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短編集

ハライン 〜縄文巫女とドリルシスターの悪霊退治〜

 先週まで降っていた雨はすっかりあがり、そろそろ梅雨も明けそうな青空が広がっていた。


 キーンコーン カーンコーン

お昼の時間となり、私こと西尾ひいろ(にしお ひいろ)(ヒロ)と幼馴染の鰻木みうな(うなぎ みうな)は昼食を買うために購買へと向かう。


 その途中で友達の長縄文花(ながなわ ふみか)ちゃんと出会い、一緒に購買へ行かないかと誘ってみた所

「じゃあ屋上にお昼ご飯が準備してあるんだけど、よかったら一緒にどうかな?」

と、予想外の返答が帰って来た。


 屋上でお昼ご飯?お弁当でも食べるのかな?と思っていたら


「うん、食べる~、ヒロちゃんも一緒に食べよ~」

と、幼馴染のみうながいち早く返事した。

まぁ、きっとお弁当一杯作りすぎたから一緒に食べよう的な事であろうと思い文花ちゃんの後を追い屋上へと向かう。


カチャり


 屋上へのドアを開くと広く青い空が広がっていた。

風はそれほど無く、強くなってきた日差しが夏の訪れが近いことを思わせる。


そういえば文花ちゃんは手にお弁当を持っている様子も無く手ぶらである。


一体屋上で食べるお昼ご飯って何だろうと疑問に思っていたら、遠くから声がする。

「ぁ、文花。やっと来たのね」

そう話しかけてきたのは……土御門嬢子(つちみかど じょうこ)ちゃんだ。


続けて嬢子ちゃんはこちらに向かって

「遅かったから、もう始めてるわよ」


そう叫んだ。

「始めてるって何を……?」

そう口に出していた私は、声がする嬢子ちゃんの方を見た。


見た……、二度見した。

「ぉお~」

みうなが感嘆の声を上げて喜んだその先にあったのは、

「流しそうめん!」

私は恥ずかしげもなく大きな声で叫んでしまっていた。


いわゆる竹を半分に割りそれを流し台にしてそうめんを流す、流しそうめん!


