アルコール中毒
アルコールに頼ろうとするアラサー女の孤独な日常。
仕事の都合が付かなくて、友人の結婚式が終わるとそうそうに会場をあとにして職場へ戻る。
一旦家に帰ってヒールを投げてベッドに横になる。着替えなくては。
「午前式で良かったな。」
シャンパン。
美味しかった。
ほろ酔いだけど、いいよね。こんな日に休めない方が悪いんじゃん。
*
辛くて辛くてどうしよう。
涙が止まらない。
もうずっと辛かった。
どんどん悪くなっていく現状は、驚く程になだらかな下り坂なのでいつ地獄に入ったのかわからない。
気がつけばもう三十四歳。
大学生のころから飼い始めた実家の犬が癌になってしまった。もう末期だ。
大好きな母も心臓病があり、父ももう七十に近い。家族を喪失するのが怖くて離れて暮らしているけど、離れていたって全然怖かった。いっそ恐怖に近い現実味を帯びて迫ってくる。
セックスレスな彼氏は子供が欲しいといいながらいつ結婚してくれるのか、もう高齢出産になる。結婚したいのは私じゃないのかも。あまり会えずにラインだけする彼氏は、ただ取り繕う相手だ。オブラートに包んで弱音を吐いて、受け入れてくれなそうって思うだけ。つなぎとめてるのは、私の年齢のせい。虚しい。
仕事も上手くいかない。
下手に頑張ったせいで、評価されなかった落胆が大きい。新しい上司は事勿れ主義で驚く程に他人行儀で、わからない。
全てが怖い。
明日、犬が死んでしまったらどうしよう。
この孤独をどうしよう。
お酒を飲まなくちゃ。
仕事の失敗で、泣きながら言い訳のメールを書く。23時に諦めて帰る。ベッドに横になると涙が止まらない。明日が来ちゃう。誰かがいると、笑顔でふるまわなきゃいけない。
辛くて辛くてどうしよう。
結婚式では笑顔で拍手して、限界を感じながらブーケトスに呼ばれて端っこで参加する。呼ばないでよ!
美味しいシャンパン。
隣の席の友人は妊娠してるからノンアルコール。
ウェディングドレスの美しい事。
写真をたくさんとって、全部送って全部消した。友人の義務。まだ取り繕えてる。
親を心配させないように。
期待に答えられなくてごめん。
彼氏にも取り繕う。
別れたいのかそうでないのかもう分からない。
友人にも強がる。
仕事では取り乱す寸前。
明日が来るから、冷蔵庫にはアルコールを入れて置かなくちゃ。