エイスの家の池の下の地下室で
広い広いエイスの家。
作業工房の一角。
「高宮さんが長い戦いを経て、第六シーズンまで叩い抜いて、地球と火星を経由してここまで来たという事はわかりました」
エイスがお茶をすすりながら呟く。
「僕はこのドーム新宿の管理者として、高宮さん達を歓迎します」
エイスは嵐をまっすぐ見た。
「提案なんですが、暮らすことが目的なら、探偵業をやめて、リスティさんと、ありすさんと一緒に僕の家に住みませんか?
皆さんが、なるべく平穏に生きていけるように尽力させてもらいます」
何も好き好んで、日々、悪の組織の怪人や魔神と殴り合う暮らしをせずとも……と、エイスの目が語っていた。
「――折角だが、断る」
「そうですか」
嵐もエイスは顔色を変えず平然と答えた。
「理由を聞いても?」
「ガキにタカる大人になりたくないだけだ――」
「それはまあ、はい。僕が子供じゃなかったらーと思いますね」
エイスはすこし残念そうに湯呑を置いた。
「――エイス、お前の起業家としての能力や発明家としての能力は異常だ。お袋に六年間育てられたと言ってもまだ一四歳の小僧だろう」
「高宮さんが秘密を語ってくれたので、僕もそうしますよ」
エイスは立ち上がった。
「ついて来て下さい」
エイスの家の庭にはとても広い広い池がある。
その池の地下。
地下の空間。
すこし傷ついた巨大なロボットが、格納庫のような広い空間に着座していた。
ロボットの胸部には何本か太いケーブルが取り付けられ、壁に向けてケーブルが伸びていた。
「これは充電しているのか――いや、逆だな。このロボットが発電した電力を送電しているのか」
「はい、これが僕の家の秘密、燃料を消費せず無限に発電するエンジンを搭載したロボットです」
巨大なロボットは静かに座っている。
「これ一台でドーム新宿のすべての電力を賄い、さらに他のドームに送電する余力まであります」
「――すごいな」
「僕は生まれてすぐ、このロボットのコックピット入れられて、ずっとコンピューターで学習をしました。
中には生命維持装置があって栄養も十分、睡眠も快適なんですよ。
五歳くらいから発明品を造りたくて堪らなくなって、外の世界にでたんです」
「――そうか。それがお前の知識の源泉か」
「ロボットから出た時、僕の両親という存在は、もういなくなっていました」
「――そうか」
「五歳から六歳くらいまでに色々造りました。七歳の頃はすこし落ち着いて、八歳の時にショウコさんに出会いました」
「――お袋か」
「はい。ショウコさんに命の大事さを教えられて……そこからは妹たちを育てたり、真面目に企業を作ったり、ドームに住む人々の生活の質を良くしようと頑張りました」
赤いスタジャンのポケットに両手を突っ込んだまま、懐かしげにエイスが語る。
「――以前は無限発電装置を作ったと言っていたが」
「このロボットにケーブルを繋いだだけですが、結構、ケーブルを引くだけでも大工事でしたよ。変電所を作ったり、色々とセキュリティもかけましたし。そういうのも引っくるめて発電装置です」
「――そういうものか」
嵐は巨大ロボットを見上げた。
「立派な機体だが、なにか足りないな」
「そうなんですよー」
エイスが乗ってきた。
「もし三体の魔神を倒しに行くなら、この機体のソードパーツとシールドパーツとアーマーパーツを取ってきてくれませんか」
「――なんだって?」
エイスがいきなりとんでもないことを言い出した。
「この機体はヘクサゴンという名称で、滅びる前の旧世界ですべての敵勢力のメカを破壊し、世界の支配者となったコードネーム『六角形』です」
「――あの、蔵星ムツセの話にでてた最後の勝利者がこいつだったのか」
嵐もヘクサゴンを見上げた。
「デストロイヤー・マシーン達三体の魔神を倒した際に、それぞれソードパーツとシールドパーツとアーマーパーツを、三体の魔神を封印するために突き刺して失いました。
高宮さんがデストロイヤー・マシーンほか三体の魔神を改めて破壊するなら、役目を失ったソードパーツとシールドパーツとアーマーパーツを回収してきて下さい」
「パーツを失った――こいつがか」
機体名ヘクサゴン。
中世の騎士のヘルムのような頭部とマスク。
両目はおそらくビーム砲。
マスクが開いて口の部分にも高収束型のビーム砲がありそうだ。
右手にカタールのような固定式の短剣ヘクサーナイフ。
左手は固定型の爪ヘクサークロー。
両肩のアーマー内部に1基づつ拡散ビーム砲。
右手のカタールの内側には重火器が搭載されていそうだ。
左手の爪はロケットパンチのように腕の先ごと飛びそうなギミックがある。
爪の先端も、ビーム発射装置になっている。突き刺して敵の内側から破壊するのだろう。
「――こいつ、固定式の武器の塊か? ソードパーツは手で握るタイプじゃないな。肩かどこかに引っ掛けて射出するタイプだな」
「合ってますよー」
エイスがぐっと親指を立てる。
「ヘクサゴンはまだ死んでいません。最後の決着をつけるため、機を窺い続けているんです」
「――そういうものか」
二人はもと来た道を戻り、格納庫のような地下室を出た。
ヘクサゴンの目に光が灯り、出ていく二人をずっと見下ろしていた。