「いや!なんで学校の屋上で流しそうめん!?」

思わず右手を前に出しスタンダードスタイルで突っ込む私。


「ぁ、鰻木さんと西尾さんも来たのね、モグモグ」

嬢子ちゃんが私達を見て、すすったそうめんを口にいれながら話す。


「うん、人数が多い方がいいかなと思って」

文花ちゃんは嬢子ちゃんにそう話しかけながら、つゆの入った入れ物を準備して私達に手渡した。


「やった~、ありがとう~」

みうなは無邪気に文花ちゃんからつゆの入った入れ物と箸を受けとる。


「ひいろちゃんもどうぞ」

流しそうめんという疑問を払拭しきれないまま、文花ちゃんからつゆの入った入れ物と箸を受け取った。


「それ~、やった~」

みうながご機嫌で流れてくるそうめんを箸で上手に掬い、ちゅるりと食べる。


一体誰が流しているのかと疑問に思って上流の方へ目をやる。




……。



「メイドさんがいる!?」


学校の屋上で流しそうめんをしている事にすでに驚いているのだが、そのそうめんを上流から流しているのはメイドさん!?と声に出していた。


するとそのメイドさんがこちらに向かってペコリと一礼したあと、

「嬢子様のお世話をしております、乙木 メイ(おつき めい)と申します」

「お見知りおきを」


丁寧に挨拶されたので思わずこちらもペコリと返した。

「ぁ、どうも」


「はじましてよろしく~、モグモグ」

みうなが口をモゴモゴしながら挨拶する。


私は思わず文花ちゃんを見て、これはどういう状況?的な顔をしていた。


すると文花ちゃんは

「えとね、あのメイドさんは嬢子ちゃんの

お世話をしているメイさん」

さっき自己紹介された情報が再び入って来た。


「ぇ、嬢子ちゃんってお嬢様だったの?」

今度は嬢子ちゃんを見て説明求む、的な顔をしてしまっていた。


「お嬢様といえばそうかもね!うちのパパは土御門ホールディングスの社長だから!」

そう言ってドヤ顔をした。


「お嬢様というか、社長令嬢?」

なんだか疑問が解決せずどんどん増えていく気がしてきたので、文花ちゃんに助けを求める顔をする。


「えとね~、隣街にホームセンターあるの知ってる?」

文花ちゃんは私にそう質問をした。


少し考えて思い出す、

「たしか、TCMホームセンター?だったかな」


「そう嬢子ちゃんって、そこの社長さんの一人娘なんだ」

文花ちゃんが嬢子ちゃんの方を見ながら話す。

嬢子ちゃんはそうめんをすすりながらこちらを見てドヤ顔をする。


「ぇ、社長令嬢ともなると、豪華にお昼ご飯は屋上流しそうめんなんて芸当も出来ちゃうんだ?」

私がそう言うと文花ちゃんは


「あー、豪華とはちょっと違うかな」

「ある意味仕事の範疇というか、なんというか」


そう言ったので、少々首をかしげて疑問を返す。

「どゆこと?」


「えーとね、ちょっとした事情で大量のそうめんを食べないといけなくなって」

「それで最近ずっとそうめん生活なんだ」


疑問がいまいち晴れないが、とにかくそうめんを食べなければいけないという事だけはわかった様な気がする。

「なるほど、だからみんなでそうめん祭りって事なのかな」


私がそう言うと文花ちゃんは

「そうなんだ、ごめんね」

文花ちゃんはちょっぴり困った顔で謝る。


「そうめんおいしいよ!流しそうめんウマ~」

みうなの特定保健用食品的な言葉が文花ちゃんの心を癒す。


「そういえばさっき、仕事の範疇的な事を言っていたけど」

「この間のお祓いとかの関係?」

私がそう質問すると文花ちゃんは


「うん、ハラインで仕事の依頼とかが来るの」


「「ハライン?」」

自然と私とみうなが声を合わせた。


「うん、退魔的なお仕事依頼とかの連絡アプリなんだけど」

「このあいだね……」

そう言って文花ちゃんは話し始めた。




-----------------




 それは先週、まだ梅雨は明けず空を黒い雲が覆っていた午後のこと。


下校途中だった文花の携帯電話が震え、通知音が鳴る。


ハライ~ン♪


その音を聞き、文花は立ち止まって画面に目をやる。

その隣で一緒に歩いていた嬢子ちゃんにも通知音が鳴り、同様に画面を見た後、文花と嬢子ちゃんはお互いの顔を見る。

「来たわね!ハラインからの悪霊退治の依頼」

嬢子ちゃんは嬉しそうに文花に話す。


「嬉しそうだね、低級依頼だからって油断しているとこの間みたいにまた呪われちゃうよ」

依頼内容を軽く確認した文花は、嬢子ちゃんを一瞥し釘を指す。


「ぁ、あれはちょっと油断しただけよ、今度は任せて!」

嬢子ちゃんは文花に向かって小さくガッツポーズする。


「その謎の自信も何度目よ」

と軽く突っ込みを入れながら依頼内容の確認を終えた携帯電話をしまう。


文花と嬢子ちゃんの通知音が同時だったのは、二人がコンビで動いているからである。

退魔士検定に受かったとはいえ、まだ3級。

悪霊退治には二人で対応することになっていて必然的に嬢子ちゃんは文花と一緒になるのである。


公園に近づくと嬢子ちゃんの後方から車が近づいて来る。

その車が嬢子ちゃんの近くに止まる。

嬢子ちゃんはよく車で学校に送り迎えしてもらっている。さすが社長令嬢なだけある。

と言いたいところではあるが、学校に直接来るわけではなく、近くの公園まで文花と一緒に歩いてそこに迎えに来てもらっている。


理由は二つある。


一つ目、嬢子ちゃん的には途中まで文花と一緒に歩いて帰る事が出来て、その方がいいのだろう。

二つ目は、迎えに来た車が……軽トラだからである。

嬢子ちゃんは隣街にあるホームセンターを経営する社長さんの一人娘だ。


ホームセンターには購入した木材などを運搬するための車の貸し出しサービスがある。


貸し出す車は軽トラからバンなど何種類かあるが、その中で空いている車で嬢子ちゃんを迎えにきているのである。


たまに空いてない日などは、駅まで歩いて電車を使ったりしている。

この間は迎えに来た車は大きめのトラックだったが、今日は軽トラの様だ。


嬢子ちゃんは、運転してきたメイさんに軽く礼を言いこちらを向く。

「じゃあ文花、土曜日に向かうわよ!悪霊退治!」

そう言って嬢子ちゃんはメイドさんが運転してきた軽トラに乗り込む。


文花は車に乗りこんだ嬢子ちゃんに向かって手を振りながら

「じゃあ土曜日、遅れずに来てね」


そう言って軽トラを見送った。



--------------------

挿絵(By みてみん)




