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シールの魔女は婚約破棄されたので、魔女業に専念することにしました!  作者: 江本マシメサ
第一章 ある日、婚約者が勇者になって

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突然の婚約破棄

本作に使用されている世界観・用語・設定等はオリジナルの創作要素です。

設定・名称の流用、模倣作品の制作はご遠慮ください。

 ある日、侯爵令嬢エヴリーヌ・ド・ジファールが私の婚約者マケール・ド・ギースと共にやってきて、我が耳を疑うような言葉を口にした。


「メーリス・ド・リュミエール、あなたの婚約者、しばらく貸してくれる?」


 まるで恋人同士のように、腕組みしながらそんなことを聞いてきたのだ。


「貸すって、どういうこと?」

「私達、魔王討伐のメンバーに選ばれたのよ」


 エヴリーヌが誇らしげな様子で言う。マケールも尊大な様子で腕組みし、こくこくと頷いていた。


「あなた達が? どうして?」

「どうしてって、彼は王国騎士でのこれまでの活躍が認められたのよ」


 これまでの活躍ねえ、と口から出そうになったものの、喉から出る寸前で呑み込む。

 彼らは常日頃から私の物言いが気に食わないらしく、事あるごとに烈火のごとく怒っていたのである。


「私は、貴族学校時代の魔法試験で首席を取ったことが認められたの」

「そう」


 彼女が取った首席は、貴族学校に多額の寄付金を行った報酬である。

 実力で取ったものではない。

 疑問に思って話を聞きにいったところ、校長先生が頭を下げて謝罪したのである。


 それはそうと、このへっぽこな二人組が、魔王討伐だって?

 大陸全土を恐怖に陥れている魔王を、倒せるわけがないのに。


「その、二人だけで行くの?」

「いいえ、魔法騎士隊も同行するようよ」


 魔法騎士隊――王国騎士隊とライバル関係にある、剣と魔法で戦う騎士隊である。

 彼らはエリート集団で、実力もかなりあると聞いていた。

 魔法騎士隊が一緒ならば、もしかしたら魔王も倒せるかもしれない。


「ふふ! おかしいの。王国騎士であるマケールはたった一人で行くというのに、魔法騎士隊は束になってぞろぞろ付いてくるっていうのよ!」


 話を聞いていると、魔法騎士隊が向かう魔王討伐の旅に、マケールとエヴリーヌが同行するように思えてならない。

 というか、この二人はおまけなのだろう。

 エヴリーヌは国王陛下の姪なので、我が儘を言って付いていくことになったに違いない。

 マケールは私を見て鼻先で笑い、ありえないことを宣言する。


「俺がいない間に、浮気なんかするなよ! この尻軽女が!」

「……」


 いつ、私が尻軽女と呼ばれるような行為を働いたというのか。

 私に口では勝てないため、強い言葉を使ってけなしてくる癖は大人になっても治らないらしい。心の中でこっそりため息を吐く。


「おい、いつものように、旅支度をしておけよ!!」

「私のも頼むわね!」


 旅支度というのは、実家の商店が販売する武器や防具、アイテムなどを揃えて用意しておくように言いたいのだろう。

 マケールが騎士になってからというもの、何かある度に装備を調達し、調えてきた。

 私の自費で。

 騎士というのは装備にお金がかかる職業で、実家の支援がないと続けられない。

 マケールの生家であるギース伯爵家は裕福でなかったものの、商売を営み、裕福である私の実家の支援目当てに婚約を成立させたのである。

 そんな彼のためにいろいろ手を尽くすのは、別に愛情からの行為ではない。

 彼との結婚は、親同士が勝手に決めたものだから。

 いちいちしてあげていたのは、申し出を断って死なれたら後味が悪いからだった。

 今回も「知るか!」と言いたい気持ちをぐぐっと抑え、準備してあげることにした。

 死なないように、魔法騎士隊の人達が不快に思わないように……。

 なぜ、エヴリーヌの分も? という疑問もあったが、まあおまけだ。


 一ヶ月の準備期間を経て、支度が整う。

 装備の再調整とメンテナンスが必要なので絶対に一年以内には戻ってくるように、と念押ししたものの、聞く耳なんて持つわけもなく。

 マケールとエヴリーヌは魔法騎士隊の隊員達と一緒に旅立つ。

 生きて帰ってくるだけで、大したものだと思うことにしよう。

 なんて思っていたのに――その一年後、マケールは魔王を倒した英雄になったという一報が届いたのだ。

 祝賀会を開くよう連絡が事前に届いていたものだから、実家で盛大なパーティーを開催されることとなる。

 真っ昼間の開催であったにも関わらず、魔王を倒した勇者をひと目見ようと、大勢の招待客が集まった。

 そんな状況で、マケールは意気揚々と帰還してきたのだ。


「勇者マケール様が戻ったぞ!!」


 そういう台詞は自分で言うものではない。

 なんて思ったが、人々は拍手喝采する。

 無理もない。

 人々を絶望の淵に叩き落とした魔王を倒してしまったのだから。


 マケールはエヴリーヌを肩に抱いて登場した。


「皆に報告することがある!!」


 魔王を倒したことを言うのかと思っていたが違った。

 あろうことかマケールはエヴリーヌの頬にキスをしたのだ。

 両親はギョッとしていたものの、招待客はいいぞいいぞと盛り上がる一方だった。


「勇者マケール様は落ちぶれ新興貴族の娘、メーリス・ド・リュミエールとの婚約を破棄し、魔王討伐の旅でこの俺を支えてくれた最強の魔法使いエヴリーヌ・ド・ジファールと結婚することとなった!!」


 マケールが私をビシッと指差したので、皆の注目が私に集まる。


「メーリス!! お前は俺よりも大きく劣る惨めな男とでも結婚して、せいぜい幸せになることだな!!」


 マケールとエヴリーヌが高笑いする。

 私はただただ、他人ごとのように話を聞いていた。

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