2話
日曜日に投稿予定だったデーターが手違いで消去してしまい、頭が真っ白になりました。(大泣)
思い出しながらピコピコ打っていたので少し短いです。
三週間後、アーウィンはクレスの元に向かった。
向かう途中の通りは裏通りとは思えないほど賑やかで活気に満ちている。
「お花はいりませんか~」
「彼女に土産は要らないかい?安くしとくよ」
「兄ちゃん、美味い串焼きを食べな!ウチのは他の店とはちょっと違うよ」
「ほう?どう違うんだ?」
少し興味を覚え、屋台に近づいた。
「ウチの塩焼きは塩に数種類のハーブを混ぜているのさ」
試しに一本買ってみると確かに独特のハーブの香りと味が食欲をそそり、同時に肉の臭みを消している。
かなかなのものだ。
クレスや他にもいるであろう子供達の為に塩焼きと甘辛い味付けをした串焼きを10本づつ購入すると目的地に歩き出した。
「よ、クレス。景気はどうだ?」
「アーウィンさん、お久しぶりです」
「……誰?お菓子のお兄ちゃんじゃないよ?」
「こら、ビル。すみませんアーウィンさん。この子はビル、僕の弟です。
ほら、ビルご挨拶は?」
「……コンニチハ」
ビルと呼ばれた小さな男の子がクレスの後ろから小さな声で挨拶をした。
「ちゃんと挨拶できたな。俺はアーウィンて言うんだ、よろしくな。
ほら、遠慮せずに食え」
匂いが漂っていたのだろう。
袋をガン見していたビルに串焼きの入った袋を渡した。
「ところでお菓子のお兄ちゃん、て誰だ?」
「エリックさんですよ。
あれから時々お菓子を持って遊びに来てくれるんです。今ではお菓子のお兄ちゃんと、下の子達から大人気です」
エリックは見た目はチャラいがマメで面倒見もいいし、近所の子供達から大人気だ。お嫁さんになる、と取り合いになるらしい。
何故、大人の女性限定で縁がないのかと不憫さに目頭が熱くなる。
「あいつも面倒見がいいからな。
…これで俺も串焼きのお兄ちゃんだな」
笑いながらビルの頭を撫でると、口の周りをタレでベタベタにしながらビルは何度も首を振る。
その仕草に笑いながら袋から串焼きを4、5本抜き取りクレスに渡した。
「あの様子じゃあ、全部食べられるぞ。俺の気に入りの味だが、クレスも食べて感想を聞かせて欲しい」
年上らしく下の子達に全て譲る行為は微笑ましく、同時に少し切ない。
アーウィンは気分を切り替える様に明るく言った。
「あ、ありがとうございます……塩とハーブ?……一種類だけじゃなくて数種類、入ってますね。とても美味しいです」
「だろ?なかなか良い味覚だな。
女の子にモテるぞ~」
「モテる事は別に興味ありませんがどういう理由で、ですか?」
「誰だって料理を褒められたり、隠し味を当てられたら嬉しいもんだろ。エリックの奴を見てみろ。
彼女が何時間もかけて作ったブイヤベースを“変わった濃い塩トマトスープ”と言うわ、屋台で惣菜を買ってきた女に手作りの物と勘違いして、“今日の御飯は今まで食べた中で一番美味しい”何て言うんだぞ」
「………それは味覚以前の問題では?」
そうとも言う。
エリックが女にモテない理由の一つがこれだったか。
「しっかし、靴磨をしながら良くここまで調べられたな」
アーウィンはこの三週間で纏められた記録書に内心舌を巻く。
性別、人数は勿論の事、服装から主従関係、名前、その人物達の街でのある程度の行動範囲まで記録されている。
子供が調べたとはいえ、報告書として世間に充分通用するレベルだ。
「孤児院の皆が協力してくれていますから。
例えばビルは記憶力が良いですし、こんな下町で、貴族の上等な服は目立ちますからね。下の子達も手伝いたいらしく、聞いてもないのにいろいろ報告してくれています」
「成る程な。…おっ、五日前にレースと刺繍が各一点出たのか。ん?どうかしたのか?」
クレスが何か思い出したのか吹きだした。
「いえ、その時は並み居る使用人達を押しのけて御令嬢二人が購入されたのですが、蜘蛛の巣をモチーフにしたレース編みと馬の刺繍が施されたハンカチだったもので」
凄い御令嬢もいたものだ。
使用人の中には護身術を使える者も多いと言うのに。
絡めとり捕食する蜘蛛と気性の荒い馬、まさしく持つべき人が持ったらしい。
「そりゃあ俺も見たかったな。」
「ええ、ちょっとした見世物でしたよ。
あ、そういえばエリックさんに聞きましたよ。
アーウィンさんは巻き込まれただけじゃないですか。それなのにあんな大金まで払って…物好きなのかお人好しなのか」
「探偵の真似事が楽しくなってきたんだよ。それに噂では若い女性だろ?
もしかしたら俺の運命の女神なのかも知れないじゃないか」
「では僕等はキューピッドですね」