 ガサガサ


山道を歩く少女達が居る。

一人は巫女服、もう一人は修道服いわゆるシスターである。

「も~、なんでこんな山奥なのよ。」

「これじゃあ私の華麗な活躍を観客の皆に見せつけれないじゃない」

シスター服でアイマスクを着けて、巻いてある金髪が特徴的な女の子、嬢子ちゃんが一緒に歩いている女の子に愚痴をこぼしている。


「またそんなこと言って、私達の仕事はあんまり人に見られちゃ駄目なんだから」

巫女服で埴輪?型の髪飾りを着けた女の子、文花ちゃんが嬢子ちゃんと話している。


二人は今、とある目的地に向かって山道を歩いていた。

しばらく歩くと少し開けた場所に出て、周辺にはロッジやログハウスなどの建物が何件か並ぶキャンプ場らしき場所についた。


「ようやく着いたわね」

嬢子ちゃんが軽く伸びをしながら文花ちゃんに語りかける。


「ここが……例のキャンプ場だった場所みたいね」

文花ちゃんは辺りを見回しながら嬢子ちゃんに返事する。

キャンプ場だった、過去形なのはこの場所にはひとけが無く静まり返っていたからである。


聞こえてくるのは木々のざわめきや、遠くで鳴く鳥の声ぐらいである。


「さぁて、始めるとするわよ」

嬢子ちゃんが元気に声を上げて再び歩き始めた。


巫女とシスターが何故キャンプ場へと来たのか、決してコスプレキャンプ大会をしに来た訳ではない。


「出てきなさい!悪霊!」

嬢子ちゃんが高らかに叫ぶ。

そう、この二人はこのキャンプ場に出るという悪霊を退け(しりぞけ)に来た退魔士コンビなのである。


「今のところ、変な気配は無さそうね」

文花は持っていた携帯電話を除き込み確認をする。


「まぁハラインからの低級依頼だし、ちゃちゃっと片付けちゃいましょ」

両手で大きくポーズを取りながら嬢子ちゃんは辺りを見回す。


「まったく、嬢子ちゃん油断は禁物よ」

そう言って文花は見ていた携帯電話をしまって、側にあるログハウスに近づきノックする。


コンコン

当然返事は無い。

「そんなことしても誰もいないわよ此処」

そうい言いながら嬢子ちゃんは文花のもとへ歩いて近づいていく。


「一応マナーよ」

文花は嬢子ちゃんに答えながら、ログハウスの扉を開ける。


カチャり


「鍵は掛かっていないみたいね」

文花は静かに扉を開けて奥を除き込む。


「おじゃましま~す。誰かいますか?」

慎重に扉を開けて二人はログハウスの中へ入って行った。




静まり返った建物内に二人の声が静かに反響する。

「やっぱり誰も居ないわね」

そう言って嬢子ちゃんは部屋を見渡す。


安全を確認したのか、慎重に歩を進め室内に入っていく二人。

「ここは事務所か何かなの?」

嬢子ちゃんが文花に質問すると

「うん、キャンプの受付とかする管理人の事務所かな」

文花は近くにあった机を見て、その上にあった書類などを確認する。

「ハラインからの情報通りね、去年まではキャンプ場として賑わっていたみたい」

「何故だか今年は営業していないみたいね」

文花の話に嬢子ちゃんが返答がする。


「悪霊のせいに決まっているわ、この天才祓魔師エクソシスト土御門嬢子が祓ってあげるわ!」

いつも通り自信満々に人差し指を突き出し、何もない空間に嬢子ちゃんの叫びが響き渡る。


慣れているのか、文花は気にも止めずに物色を続ける。

「なにか悪霊に繋がる手がかりでもあるといいんだけど」


嬢子ちゃんは早速室内調査に飽きて来たのか窓の外を眺めている。

「森が……ざわめいているわね……」

「私は外を見てくるわ」

そう言って外へ向かおうとする嬢子ちゃんを、文花が引き留める。

「嬢子ちゃん……」


それを聞き、振り返って足を止める嬢子ちゃん。



「嬢子ちゃんその台詞……」


「ざわめいてるって言いたいだけでしょ」





嬢子ちゃんはそれを聞いてドキッとする。

続けて文花は

「ここに来るまでに、森の木々やら動物やら3~4回はざわめいてるって言っていたし」


その言葉に照れた顔をしながら嬢子ちゃんは

「ぅ、うるさいわね!ざわめいてるんだからしかたないでしょ!」

「外、見てくるから!」

恥ずかしそうに早足で扉に向かい、バタリと音を立てて外へと出ていった。


その様子を微笑ましく見送った文花は、再び辺りを見回し部屋の確認に戻った。


ザワザワ


ぁあは言ったものの自称天才祓魔師エクソシストだ、賑わっていたキャンプ場の雰囲気とは違って何かが棲む気配があるのを感じ取って居るのかもしれない。


「ん?」

室内を見回していた文花が何かを見つける。

「あっちは倉庫、かな?」


奥の方へ歩き、倉庫らしき扉に手をかける。


カチャり

静かに扉を開け、奥の様子を伺う。


倉庫も当然のように静まり返っているのだが、文花はそこにいくつかの段ボールと何かの機材を見つける。

「これは……」

そっとしゃがみ段ボールを確認する……。







 軽く頬を撫でるそよ風が気持ちいい。


文花を事務所に残したまま外に出た嬢子ちゃんは、ログハウスの周辺を見廻っていた。

「うーん、何かが"居る"気はするんだけどよくわからないわねぇ」

嬢子ちゃんは訝しげ(いぶかしげ)な顔をして森の方を睨みつける。

「ジョー君はどう?わかりそう?」

嬢子ちゃんはアイマスク型の相棒?ジョー君に語りかける。

「う〜ん、何か居そうな感じだけどよくわからないじょー」

ジョー君が嬢子ちゃんと、同じようなことを言う。


「こういう地味な悪霊探しより、ズバーッと現れてバババッと退治したいわ!もぉ〜っ」

そう言いながら手を大きく振り回しながら、退治のイメージトレーニングなのかカッコよく決めポーズを取る。


サワサワ


嬢子ちゃんの叫びは、静まり返った森の中に消えて行った。


「仕方ないわね、一度文花の所に戻ろっと……」

嬢子ちゃんが振り返り、歩を進めようとした時、


ムニュり


「うへぁっ!」

何かを踏んだ感触でビックリし、数歩後退りする嬢子ちゃん。


自分が何を踏んだのか、目を丸くしてその場所を凝視する。


ミミズ?


「いや、ミミズにしては白い?」

足元にはミミズのようだが、白く長いなにかしらが居る。

長さは20センチ程で、太さは1~2センチ?ミミズというには大きい、

かといって蛇にしては短かすぎる。


嬢子ちゃんは何の生物?と思いつつ、目を凝らして見てみる。


すると、


頭らしき所からギョロりと見つめる瞳に、一瞬ドキッとしたと同時に素早く後退りした。


先程とはうって変わり、嬢子ちゃんは険しい表情をして構える。


それは何故か、

その怪しげな白いミミズか蛇かはたまた芋虫か、それらのどれでもないモノ。

その単眼、一つ目の瞳がこちらを見ていたからである。


嬢子ちゃんは、そのモノを見て微かに微笑む。

「ようやく現れたわね!悪霊!」


そう言って嬉しさから溢れる笑みを堪えながらそのモノに向かって指を差す。


「思っていたより低級霊ね、全然気が付かなかったわ」

「まぁ、この程度なら文花を呼ぶまでもないわね」

嬢子ちゃんは右手を横に突き出し、何かを呟く。


「ジョー君を媒介に、私の祓魔力(エクソシストパワー)を重ねてドリルを練り上げる!」

すると嬢子ちゃんの右手に、黒いモヤの様なものが集まり出した。

徐々に形作っていくモヤはやがて、三角コーン程の大きさのドリルへと変化した。


「さぁ、希代の天才祓魔士(エクソシスト)土御門嬢子(つちみかどじょうこ)のお出ましよ!」

「悪い悪霊は私が祓ってあげるわ!」


右手に出来たドリルを悪霊に向かって突き出し、嬢子ちゃんは叫んだ。

挿絵(By みてみん)




白く長い悪霊は真ん中辺りに、赤い帯状のものが巻いてある様な感じで頭らしき場所には

単眼、一つ目が嬢子ちゃんの方を見つめていた。


それに対して、一目でこんな生物は居ないだろうと直感し身構えた嬢子ちゃんは、その悪霊を睨み返す。


キュルキュルルルルルル


嬢子ちゃんの右手にあるドリルが回転し始める。

「喰らいなさい!」

悪霊穿掘(ディグファントム)!」


そう叫び、悪霊へ回転する右手ドリルを突き出し勢い良く向かって行った。




ズギャァアアァッ!




