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シールの魔女は婚約破棄されたので、魔女業に専念することにしました!  作者: 江本マシメサ
第二章 勇者マケールのやらかし

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魔法アイテム店でお買い物

 アイテム店〝クリーミー・シュー〟。なんともおいしそうな名前だが、店内に入って驚く。

 まるでケーキ屋さんみたいに、ガラスケースにアイテムが丁寧に並べてあったのだ。


「いらっしゃいませ」


 お店の奥から出てきたのは、かわいらしいメイド服に身を包んだウサギ獣人の女性。

 にっこり微笑みかけ、ゆっくり商品を見るように言ってくれた。

 回復アイテムの定番であるヒール・ポーションは、オシャレな緑色の小瓶に入っていた。解毒薬の丸薬はキャンディみたいに個装されている。

 ガラスケースの上にはクッキーが入ったジャーが置かれていたのだが、疲労回復効果付きと書いてあった。

 見ているだけで楽しい陳列方法は、商店を営む者としてかなり参考になる。


「何かお探しの商品がございますか?」


 声をかけられてハッとなる。

 そうだ、そうだった。

 私は今、いただいたカボチャを持ち歩く自信がなくて、ここに助けを求めるようにやってきたのである。


「あの、魔法鞄マジカル・バッグはありますか?」


 魔法鞄というのは、収納したアイテムの重さを感じなかったり、見た目以上の容量を持っていたりする、お買い物をするときにあったら便利な物なのだ。


「そちらのアイテムでしたら、二階で販売しております。お待ちくださいね、二階へ繋がる転移魔法を展開しますので」


 そう言うやいなや、床に転移の魔法陣が浮かんだ。


「どうぞ!」


 勧められるがまま、転移陣の上に乗ると、景色が一瞬でがらりと変わる。

 下り立った先は、ショコラトリーみたいなチョコレート色を基調としたシックなお店。

 そこにもガラスケースがあり、革製品が並んでいる。


「いらっしゃいませ」


 一階にいたウサギ獣人の女性が回り込むようにしていたのでギョッとしたものの、よくよく見たら格好が微妙に異なる。


「一階にいたのは、双子の姉です」

「そうだったのですね」


 顔に思っていることが出ていたのだろう。

 ガラスケースには、革製品に魔法が付与されたアイテムの数々が陳列されていた。

 魔剣用の革手袋に、魔法書専用のブックカバー、体重を軽くするベルトに、魔物を捕らえる縄など、初めて目にするアイテムばかりだった。


「魔法鞄はありますか?」

「ええ、ございますよ」


 肩掛けのタイプや、ベルトに吊すタイプ、リュックタイプなど、パターンはいくつもあるようだった。


「迷いますね」

「用途によって異なるのですが、どういったことに使われますか?」

「お買い物で……」


 あとはこれから始めるであろう、素材集めに使いたい。

 むしろそっちがメインになりそうだ。


「でしたらこちらのベルトに吊すタイプがよろしいかと」


 鞄の中に入るアイテムの重量は、二千ポンド(※1トン)ほどだという。申し分ないくらいの容量である。

 あとは値段だ。


「こちらは金貨五十枚になります」


 目眩を覚えそうなほどの価格だった。

 性能がいいし、それくらいだろうなと頭のどこかで予想はできていたが。

 先日の賭けで支払った金貨十枚も返ってきていない中、すぐに買えますと言えるような金額ではない。


「いかがなさいますか?」

「正直に申しますと予算オーバーしていまして」

「でしたら少々ワケアリ商品なのですが、半分の容量で、ときおりアイテムを吐き出してしまう魔法鞄があるのですが」

「なんですか、それは!」


 魔法鞄がアイテムを吐き出してしまうなんて、前代未聞である。

 お店の奥にあるというので、見せてもらうことにした。


「お待たせしました」

「こ、これは……!」


 その魔法鞄は鳥かごの中に入れられていてピクピク動いていた。

 ポシェット型で、よくよく見たら目みたいなものがある。


『うーーーん、もう食べられない』

「喋った!!」


 これはいったいなんなのか、と店員さんを見る。

 すると、淡々とした様子で説明してくれた。


「こちらの商品は、前の持ち主が大事にするあまり、命が宿ってしまった鞄妖精フェアリ・ポーチです」

「鞄の妖精……!」


 先代の主人が亡くなり、巡り巡ってこのお店で保管されていたらしい。


「お値段、銅貨三十枚となっております」

「とてもお安いですね」

「ワケアリ商品ですので」


 なんでも気に食わないアイテムを入れようとしたら、吐き出してしまうらしい。

 そのため、返品率が百パーセントだという。


「いかがなさいますか?」

「どうしましょう」


 ここで鞄妖精は目覚めたようだ。

 私を見るなり、話しかけてくる。


『なんだあ?』

「どうも初めまして。その、こちらお近づきの印に」


 鳥かごの隙間から浄化シールを渡してみると、鞄妖精は私の手ごとぱくんとかぶりついてきた。


「ひっ!!」


 痛くはなく、中はふわふわで温かだった。


『うーーーん、いいね!!』


 どうやら浄化シールをお気に召してくれたらしい。


「鞄妖精さん、よろしければ、私と一緒に来ませんか?」

『臭いもの、入れない?』

「入れません」

『叩き落とさない?』

「しません、大切にします」

『だったらいいよ』


 魔法陣が浮かんで弾ける。どうやら口約束で契約が結ばれてしまったらしい。


「すみません、お支払いもしていないのに」

「いいえ、お気になさらず。それよりもこの妖精鞄が素直な態度を見せるのは、初めて目にしました」


 きっとこれまでの主人に酷い目に遭わされていたのかもしれない。  

 支払いを終えたあと、妖精鞄は鳥かごの中から出される。

 手を差しだすと、すりすりと頬ずりするように近寄ってきた。


「これからよろしくお願いしますね」

『うん!!』


 そんなわけで、鞄妖精と新たに契約を交わしたのだった。

 

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