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うちのやかん

作者: ことり。

私は嫁入り道具の1つにやかんを実家から持って来た。



引っ越しをするたびに処分する物もあるけれど、迷わず持っていく一軍と言うものだろうか。



もう既に15年以上は使い続けている。



冷蔵庫の下段にすっぽり入るちょうど良い大きさだ。




夏場にもなると子どもの水筒分と家で飲む用と大活躍だ。



そんな「うちのやかん」も15年ともなればぼちぼちガタが来てもおかしくない。



いや、もう数年も前からコップを注ぐ時にどこからかお茶が漏れて机が濡れてしまうことがあったのだ。



でもそれもだんだんと慣れてきて「お茶を注ぐ時だけだし、、!」


「使う時はキッチンかダイニングテーブルやし濡れても拭けばいいやん!」



となるのが私なのである。



新しいものを買うという選択肢もこの15年間で何回かチラついたこともあったが、まぁーいいやぁーで過ぎ去って行くのが世の常なのだ。




そんなこんなでやかんと共に日々を過ごし子どもは成長し、先日ある事が起こったのだ。



夕食時いつものようにお茶を家族が注いでいると、どこからか大量のお茶が漏れてしまっていたのだ。



「めっちゃ漏れてるやん!!いつも漏れてるけどすんごい漏れてるやん!もうあかんてこれ!

使えへんやん!!」



実は私は少し前から気付いていた。



何だか漏れが多くなってきていたことを。



でもまだ使い続けたい私は見て見ぬふりをしていた。



「ちょっと待って!こうやって注いだら大丈夫やって!見て!」


と家族を前に漏れない注ぎ方をレクチャーして見せたがその日はだだ漏れもいいところだった。



注ぐたびにだだ漏れ。。。


タオルがいるレベル!!


いつもはティッシュでサッとてのは建前で、もうそもそも拭いていない。


食事の後に拭くくらいだ。



「もう寿命やって!ここまで漏れたら使えへんよ!」



とやかんのことをかなり責められている気分になってきていた。


「そんな事ない!!まだいける!!捨てるなんて可哀想やん!!」



私は必死にやかんの事を庇った。



そして一瞬燃えないゴミの日に出す未来を想像したが、すぐに切り替えて何か他のことに使えないか、、、とか色々考えた。



「まだいける!大丈夫!使えるから!」



と言いながら遂にこのやかんとお別れか、、、



15年やもんな、、、。



と少し寂しい気持ちになりながらも何でこんなに

やかんに感情移入しているのか自分でも不思議なくらいだった。




次の日のためにお茶を沸かしていた。



そしてやかんを労るためにいつもは擦り切れ満タン入れるのに8分目くらいにして様子を見ることにした。



そして次の日の朝、いつものようにお茶をコップに注ぐと、少しは漏れるが全然気にするほどではなく使える様になっていた。


「え?!どゆこと?!だだ漏れじゃないやん!!

直ってる!すごいすごい!!」



私は大声で喜んだ。



昨日はやかんも、もう15年やしそろそろ引退しようかなと弱気になっていたけど、私の一声でもう一度やかんとして活躍しよう!と思ってくれたかもしれない。



夜になり家族に報告して実際使ってもらうと、


「すごいやん!!お母さんの気持ちが伝わって自分で直したんやな。」


って言ってくれたりして、本当に感動の1日となった。




作った人の魂が宿ってる。。。



      やかんが生きてる。。。


           と初めて感じた瞬間だった。


 



ボロボロすぎてお客さんが来た時は恥ずかしくて隠してしまう時もあるけれど、これからも一緒に年を取って行こうと胸に誓った私と家族(勝手にww)なのだった。。。








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イイハナシダナー  ( ;∀;)
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