嬢子ちゃんのドリルが悪霊に直撃し、悪霊は黒いモヤの様になり霧散した。


キュルキュル……

嬢子ちゃんの右手のドリルが静かに止まる。


「フッ、呆気なかったわね」

「まぁ、この天才エクソシスト土御門嬢子にかかればこんなものよ」


嬢子ちゃんは悪霊を退治したドリルを見つめながら、ご機嫌に話す。


「さて、文花に退治の報告に行かないとね」

そう言ってログハウスの方を向いた時、背後に何かの気配を感じ再び振り返る。




ザザッ、ザザザッ。





「や、やっぱりこれぐらい居ないと歯ごたえ無いわよね」

再びドリルを構え直した嬢子ちゃんの前には、先程退治した悪霊と同じ様なモノが何匹も現れていた。


「1、2、3、4……って」

嬢子ちゃんが数えている途中で、悪霊がこちらに向かって近づいて来る。


それを見て嬢子ちゃんの右手ドリルがまた回転を始める。


キュルキュルルルルルル


「この程度じゃ、私の回転(ドリル)は止められないわよ!」

嬢子ちゃんは悪霊達に向かって叫ぶ。


キシャァアアァッ

何処からその声が出ているかは全く解らないが、悪霊達は叫び嬢子ちゃんへの敵意を露にした。


そして近くに来た何匹かが嬢子ちゃんに向かって飛びかかる。


キシャァア!


嬢子ちゃんは素早くドリルを振りかざし、襲いかかって来る悪霊へと向ける。


ズギャァアアァッ、ズギャァァッッ!


嬢子ちゃんのドリルにより悪霊が霧散してゆく。

霧散してゆく悪霊をドリルで振り払い、残りの悪霊の位置を素早く確認する。



「ざっと見て2~30ってとこ?」

「低級依頼にしてはなかなかの歯応えね」

たとえ一匹一匹は弱くても、これだけの数の悪霊となると並の祓魔士では手こずるであろう状況に


「まぁ、多少数が多くても私には関係ないわ!」

「全部まとめて退治してあげるわ」


そう言って嬢子ちゃんはドリルを身構えた。




ズギャァァッッ、ズバァァアッッ!




襲いかかって来る悪霊を次々と凪ぎ払う嬢子ちゃん。

しかし、悪霊の数は一向に減らず徐々に押されていた。

「くっ!うぁあっ!」


右手のドリルで払いのけれなかった悪霊が、嬢子ちゃんにまとわりつく。

腕や腰、太ももなどに何匹も絡みつく。


このまま大量の悪霊にまとわりつかれてしまっては、たとえ祓魔士といえど只では済まない。


「くうっ!」

嬢子ちゃんの声すら押し潰されそうとした時、


「天才祓魔士エクソシストは、こんなものじゃないわよ!」

嬢子ちゃんが左手を突き出し叫ぶ。


土竜巻爪(トルネードクロウ)!!」

ズギャギャギャアッッッ!


その音と共に嬢子ちゃんの体を取り巻いていた悪霊達が、次々と飛び散ってゆく。


ズギャギャギャアッ!ズギャギャギャアッ!


体を取り巻いていた悪霊達をあらかた振りほどいた嬢子ちゃんが深く呼吸する。

「ふぅーっ」


その嬢子ちゃんの左手にはドリルが5本、指の先にそれぞれ小型のドリルがまるで爪の様に伸びていた。


「まぁまぁやるわね、でも私には通じないわよ」

嬢子ちゃんのドヤ顔がますますドヤ顔してきた。


呼吸を整えた嬢子ちゃんは右手に三角コーンドリル、左手には爪形ドリルを構え悪霊の様子を確認する。


「うへぇ、まだあんなにいるのね」

体にまとわりついた悪霊を沢山祓ったはずなのに、嬢子ちゃんの目の前には未だ20匹程の悪霊がこちらを見ていた。


「一匹ずつチマチマやるのは性に合わないわね」


大量の悪霊を前に嬢子ちゃんはドリルを解除した。

両手のドリルがスッと消え、嬢子ちゃんは右手を前に突き出す。


「ちょっとばかり大技だけど、これで全部吹き飛ばしてあげるわ、いくわよジョー君!」


「わかったじょー、がんばるじょ〜」

ジョー君が返事すると嬢子ちゃんの周囲に、先程左手から伸びていた爪ドリル位の大きさのドリルが大量に浮かび始めた。


螺旋快弾スパイラルバレットオンスロート!!」

嬢子ちゃんが叫ぶと、取り巻いていた大量の小型ドリルが一斉に悪霊へと向かって行った。


挿絵(By みてみん)



ドドドドドドドドドッッッ!!!





激しい轟音と衝撃が辺りを包む。

悪霊達が居た場所には土煙が舞っていた。


前に出していた手のひらを高らかに突き上げ決めポーズ?を取る嬢子ちゃん。

「跡形もなく吹き飛んだ様ね!さすが私!」

そう言ってポーズを取っている嬢子ちゃんは満面の笑みを浮かべている。




 すると、後方から森に響き渡る轟音を聞き付けたのか少し離れた事務所のあるログハウスから文花が駆け寄ってきた。

「嬢子ちゃん、なにがあったの~?」


振り返り、遠くから駆け寄って来る文花に手を振りながら嬢子ちゃんは叫ぶ。

「文花~、悪霊なら片付けちゃったわよ~」

「まぁ、希代の天才エクソシスト土御門嬢子にかかればこんなものよ!」


満面の笑みを浮かべながら話す嬢子ちゃんだが、駆け寄って来る文花の顔が険しい事に気付く。




「嬢子ちゃん!うしろ!」



予想外の言葉に一瞬反応が遅れる。

「ぇ?」

すぐさま後ろを振り返った所、大きな黒い影が目をかすめる。

それは、先程まで居た2~30センチの悪霊とは違い嬢子ちゃんの身長を遥かに越える影だった。


その影は嬢子ちゃんに振りかぶり今まさに攻撃を仕掛けんとしていた。


「まずい、このままじゃ!」

大きな黒い影を先に認識していた文花が、その状況を見てつぶやく。


「ぅえぇえ!?」

嬢子ちゃんは一瞬反応が遅れたこともあり、対応しきれずにいた。


すると文花が構え、叫ぶ。

長縄流縄術ながなわりゅうじょうじゅつ縛式(ばくしき)早縄一文字(はやなわいちもんじ)!!」


叫ぶと同時に文花の手元から縄が飛び出し、勢い良く嬢子ちゃんに向かっていく。


挿絵(By みてみん)


シュルシュルッ!

