。

なかなかこの辺じゃ有名だったみたいだぜ」

カカカと春は笑う。

「ああん?なに笑ってんだコラァ!!」

金髪が声を張り上げ、威嚇するが春は歯牙にもかけない。

「ダチに調べてもらったら学校まですぐわかってな。

今度はその学校の知り合いに会いに行ったら、

今朝から翔太って小学生を探してまわってる話を聞いたのさ」

そこでいったん言葉を止め、ゆっくりと振り返った。

「そこらじゅうに聞いて回ってたらしくて、おかげで人数も行先も簡単に辿れた」

なぁと金髪に向けて笑いかける。

「一応、家のほうにも何人か向かわせたんだが、

まさかこっちに全員来るとはなぁ。

こいつらが馬鹿で助かった」

「ふざけんなよ!てめぇ!!」

金髪が拳を振り上げて、春に殴り掛かる。

しかしそれは春にとっては予想通り。

半身を引いて拳をかわすと相手の手首を掴む。

金髪の体勢を反転させ、逆の方に関節をねじり上げた。

「があっ!!」

金髪の悲鳴。

そして、囁くように底冷えのする声で呟いた。

「空気を読め。俺が翔太と話してる」

そう言って更に戒めを強める。

つんざくような声が上がった。

拘束された金髪はその開き切った眼から大粒の涙を流し、口元からは白い泡を吹き出した。

悲鳴はすぐに擦れて消えて、変わりに丘に上がった魚のようにパクパクと口を開ける。

「まぁ待てよ。俺はまだ何かするつもりはねえんだ」

金髪を拘束しながら目の前の高校生たちにそんなことを言った。

気圧された高校生は一塊にあつまり、自然とさっきまでの包囲網が解かれていく。

春を中心に前後に分断され、翔太の後ろには逃走路が開かれる。

翔太を狙うには、まず春をどうにかしなければいけない状況になった。

障害のなくなった道を見て、春は翔太に告げる。

「さて、翔太どうする?向こうは高校生が八人。

これはお前の手にゃ余る。

どうあがいたって、お前に勝ち目はないぜ?」

それを聞いた翔太はすぐに頷いた。

「うん。わかってる」

「ならどうする?でも、お前は知ってるな?」

「それは・・・でも!」

「いいから、思った通りやってみな。どうにかなるかもしれないぜ?」

翔太から見て逆光を浴び、雄々しく立つ背中。

それがとても頼もしく見えた。

翔太は叫ぶ。

「お願い。春にぃ、助けて!」

情けないと思われてもいい。

ちっぽけな自尊心など、ここで捨ててしまえ。

今はそれよりも守りたい人がいるのだから。

「カカカ。ご指名かよ、嬉しいねぇ」

春は愉快そうに口元を歪め、そして目の前の敵を認識する。

「なら、請け負うぜ」

ドン---と金髪を目の前の高校生めがけて投げつける。

何人かがその余波を喰らって地面に倒れた。

「翔太。ここは任せな。お前はその子を家まで送ってやれ」

体勢を崩した間を縫って、春が翔太に指示を出す。

「・・・わかった。春にぃありがと!」

心配はしない。

ヒーローには必要のないものだから。

ただ、信じればいい。

翔太は迷わず萌絵の手を引いて駆け出す。

それを見て追いかけようとした高校生たちの前に春が立ちはだかる。

両手をぶらりと下げて、胸を張る。

堂々と八人を前に仁王立ち。

「話聞いてたろ?お前らの相手はこの俺だ」

解放された金髪がペッと唾を吐く。

「ふざけんなよ。てめえ」

そんな金髪の威嚇にも春はまるで動じた様子はない。

それどころか、それまで浮かべていた笑みを完全に消し去る。

残ったのは氷のような冷徹な眼差しのみ。

明らかにその場の空気が変わった。

敏感に感じ取った数人が息を飲んだ。

「それで?一昨日うちの翔太に手を出したクソ野郎はどいつだ?」

ここにいる高校生達を、ひとりひとり春はじっくりと睨み付けていく。

狼の眼光に高校生たちは、あるものは必死に首を振り、あるものは視線を逸らした。

「・・・なるほど」

ジロリと最後に目の前の金髪に目を落とす。

「で、コイツを入れて3人てところか?」

ズバリ言い当てられた金髪が目に見えて狼狽した。

「な、何が言いてえんだよ!?」

「いや、手加減する奴としない奴の振り分けだ。

こんな糞イベントに付き合わされたのは一種の不運だからなぁ」

「はぁ?」

この状況で限定して手加減をすると宣う春に、彼らはあっけにとられた声を上げる。

当たり前だ、数の上では圧倒的に高校生の方が有利なのだから。

いくらこの男が喧嘩に慣れていたとしても、

それぞれに対応して手加減するなど無理に決まっている。

今度は春を中心に八人が包囲していく。

