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シールの魔女は婚約破棄されたので、魔女業に専念することにしました!  作者: 江本マシメサ
第四章 皮膚シールを作ろう!

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後日談・後編

 私の知らないところでユベール様は父と話をし、結婚の約束を取り交わしていたらしい。

 父はたいそう驚き、最初は難色を示していたそう。

 けれどもユベール様が根気強く何度も私の実家を訪ねて通った結果、とうとう父も折れることとなったようだ。

 無事、父から結婚を認められたものの、問題はユベール様の父君であるオーベルジュ大公だろう。

 きっと名家のお嬢さんと結婚させたいと考えていたはず。私との結婚なんて認めるわけがない。

 もしやユベール様は結婚を反対された挙げ句、家を出奔しゅっぽんなんてするのでは……? と心配していたが、杞憂に終わる。

 なんと師匠が先に手を回し、もしもユベール様が私との結婚を望んだ場合、認めるように釘を刺していたという。

 師匠の影響が絶大で、オーベルジュ大公はあっさり私達の結婚を承認してくれたようだ。

 旅行に行く前に仕込んでいたようで、そこまでお見通しだったのか、と驚いてしまった。


 婚約披露パーティー用のドレスは、衣裳の王室御用達店ロイヤル・ワラント〝シャ・ノワール〟でユベール様が予約していたらしい。

 もちろん、布地から選んでオーダーメイドする時間などないので、既製品を仕立て直して作ってくれたようだ。

 ドレスを用意するのは一苦労で、流行を調べ、少しでもみすぼらしくないように仕立ててもらい、なるべく周囲のご令嬢方と意匠デザインが被らないように探りながら完成させる。