大きな黒い影の攻撃に対応しきれずにいた嬢子ちゃんを素早く縄が縛り上げる。


「くうぇっ!」

縛り上げられた嬢子ちゃんは鳴き声を上げる。

と同時に文花は嬢子ちゃんを縛り上げた縄を引く。


ズギャァァッッ!!


つい先程まで嬢子ちゃんが居た場所に、黒い影の攻撃が振り下ろされた。


嬢子ちゃんは縛り上げられ、なおかつ縄で勢い良く引き寄せられた為、鳴き声が宙を舞っていた。




「くうぇぇぇぇえ~ぇぇ~」





縛られたまま宙を舞う嬢子ちゃん。


文花が手元の縄をクイッと引くと縛られた縄がほどかれ、着物の帯回しの様に回転しながら嬢子ちゃんは地面に降り立った。


「ぅえぇえっ、うえっ」

回転の余韻でクルクル回りながら、謎の嗚咽を漏らす嬢子ちゃん。


「大丈夫?嬢子ちゃん」

文花は目の前の大きな黒い影を見つめたまま嬢子ちゃんに声をかける。


「ぅえぇえっ、大丈夫、うえっ」

回転が収まり手を頭に当てて返事をする嬢子ちゃん。

頭を振り意識をハッキリさせた所で改めて先程の黒い影を確認する。

「なによあれは、さっきの悪霊と全然違うじゃない」

そう言いながら文花の横に立つ。


「さっきの悪霊って、もしかしてこれのこと?」

文花がそう言って差し出したのは小さな赤い帯だった。


それを横目で確認する嬢子ちゃん。

その小さな赤い帯は、先程の悪霊の真ん中辺りに巻かれていたものと同じ物のようだった。


「そうよ、それ!」

「なんだか白くて長いミミズのような悪霊の真ん中にあったやつ」

「なぜに文花が持っているの?」

「あと、低級依頼にしては歯応えあるわね!」

捲し立てるように嬢子ちゃんは話す。


すると手に持った赤い帯を握りながら文花は呟く、

「これ、上級なの」


その言葉に嬢子ちゃんは文花を二度見する。

「え!?」


文花の顔を見つめ、それが冗談では無いことに気付き嬢子ちゃんは

「確かに低級依頼であの数の悪霊はあり得ないけど」

「上級って事なら納得ね!」


文花と嬢子ちゃんが話しているうちに、先程の大技で立ち込めていた土煙が晴れていく。

すると、黒く大きな影が姿を現していた。


それは嬢子ちゃんと対峙していた小さい悪霊より遥かに大きく、禍々しい空気を漂わせていた。


「あれがここの悪霊の親玉ね!」

「上級だろうがこの希代の天才エクソシスト、土御門嬢子が祓ってあげるわ!」

そう言っていつもの決めポーズをする。

が、文花は険しい表情のまま嬢子ちゃんに話しかける。


「違うわ嬢子ちゃん、あの帯を見て」

そう言われて改めて悪霊の帯を見てみると、黒い。

小さい悪霊は、確か赤い帯であった。


「確かに帯の色が違うわね、あの大きいのは黒い帯みたいだけど」

「なにか違うの?」

大きい悪霊を指差しながら文花に質問する。


「あの黒い帯の色……」

「特級よ!」


文花の言葉に嬢子ちゃんは目を丸くする。




「と、特級!?」



「どういうこと?低級依頼でなんで特級の悪霊が出てくるのよ?」

「っていうか、悪霊のランクって帯の色で決まるんだったっけ?」

文花に向かって捲し立てるように話す嬢子ちゃん。


すると文花は静かに答えた。

「帯の色で等級がわかるのは、そうめんね」

「赤い帯が上級で、黒い帯が特級」


「???」

その返答に嬢子ちゃんが再び目を丸くする。

そんな嬢子ちゃんをよそに文花は話を続けた。


「さっきの事務所のあったログハウス、そこを調べていたら奥の倉庫で見つけたのがこれなの」


そう言って先程の赤い帯を差し出した。

「それは小さな悪霊が着けていたやつでしょ?」

「何故それが倉庫に?」

嬢子ちゃんが問いかけると、


「倉庫にあったのはそうめんよ」

「ダンボールに入った大量のそうめんがあったの」

文花の言葉に嬢子ちゃんはイマイチ状況を理解できずに問い返す。


「悪霊と何の関係が?」


すると文花は目の前の悪霊を指差して

「あれは恐らく……、そうめんの悪霊よ」


嬢子ちゃんは文花と悪霊を何度も見返し、口を開く。

「ぇえ?どういうこと?」


文花は再び説明を始める。

「このキャンプ場、流しそうめんを目玉にしていて、事務所にあったパンフレットにも書いてあったの」

「ハラインでの去年まで賑わっていたって情報には続きがあって、去年世界的に流行した感染症か不景気かはわからないけれど実は客足が減っていたの」

「そこで客足回復の為にさらなるイベントを計画していて」


ほうほうと、嬢子ちゃんが頷く。

「そのイベントというのが、普段は使わない特級を使った流しそうめんだったの」

「でも想定よりも客足が伸びずに、使われるはずだったそうめんが大量に余って倉庫に眠ることになったってわけ」


文花の説明に嬢子ちゃんが質問する。

「そうめんの経緯は分かったけど、何故に悪霊に?」


文花は目の前の悪霊を見ながら説明を続けた。

「去年使われるはずだったそうめんの想いが、心残りとなって悪霊と化してしまった……という所かしら」


嬢子ちゃんはなんとなく納得した感じで再び悪霊の方を見る。

「だいたいわかったわ、特級ってのはそうめんのランクで悪霊の事ではないのね」


その言葉を制するように文花が口を開く。