池を背に囲まれたはずの春は気にした様子もない。

その表情が金髪たちを苛立たせる。

「宣言するぜ。お前と、お前と、お前だ」

正確にあの日の三人を指差していく。

「翔太に手ぇ出した奴は潰す。久し振りにムカついたからな」

「ムカついてんのはこっちなんだよ!」

金髪が吠える。

それが合図だった。

まずは金髪が前に出る。左右から二人が追撃。

春の背後には池。

逃げ場はない。

握りしめた拳が春の顔面を捉えた---瞬間、春の姿がブレた。

手ごたえもなく拳は空を切り、

刹那、背後で連続した破裂音が聞こえた。

「な!?」

池を背に驚いて振り返る。

その視界には音もなく崩れ落ちる仲間が2人。

倒れた2人も自分がどういう状況かわからず、驚いた表情のまま凍り付かせていた。

一瞬だった。

何かが自分の顎先を掠めた。

それだけで目の前が真っ白に染まり、気が付けば頬が土を舐めていた。

意識はしっかりしているのに、首から下が切り離されたように動かない。

「ひ、ひぃ!!」

倒れた二人が見上げれば、狼のような男がそこにいた。

目が合った瞬間、恐怖が2人を襲う。

もう彼らには闘争の意志はなく。

心を折られた羊でしかなかった。

「心配すんな。少しすれば起き上がれる。

痛い思いしたくなかったらそのまま寝とけ」

その二人は確かに一昨日には参加していなかった者たち。

この男はこの人数差をものともしていない。

それが今になって実感した。

二人から生まれた恐怖はまわりにも伝播する。

「---次だ」

愕然とする六人を前に、狼はそう呟いた。





ものの数分。

相手にもならないとは正にこのこと。

それとも鎧袖一触というべきか。

そこには恐怖に震え、地面に這いつくばる高校生がいた。

誰もが先ほどまでの嘲りや驕りは無くなっていた。

ある者はただひたすらに謝罪の言葉を呟いていた。

比較的軽症の5人とは対照的に、残りの3人は酷い。

顔じゅうからあらゆる体液を吐き出しながら嗚咽を繰り返している。

その中で、真っ先にやられた金髪が息を吹き返し、毒舌を吐く。

「て、てめえ。俺たちを・・・か、完全に敵に回したからな」

口元を胃液で汚しながら、言葉を吐く。

それを見下ろしていた春は、感情を感じさせない表情で告げた。

「なにか、勘違いしてないか?最初から、お前は俺の敵だ」

「うちの高校全員敵に回したって言ってるんだよ!吾妻さんにシメてもらうからな!」

這いつくばったまま偉そうに叫ぶ金髪に春は溜息ひとつ。

「本当に馬鹿だな。翔太への仕返しも、俺への仕返しも、全部他人頼りか。お前、情けねえなぁ」

その言い方が憐憫を匂わせ、的確に金髪の自尊心を傷つける。

「大体、俺が蓮二の奴を知らなかったら意味ねえ脅しだろうが」

そして何を思ったか、春は自分の携帯を取り出した。

コールは数回。

「俺。さっきはサンキュな。そっちも解散してくれていい。で、あの件」

いくつか相手と話した後、春はおもむろに携帯を金髪に差し出す。

「お前にかわってくれと」

「・・・は?」

痛みで身動きが取れない金髪の耳元に携帯をそえる。

耳元に聞こえてきた声は効果絶大。

さっきまでの強がりが一瞬で霧散し、顔色は青く変色していく。

敵意むき出しだった視線は、いまは泣き顔に変貌して春を見上げる。

「なんで、あんた・・・」

携帯の声は先ほど彼が上げた人物のそれで。

携帯を通して告げられた言葉は

『死んでも謝れ。でなければ俺がお前を潰す』

それだけだった。

そして、唐突に思い出す。

自分のことをこの男に教えたという、同じ学校の生徒のこと。

目の前の男は蓮二とあの人の名をさっき口にしたことを。

携帯を切り、相手の戦意喪失を確認する。

悪魔のような笑顔を浮かべて春はこういった。

「じゃあ、まずは学生証と携帯。あれば免許証も。

お前らの個人情報、全部寄越せ?」

それを聞いた直後、金髪の顔色は蒼白を通り越して土気色に変わる。

首輪をつける。これはそういう意味の意思表示。

こちらはお前のすべてを握っているという宣告だった。

叩き潰すときは徹底的に。

仕返しなど思いつかないほどに。

これが基本。

「さ、ちゃっちゃと行こうぜ」




なにせ夕方の配達がまだ残っているのだから。

名前で登場しているキャラはある程度設定あるんですけど、いつ書けるでしょうか・・・

いつか書けるといいなぁ

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