リスポーンエリア付近での出待ち……うっ、頭が
神様なんかいない。いたら兄妹間に引くほど能力の違いを作るはずがないし、あれだけ勉強して受験に落ちた俺がこうしてゲームしてる現状から救われていないはずがない。
つまり神様なんていない。Q.E.D.だ。
うん、まぁ少し前の俺はそう思っていた。――だけど、どうやら吸血鬼は存在したみたいだ。
『ここは何処だ。……マナの濃度が違う。別世界か。次元に干渉する術が存在することは知っていた、……つまりは召喚』
ネットを漁って見つけた『悪魔召喚の儀』。馬鹿らしい冗談だと嘲笑いながらも、成功しても失敗しても何ら自分の現状には変わりはないと一種の諦観を持って魔法陣を描いた。
その結果、俺の目の前に吸血鬼が召喚されたというわけだ。
薄暗い部屋の中でも輝かんばかりの金髪。畏怖を撒き散らすほどの美貌。笑みから覗く、人間よりも遥かに鋭い牙。そしてなにより、その背から広がせている蝙蝠に似た両翼。
俺たちが知っている吸血鬼という存在にあまりにも酷似していた。
俺が召喚したと思われる悪魔……いや、吸血鬼は不遜な態度で仁王立ちしながらこちらを見下ろす。
「おい貴様、我は――」
召喚が完全に成功したためか、吸血鬼がその姿を足先まで現したと同時に、描いた魔法陣が消え去った。
それが皮切りだった。
「ぐっ、ぐギャッ、AGAがgagagaがガガアァァァァ!」
「えっ、ちょっ、はっ? なんで燃えて!?」
吸血鬼は突然に身悶えし、両腕で自分の体を抱きながら……燃えていた。
燃えるといっても、轟々と炎が吹き上がるような形ではない。皮膚が爛れ、体の先から灰と化し、それは順に胴体、頭部へと達し――
ぼふっ、と妙に間抜けな音を立てて吸血鬼は消滅した。
「……えぇ……?」
何が起こったのか分からない。召喚した俺自身が何を言っているのかと自分で問いたい気分だが、実際に何も理解していないから何も言えないんだろうがクソが。
えーと俺が悪魔を召喚しようと思ったら吸血鬼が召喚されて?
召喚が終わると同時に吸血鬼が燃え始めて遂には消えて?
次いでに魔法陣も消えて……うんうん例えばこんな感じの模様で――
「いやまた召喚されてんじゃねーかっ!?」
俺が描いた魔法陣と全く同じ形の模様が自然と床に描き出され、再び発光を始める。すると床からズルズルニョキニョキと、まるで生えるように吸血鬼の姿が再び現れた。
吸血鬼の顔は怒りに染まり、美貌を歪ませながらも衰えを見せないオーラが俺の一身に浴びせられる。
20になって失禁しかけたのは俺の心の内に留めておこう。
「……おい小僧。貴様、我に何をしバババBabaばアァァァァ!?」
再び吸血鬼が炎上。灰になり消えた。
――と思ったら再度召喚開始。
「まぁ落ち着け、寛容な我は貴様との会話の機会をオオOoオォォォ!!」
三度吸血鬼が炎上。灰になり消えた。
――と思ったら三度召喚開始。
「いやコレ貴様の力ではないなアァァァ!!」
四回目の炎上。灰になり消えた。
四回目の召喚が始まったとなれば、流石の俺でも気づく。――『吸血鬼は日光で死ぬ』
召喚の魔法陣は、窓から差し込む陽の光によって燦々と照らされていた。
――召喚した吸血鬼はの初動は、被リス狩りでした。