「そう簡単でもなさそうなの」

「嬢子ちゃん、呪いや悪霊って想いの強さが影響するのは知っているよね」


その問いに嬢子ちゃんは即答する。

「当然よ!強い想いが呪いや悪霊を産むけれど、私達のエクソシストパワーも想いが強いほど、より強くなるんだから」


私はエクソシストじゃないけど、という顔をしながら文花がそれに答える。

「だからあのそうめんの悪霊は自分が特級だと思っているの」

「なんちゃって特級、いうなれば特級モドキと言った所かしら」



「いうなれば特級モドキと言った所かしら」

「流石に本物の特級悪霊とまではいかないと思うけれども、あの感じは低級どころか上級すら越えてそうね」




文花がそう言って嬢子ちゃんを見ると震えている様に見える。

それを横目に文花は話を続ける。

「一度退いて協会に報告するのが懸命だと、私は思うけれど」


すると文花の言葉を遮る様に嬢子ちゃんは

「何いっているの文花!、こんなチャンスはめったにないわよ!」

「三級祓魔士(エクソシスト)に特級悪霊の相手なんて」

「ワクワクしてきたわ!」

どうやら震えているのは武者震いのようだった。


嬢子ちゃんのこういう言動は慣れているのか、その言葉に余り驚きもせず文花は

「まぁ、嬢子ちゃんならそう言うと思ったけれども」

「本当にまずいと思ったら縛ってでも退くわよ」


嬢子ちゃんは不敵に微笑みながら話す。

「任せて、この天才エクソシストが特級だろうが祓ってあげるわ!」


そんな会話をしていると悪霊が動き出した。

触手の様なそうめんの手?をウネウネと動かす。


「嬢子ちゃん、来るよ!」

文花がそう言った瞬間、何本ものそうめんがこちらに向かってきた。


スガガッ、ズガッ!

文花と嬢子ちゃんは横に走り出し、そうめんの攻撃をかわしてゆく。


連続して向かって来るそうめんに次第に追い付かれそうになる二人。


すると文花は手元の縄を掴んで呟く。

長縄流縄術ながなわりゅうじょうじゅつ駆式(くしき)跳縄(とびなわ)

縄が鋭く投げられ、木の枝に絡みつく。

その縄を掴みターザンなのか蜘蛛男なのか、器用に高速移動する。


少し離れた場所に着地し、振り返り嬢子ちゃんを確認する。

「嬢子ちゃん!」


向かってくるそうめんの攻撃に追い付かれると思った嬢子ちゃんは、振り返り右手にドリルを練り上げ構える。

「手数は多いけど、さっきの悪霊より細い!」

「吹き飛ばしてあげる!」

そう言って、襲いかかるそうめんにカウンター気味にドリルを振り抜いた。


ギィィイィィン!!


鈍い音と共に嬢子ちゃんのドリルが跳ね返される。

攻撃したそうめんも嬢子ちゃんのドリルの勢いに跳ね返り、お互い後ずさる。


その隙に嬢子ちゃんは文花の所まで退き、悪霊と距離を取る。

すぐさま嬢子ちゃんは文花に向かって叫ぶ。

「なによあれ!細いのにかっったいじゃない!」


嬢子ちゃんの言葉に文花は冷静に返す。

「嬢子ちゃん気をつけて」

「特級そうめんは上級よりも細いけれど」



「コシが強いの」




文花のその言葉に嬢子ちゃんは「コシ?」と一瞬戸惑ったが、すぐに理解したようだ。


「あの感じじゃ生半可な攻撃は通用しなさそうね」

「あれを……やりますか」

そう呟いたあと、ドリルのある右手を高らかに上げ

「いくわよ、私の最強の必殺技!」


グォォオォォッ

嬢子ちゃんが叫ぶと突き上げたドリルが大きくなっていく。


そうめんの悪霊は大技が来ると認識したのか、それを止めようとさらなる攻撃を仕掛ける。


シュルルル!

向かって来る触手そうめんに文花が立ち塞がる。

「させないっ」


長縄流縄術ながなわりゅうじょうじゅつ縛式(ばくしき)大蛇(オロチ)

文花が叫ぶと何本もの縄が蛇の様にうねりながら飛び出し触手に絡みつく。

さらに文花が両手を横に振り抜く。

すると触手と絡んだ縄がそばにあった木に巻き付き、悪霊の触手そうめんの動きを封じた。


「ナイス!文花!」

嬢子ちゃんが文花に微笑んだ後、身の丈の2倍程まで大きくなったドリルを前に構え叫んだ。

「いくわよ!」

裁きの螺旋ドリルオブジャッジメントオーバードライブ」(通称DoJo)

ダッ!

巨大なドリルを片手に、嬢子ちゃんは悪霊に向かって突撃する。


ビキビキッ

文花の縄によって木に縛りつけられた触手そうめんを、力ずくで引きちぎり突撃してくる嬢子ちゃんを止めにかかる悪霊。


ゴォォオオォオオォ!!!

轟音を上げ回転するドリルに触手そうめんが絡みつき、回転を止めようとする。

「うぉりゃあぁぁぁあ!」

嬢子ちゃんの叫びと共に悪霊に直撃する。


ドゴォォォォオオォ!

轟音が響き土煙が辺りを包む。


土煙の中嬢子ちゃんは、右腕を振り抜いた状態で見上げ悪霊を確認する。

「やったの?」


後ろからそれを見ていた文花が嬢子ちゃんに向かって叫ぶ。

「嬢子ちゃん!その台詞はダメっ!」


風が吹き土煙が流れて見えてきたのは……

何本かは引きちぎられはしたものの、いくつもの触手そうめんを絡み付かせて帯の直前で止まっていたドリルだった。


「えっ!?」

嬢子ちゃんはそれを見て一瞬たじろいだ。


シュルルルッ!