 その苦労をしなくていいのは、非常に助かる。

 〝シャ・ノワール〟の特注ドレスなので、他と被らない最先端の一着が仕上がっていた。


 そんなこんなで、婚約パーティーの当日を迎えた。

 招待客は、なんと五百名以上いるという。

 未来のオーベルジュ大公となるユベール様の結婚なので、大規模な催しとなったようだ。

 コゼットとシュシュは大勢の前だと魔力酔いする可能性があるので、シール堂でレディ・ヴィオレッタとお留守番である。

 けれども特製の魔法の鏡で、私達の様子を見守ってくれているらしい。

 なんとも心強い応援である。

 師匠も旅行先から駆けつけてくれた。


「メーリス!! 久しぶりね!!」

「お師匠様!!」


 たった数ヶ月離れていただけなのに、もう何年も会っていないような感覚だった。


「あなたとユベールが結婚することになったと聞いて、飛んでやってきたわ」

「嬉しいです」


 化粧をしたあとだというのに、涙が零れてしまいそうになる。


「いろいろあったようね」

「ええ……!」


 一度だけ、落ち着いたタイミングで師匠に鳥翰魔法を使って手紙を送ったのだ。

 コゼットやシュシュに出会ったこと、アデールとのこと、ユベール様と素材集めの旅をしたこと、それから婚約を結んだこと――報告書のように、たくさんの報告をした。


「会わないうちに、すっかり大人の女性になったわね」

「そう見えますか?」

「ええ。しっかりしているように見えるわ」


 実家を出て、シール堂を任されたからだろうか。


「それより、思っていたよりもユベールの判断は速かったわね」

「おかげさまで、スムーズに婚約に至ることができました」

「ふふ、ぬかりないわよ。ユベールは絶対に、あなたのことが大好きになるって信じていたから」


 息子であるオーベルジュ大公には、結婚を反対したらこの先一生会うつもりはない、とまで宣言していたらしい。

 オーベルジュ大公は一生師匠に頭が上がらないらしく、すぐに了承したという。


「幸せにおなりなさいね」

「はい」


 師匠が部屋から出て行くと、入れ替わるようにユベール様がやってきた。

 着飾った私を見て、淡く微笑んでくれる。


「メーリス、とても似合っている」

「ありがとうございます」


 正装姿のユベール様もとても素敵だ。

 こんなお方と結婚できるなんて、夢にも思っていなかった。 


「そろそろ時間だな」

「ええ」

「さあ、行こうか」


 ユベール様が差しだした手に、そっと指先を重ねる。

 彼のエスコートで、王宮の広間へ向かったのだった。


 大勢の人達が私達の登場を待ち、祝福してくれた。

 アデールやブルジェ伯爵もやってきて、温かく迎えてくれる。


 婚約披露パーティーはつつがなく終了するものだと思っていたが――。

 突然、バン!! と大きな音を立てて、誰かが登場する。


「あれは……!?」


 やってきたのは、金ぴかの燕尾服に身を包んだマケールだった。

 その三歩後ろに、不機嫌な様子のエヴリーヌがいた。

 マケールはずんずんと大股で私達のもとへとやってくる。

 彼らは招待していない。どうして? なんて考えている間に、私達の目の前に到達してしまった。


「俺様との婚約破棄をしてすぐに、別の男に乗り換えるとはな!! なんて尻軽な女なんだ!!」

「本当に」


 ユベール様が何か言い返そうとしたので、大丈夫と手を握る。


「返す言葉もないのか?」

「いいえ、私はあなたから一方的に婚約破棄されたあと、半年ほど経ってから今日という日を迎えました。婚約期間中にエヴリーヌと関係を持ち、破談を言い渡したのはそちらですので、そのようなことなど言われる筋合いはありません」


 私の言葉に続くように、どこからか「そうだ! そうだ!」と聞こえる。

 振り向いた先にいたのは、ブルジェ伯爵だった。

 私と目が合うと、ぱちんと片目を瞑ってくれた。

 マケールがたじろいでいると、ユベール様が追い打ちをかける。


「魔王討伐の旅でさんざん不貞を働いていたのは、そちらだろう。穢らわしい」

「なっ――う、嘘を言うな!!」

「嘘じゃない!!」


 そう叫びながらやってきたのは、ユベール様の同僚だった元魔法騎士達である。


「俺達はお前の勝手な様子を見ていたんだよ!!」

「魔王討伐の旅なのに、女とイチャイチャしやがって!!」

「瀕死の魔王にとどめを刺した程度の実力しかないくせに、偉そうにするな!!」


 マケールは顔を真っ赤にするも、返す言葉が見つからないのだろう。


「この、お前、ぐっ――!!」


 マケールはビシッと私を指差し、何か言おうとしたものの、ユベール様にジロリと睨まれて何も言わずに終わった。

 そのまま回れ右をし、大股で帰って行く。


 一人残されたエヴリーヌは、私に物申す。


「あなた、マケールから何もかも奪ったわよね?」

「なんの話でしょう?」

「しらばっくれないで!! 剣の実力も、礼儀作法も、服のセンスも、何もかも失っているの!! あなたが奪ったとしか思えないわ!! 私が好きになったあの人を返してちょうだい!!」

「それは誤解です。剣の実力も、礼儀作法も、服のセンスも、私が与えていたものを、あのお方が知らずに享受していただけなんです」


 私がシールで実力を付けさせ、礼儀作法に気を配り、社交場へ着ていく服装なども選んでいた。ただ、それだけだったのだ。


「婚約解消につき、サポートする必要がなくなりましたので」


 エヴリーヌが好意を抱いたマケールは、私が取り繕っていただけの存在だったのだ。


「今のマケールが、ありのままの彼なんです。どうか、愛して差し上げてください」

「あなたね、いい加減に――!!」


 エヴリーヌは駆けつけた騎士達に拘束され、強制的に退場となった。

 やっと会場に平和が訪れた。


「メーリス、よくやった」

「はい」


 私も強くなったのだろう。

 これからは大切な人達を守れるような存在になりたい。

 そう思ったのだった。


 ◇◇◇


 それからというもの、ユベール様がシール堂で働くようになった。

 シール作りを手伝ってもらうようになったのだが、非常に覚えがよく、あっという間に一人で作れるようになったのである。

 レディ・ヴィオレッタはユベール様の実力を認めつつあるのか、隠れずに姿を見せるようになった。もう少し慣れたら、喋るようになるかもしれない。

 それ以外にも、ユベール様と〝養蜂のためのピーキーピング・花々の草原フラワーメドゥ〟に行って、蜜蝋採りに行って、蜜蜂妖精ハニービー・フェアリ兎妖精フェアリ・ラビットのミミにも挨拶を交わす。

 それから作ってくれる料理が本当においしくて……!

 あっという間に胃袋を掴まれてしまう。

 ユベール様は着々とお店の環境に馴染んでいったのだった。


 シールとユベール様とコゼットにシュシュ、レディ・ヴィオレッタ――。

 私が大切に想うものはすべてシール堂に在る。

 これからもしっかり切り盛りして、守っていこうと思ったのだった。

 

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