話題のトースト
クトゥルフ要素があります。
苦手な方はブラウザバックなどをお願いします。
「スタジオとテレビの前の皆さん、こんにちは! 今日のHOTな合言葉 のコーナーです!」
これは一般的な、全国ネットのお昼ごろのワイドショー的ニュース番組のいちコーナー。
前まで食べ物の話題を専門に扱うコーナーだったのだが、いい加減ネタが切れた為に現在は総合的な話題を取り扱う事になった。
レポーターはいわゆるアイドル。
本心かどうかわからない笑顔を顔に貼り付けて、ひと目でワクワクして楽しんでいますと伝わる演技をしている。
このアイドルはどこかの芸能事務所がゴリ押しして有名で人気にしたいと思っている人材を売り込まれた、ど定番の布陣。
「本日は一部の界隈で熱狂的な支持を集めている、K県の海辺に店を構えるパン屋さんをご紹介します!
今回、実はお店の意向で事前打ち合わせ無しの一発勝負ですので、何が出てくるのか知らなくてドキドキしています!」
もちろん総合的であるので、引き続き食べ物を扱う事もある。
と言うかさっきのセリフはイカンだろう。 いつもは打ち合わせしてどんなリアクションするか決めて放送しているとバラしてしまった。
こういったモノはアポだけ取りはするが、後は生中継の勢いに任せてドーン! な感じのコーナーであるはずなのに。
それを察したスタジオにいる芸能人たちの大体が、苦笑してしまったのを別画面でスッパ抜かれていた。
「では早速、お店に突撃したいと思います。 すみませーーん!」
「いらっしゃいませ!」
「うわっ! なんですか、その格好!?」
勢い込んでアイドルは店内に入ったが、入り口近くで待機していた店員の姿に面食らっていた。
その姿は白尽くめのフード付きローブで、表情は営業スマイルを浮かべてはいるが生気と正気を感じられず、だがレポーターにしっかりと言葉を返せている事から色々と不安定さしかなかった。
もちろんスタジオの芸能人たちも目を白黒させて、すこしざわめきが起きている。
が、そんなのはサラッと無視して店員が口を開く。
「ようこそ、パン屋【窮極のゲート】へ。 早速パンをご覧になられますか?」
…………やはり生気と正気を感じられない。
画面にアップで映された、フードを被っている店員から覗く目も焦点が合っていない事に気付く人はどれだけ居るだろうか。
映像に極僅かに走ったノイズも。
「あ……お願いします」
「はい。 かしこまりました」
店名が仰々しいと言うか中2的と言うかにツッコむ隙が無いのか空気に飲まれただけなのか、レポーターの返事には戸惑いが混じっていた。
もしかしたら返事にそんな所が含まれておらず、レポーターは店員の様子に気付いてしまったのかも知れない。
いや、ただただフード付きローブなんてのを着ている人物を理解できなかっただけかも知れない。
が、そんなのを余所に、店員は店の奥へと姿を消した。
そして5秒ほど経った頃だろうか?
「お待たせしましたー!」
店員の声の後に、今度は誰でも分かるような大きなノイズが映像に走った。
いやむしろ、アナログ放送時代のテレビで起きていた砂嵐なのかも知れない。
それが去った頃。
ソレは現れた。
それは名状しがたい形をしていた。
同じ商品名のパンと呼ぶには形状がどれも一致しておらず不定形で触手を模していると思われる細い部分が多数あり、パンであるはずなのに蠢いて見えてしまう。
それをパンと呼ぶには色味が強く、玉虫色としか言えない輝きを放っていた。
――――と、テロップが出ていて、出演者の芸能人たちの中には顔色が青くなっている者も出て来た。
これにはスタジオ全体が騒然。
画面変えろだのスタジオに一旦戻せだのとスタッフ達が大声を出し、カメラや映す画面を管理する者は画面が切り替えられない、テロップが消えない、モザイクも掛けられないと大焦り。
スタジオに見学しに来ていた視聴者達の一部が絶叫した後に異常行動を行う場面もあった。
「おまたせしました。 ヨグソトーストです」
店員に浮かぶ営業スマイルの口許が歪に変わっていたのを、テレビカメラはハッキリと捉えていた……。
そのヨグ=ソトースを模したパンと極まった狂信者の所業を見てしまったあなたは酷い狂気をまざまざと見せつけられ、成功0 失敗1d5のSANチェックです。
今回の 店員=店長=狂信者
一部界隈で熱狂的な支持=信仰
ヨグソトーストを買う客=狂信者
ここを紹介しようと企画した人物=もちろん狂信者