悪霊はその一瞬を見逃さず、すぐさま触手そうめんで嬢子ちゃんを縛り上げた。


「くぁああぁあっ!」

何本もの触手そうめんが嬢子ちゃんに絡み付き高く掲げられる。


それを見た文花が叫ぶ。


「嬢子ちゃん!」




文花が助けに向かおうとするが、触手そうめんが目の前に立ちふさがり足を止める。

「くっ!」


「うぁあぁぁっ!」

ギリギリと締め上げられる嬢子ちゃん。


「いけないっ、このままじゃ!」

文花がそう言って嬢子ちゃんを見ると、縛り上げられている嬢子ちゃんの目がまだ諦めていない事に気付く。


「くぉおおおっ!」

そう叫び、縛っている触手そうめんを引きちぎりに掛かる。


「私を……」

ブチブチッ

「私を縛っていいのは!」

ブチブチブチッ!

「文花だけよっ!!!」

ズギャァアアァァアァッ!


両手の指に小型のドリルを合計十本練り上げ、それを振り回し触手そうめんを引き千切った。


スタッ、


そのまま地面に降り、素早く距離を取る嬢子ちゃん。

ズサァッ


「ふぅーっ」

文花の所まで移動し、深く呼吸し心を落ち着かせる。


「……ぇと、大丈夫?嬢子ちゃん!」

先程の叫びが気になってちょっぴり謎の間があったが、文花が問いかける。


「大丈夫、あの悪霊ちょっとばかり歯応えあるじゃない」

嬢子ちゃんはそう言って頬をつたる汗を拭う。


文花はそんな嬢子ちゃんの様子を確認して少し安心したが、

「嬢子ちゃん、一旦退こう」

「必殺技も止められてしまったし、大技続きでこのままじゃもたないわよ」


呼吸を整えた嬢子ちゃんはスッと背筋を伸ばしてこう言った。

「文花安心して、あの悪霊を退治する方法を思い付いたわ」


「えっ」

確かに嬢子ちゃんは代々続く長縄流縄術の私と違って、オリジナル技を沢山作る発想の持ち主だけど。

そう思い改めて嬢子ちゃんの顔を見ると、いつものドヤ顔をしている。


そんな嬢子ちゃんの顔を見つめ、

「……いけそう、なの?」

文花が嬢子ちゃんにそう問いかけると。

「当たり前よ!」

「私は希代の天才エクソシストよ!」

「悪い悪霊は祓ってあげるわ!」

満面の笑みで、叫ぶいつもの嬢子ちゃん。


「それで……どうやるの?」

文花は悪霊の様子をを見つつ、嬢子ちゃんに話しかける。


嬢子ちゃんも悪霊の様子を見ながら口を開く。

「じゃあ、まずは……」




「私を縛って!」





自信満々の笑顔で嬢子ちゃんは自分を指差してそう叫んだ。


「……はぁっ!?」

文花は思わず嬢子ちゃんを見て変な声で返事をしてしまっていた。


「どういうこと?」

「やっぱり縛ってでも撤退するってこと?」

文花はいぶかしげな顔で嬢子ちゃんに問いかけると


「違うわよ、ちょっと耳をかして」

嬢子ちゃんはそう言うと文花になにやら説明を始めた。


「……なるほど、でもいきなりそんなこと言われてもうまくできないかもしれないわよ」

文花が少し不安そうな顔で話す。


「大丈夫」

嬢子ちゃんはいつもの自信満々の様子で

「私は……文花を信じているからね」

文花に微笑みながらそう語った。


その嬢子ちゃんの屈託のない笑顔に文花は

「……そう言われちゃうと……ね」

「まぁやってみますか」

嬢子ちゃんに微笑み返す。


すると再び悪霊の触手そうめんが動き出した。

「また技の邪魔を……これじゃ縛る隙が無い」

文花がそう呟いて触手そうめんの迎撃をしようとした時、


シュパッ


文花の肩に乗っていた埴輪が飛び出し、触手そうめんに向かっていく。

ハニー!(ハニカムシールド)


埴輪の前方に多数の六角形が繋がった盾のような壁が組み上がる。


ギィィイィィン

ハニカム構造の光の盾が触手そうめんを弾く。


それを見た嬢子ちゃんが叫ぶ。

「文花!今っ!」


文花もそれを察し、素早く嬢子ちゃんを縛り上げる。

シュルルル!


「いくよ、嬢子ちゃん!」

手元の縄を持ち、縛った嬢子ちゃんをハンマー投げ要領でジャイアントスイングの様に振り回し始める。


グイングイン

文花を軸にその周りを回る嬢子ちゃん。

文花が片足を踏ん張り、手元の縄をクイッと捻ると嬢子ちゃんを縛っていた縄が緩み始める。


「いっけぇぇっ!」

縄がほどけると独楽の要領で回転を始める。

ハンマー投げみたいに悪霊に向かって放り投げられ、独楽の様に回転する嬢子ちゃん。


嬢子ちゃんは先程と違い、自分が回転しているにもかかわらず悪霊を笑顔で睨み付け叫ぶ。

「文花の縄の回転力と!」

「私のドリルの回転力を合わせれば!」

回転により縄がほどけ自由になった腕を突き出し、ドリルを練り上げる。


大きく練り上げられたドリルが、二人の回転力も合わさって轟音を上げ悪霊に向かっていく。


ゴォオオオオオオォオッ!



「くらいなさい!」




二人の(ヘイローミキシング)共同作業ジュブナイルカインドオービット」(略称HMJKo)


挿絵(By みてみん)



ゴォォオオォオオォ!





文花に縄で振り回してもらった嬢子ちゃんは、大きなドリルを掲げ回転は勢いを増して悪霊へと向かって行く。


シュルシュルッ

悪霊は先程と同じ様に触手そうめんを絡ませ、ドリルを止めようとする。


ブチブチッッッ!

