飛べなかったのは
ショウは暗い室内にいた。
息が苦しいしなぜか怖い。頭や首がゾワゾワする。
(早く出ないと)
あせりながら窓から外に出たのに、外にあるのはまた部屋と窓。
(絶対にここから出てやる)
ショウは次の窓を開ける。その次に立ちふさがる窓も。
何個か目にやっと空が見えた。
「一人でここまで来れたようだね、えらい」
隣にはトビナガ先生がいた。
ショウはえへへと笑う。
外の空気は気持ちが良い。
お日様がさんさんと光る砂浜に二人は立っていた。
「安全な場所は見つかったかな?」
「う~ん‥少しは」
先生はうれしそうに目を細めた。
「探し続けるのだよ、本当に安全になるまで」
それに、とトビナガは続ける。
「安全な場所にたどり着けさえすれば、空も飛び放題になるだろう」
「え、飛べないのってそれが原因だったの?」
ショウはおどろくと同時に納得した。
たしかに保育園にいた時はよく空を飛んでいた。
小学校に入った後も、今のクラスになる前までは時々飛べていたかもしれない。
「君の心は軽やかさがたりなかったのだろうね」
トビナガ先生はうなずいて袋を取り出す。
ショウが駅前で買ったのと同じ袋。中身はもちろんドーナッツ。
二人は甘いドーナッツをむしゃむしゃ食べた。




