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010 君の涙

2話続けての鬱展開です。ごめんなさい。


しかも短いっていう・・・orz


最初に視界に入ったのは、心配顔の萌絵だった。

状況がわからずに彼女を見つめる。

「翔・・・太ぁ」

萌絵の表情がくしゃりと歪んで、震える唇から自分の名が零れ落ちた。

「萌絵?--つぅ!」

起き上がろうとして鈍い痛みと口内で血の味を感じて、手を口元に運ぶ。

恐る恐る触れてみると唇が切れているようで、触れるだけで痛みが走った。

「大丈夫?痛いところない?」

聞かれて思い出す。

さっきまでのことがありありと浮かび上がる。

「・・・全身が痛いっつーの」

顔をしかめながら上体を起こす。

腹部と右目あたりが特に痛みが酷い。

どうやら萌絵が場所を移してくれていたようで、

そこは芝生の上ではなく休憩所の長いベンチだった。

「あいつらは?」

周辺に視線を走らせながら、萌絵に尋ねる。

「周りの人たちが気が付いてくれて、それで・・・」

「ああ、そう・・・」

嘘のように休憩所は静まり返っていた。

「もう・・・あんなこと、しないで」

隣で萌絵が弱々しい声で囁く。

「・・・あんなことってなんだよ」

萌絵の方を見ず、目の前のぼろぼろのバッグを睨みながら翔太は苛立たしげに吐き捨てた。

「高校生と喧嘩するのは、やめて・・・あぶない、よ?」

「・・・・・・」

あははと萌絵の笑う声が聞こえた。

「私は、さ、平気だから」

「全然、平気じゃないじゃん!!」

自分でも驚くほどの声が出た。

ベンチから立ち上がり、隣の萌絵を睨み付ける。

こちらが立っているせいで、自分より背の高いはずの萌絵が酷く小さく見えた。

突然の大声に驚いた表情の萌絵に叫ぶ。

「お前泣いてたじゃん!震えてたじゃん!死にたいって言うほどだったんだろ!あの時さぁ!!」

全身びしょ濡れで、こんなガキに弱音を吐いて、縋りついてしまうほどに。

別に弱音吐いたってっていい。情けなくたっていいんだ。

そんなことで嫌うわけないんだ。

だけど、それのなによりも萌絵が苛められるのだけは許せなかった。

翔太は黙って見ていられなかった。

何が自分のことは自分でやれだ。

結局はよく考えもせず、子供の頭で考えただけの理想だけを押し付けた。

あの時、あの場所で、当事者じゃなくても足が震えたというのに。

心が折れそうなほどの悪意を、今日の今までずっとずっと受けていたというのに。

翔太はそれが我慢できなくて、許せなくて簡単に暴走した。

萌絵は翔太との約束を守って、一人で頑張っていたのにそれを自分が台無しにした。

もしかしたらああする以外の方法があったのかもしれないのに。

友達に相応しくないのは萌絵じゃない、自分の方だったと最悪の形で気づかされた。

もうだめだった。

ここにいたら泣き言ばかり口にしてしまいそうだった。

「・・・もう、帰るわ」

「う、うん」

翔太はバッグを担いで休憩所を出る。

その背中に萌絵が声をかけてきた。

「翔太。今日は、ごめんね」

翔太の足が止まる。

「・・・別に。俺、何にもしてねーし」

萌絵の声に振り向かずに答えた。

「ううん。そんなことない、よ?嬉しかった。

・・・あはは、おかしいね。喧嘩してほしくないのに、あの時ちょっと嬉しかったんだぁ」

「なんだよそれ。馬鹿じゃねーの?」

「あー、うん。そうだねぇ」

それでも嬉しそうに笑うから。

「ま、これでわかったろ?俺じゃお前を助けらんねーんだ。ガキだし。よえーし。ホント」

「翔太?」

翔太の震える声に萌絵が気付く。

「ホント・・・何やってんだか。なっさけねえの」

「翔太、そんなことないよ?そんなこと、言わないで」

「ダメだろこれ。偉そうなこと言っどいでさぁ・・・ホンッド」

これ以上は言っても仕方ないのに。

解っているのに、嘆きは震える口から漏れ出てしまう。


「ホンド、ごべんなぁ・・・だずげでやれなぐで」


ダメだ。ここにいられない。

翔太は萌絵の静止の声も聞かずに全力で駆け出した。

後ろで呼ぶ声があったけれど、翔太の足は止まらなかった。









次に会う約束は、しなかった。

もうちょっとまわりの情景とか登場人物の描写とか、くわしく書きたいのですが、先に進みたくてすっ飛ばしちゃうんですよね・・・

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