が、さっきとは違い嬢子ちゃんのドリルの回転に文花の回転を加えた二人の回転力により、触手そうめんが次々と引き千切られてゆく。


「うぉぉぉおおおおおぉぉぉぉっ!」

嬢子ちゃんの声が轟く。

「二人の回転力(愛の力)は止められないわよっっっ!」


「ォォォォォオオォォォ!」

ズガァァァァアアッ!

悪霊の叫びと同時に嬢子ちゃんが悪霊の黒い帯を貫いた。


ズサァァッ

悪霊の胴体の帯に巨大な穴を開けた嬢子ちゃんは勢いよく着地する。



ドゴォォォォオオォッ!

スッと立ち嬢子ちゃんがキメポーズを取ると、悪霊は爆発霧散した。


悪霊を退治した感動か、恍惚なのかキメポーズのまま空を見上げる嬢子ちゃん。


……ハラリ

ポーズを取っていた嬢子ちゃんに、霧散した悪霊の黒い帯の一部が舞い落ちる。


「……。」

それに気づいた嬢子ちゃんは、そっと手のひらを出すと手の上に黒い帯の切れ端が乗った。


その切れ端から、かすかな声が聞こえてくる。

「……ミンナ……二……タノシクタベテ……ホシ……カッ……タ……」

そんな言葉を残し、その黒い帯も霧散してゆく。


「そっか……」

その言葉を聞き、嬢子ちゃんは少し哀しげな顔をする。


「嬢子ちゃん!」

声を上げ文花が駆け寄って来る。


それに気付いた嬢子ちゃんが振り向こうとしたその時、


デレンデデレンデデレンデデレンデ、デーレン。

謎なエフェクトと同時に、何やらおかしなBGMが流れた。


「え?」

驚く嬢子ちゃんに、少し困った顔をした文花が近づき声をかける。

「……嬢子ちゃん、もしかして」

「呪われた?」


嬢子ちゃんの手に乗っていた悪霊の切れ端の最後の願いが、呪いとなったのだろうか。


「ぇえ〜っ」

静かに振り向き文花に哀しい顔を見せる嬢子ちゃん。


「また呪われちゃったのね」

腰に手を当ててため息をつきながら悪霊を退治した安堵感か、微笑む文花。


「なんでよぉぉぉおお!」

哀しい嬢子ちゃんの叫びが山の奥にざわめいていた。




------------------------




「と、いう感じで悪霊は退治したんだけれど」

「嬢子ちゃんが呪われちゃって」


梅雨も終わりかけで、だんだん日差しが強くなってきている学校の屋上。

そこで文花ちゃんが、わりと凄い発言をしている。


文花ちゃんに誘われて、昼食を校舎の屋上で流しそうめんを食べることになったみうなと私(西尾ひいろ)。


「呪いって、大丈夫なの?」

先程の【呪い】という爆弾発言に心配する私。


「あれを見て」

文花ちゃんは流しそうめんを食べている嬢子ちゃんを指差す。


一緒に楽しく流しそうめんを食べているみうなの横で、嬢子ちゃんは……、


フーフー

熱くもない流しそうめんに息を吹きかけている。

「ぁあーっ、もうっ!またやっちゃった」


叫ぶ嬢子ちゃんを指差し文花ちゃんが口を開く。

「あれが呪いよ」


「はぁ?」

私は理解が追いつかず変な返しをしてしまった。


「熱くもない物を不意にフーフーしてしまう」

「あれが嬢子ちゃんの受けた呪い」

私の変な返しにも動じず丁寧に説明してくれる文花ちゃん。


「……そ、それは大変な呪い?だねぇ」

私も平静を装い返事を返す。

「その呪いって解けるの?」


文花ちゃんは麺つゆの入った容器と箸を私に渡しながら

「大丈夫、悪霊の心残りが晴れれば解けるの」


麺つゆと箸を受け取りながら

「心残りって?」


文花ちゃんも麺つゆと箸を持ち微笑みながら

「本格的な夏が来る前に、みんなで楽しく流しそうめん食べて欲しいんだって(倉庫に残っていたそうめんを全部)」

そう言って流しそうめんに参加する。


「なるほど」

まぁ、細かい事はよくわからないけれど、みんなで楽しく流しそうめん祭りってことかな。

そう受け取った私も流しそうめんに参加する。


チュルチュル

「ぁ、美味しっ」

細いのにコシがあって喉越しがすごくいい。


「特級なのよ!」

先程までフーフーしていた嬢子ちゃんが自信満々に説明する。


「でも食べ過ぎなのかちょっとばかりマンネリかも」

そんな嬢子ちゃんに隣で食べていたみうなが叫ぶ。

「そんな時はこれだよ!」

懐から出てきたのは……

My蒲焼のタレ!


麺つゆの入っていない新しい容器に蒲焼のタレを入れて嬢子ちゃんに手渡す。


不思議な顔をして受け取る嬢子ちゃんに向かって一言。

「大丈夫!美味しいよ!」

親指を立ててドヤ顔でウインクするみうな。


蒲焼のタレの入った容器にすくったそうめんを入れてまぜそばみたいに混ぜる。


チュル

「・・・おいしいわ」

驚愕の顔をする嬢子ちゃん横で嬢子ちゃんに負けず劣らずドヤ顔をするみうな。


そんなみうなを照らす日差しが強さを増し、まもなく本格的な夏が始まろうとしていた。


挿絵(By みてみん)



〜エピソード8 ハライン〜 おわり

うなぎちゃんのカチューシャ

エピソード8のハラインを再編集したものです。


漫画版もありますので詳細は活動報告をご確認下さい。

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ゴイスー♡(>ਊ<)♡ ハラインまとめいいね♡(≧∇≦)b♡ 読みやすい!!挿し絵かわゆ!! まるでそうめんの様な爽快な読み心地!! そしてめっちゃアクションしとるゴイスー♡(〃゜3゜〃)♡
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