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聖女様との出会い③

「さすがにそれは申し訳ないよ……」


いくらなんでも同じクラスの同級生に夕食を作ってもらうのは申し訳なさ過ぎる。

それはこちらに取っては嬉しい提案だが遥花に手間をかけさせてしまう。


「食費は二人で出せば後は問題はないですし、料理をすることは好きですから」

「本当にいいのか……?俺は何も返せないぞ……」


料理は勿論もちろん、掃除はあの部屋を見れば一目瞭然いちもくりょうぜんだが全くと言っていい程に何も出来ない。

そんな音絃にとってはとてもありがたい提案なのだが。


「本当にそんなほどこしを受けていいのか?」

「いいんですよ……これはあくまで私のお節介ですから、大船に乗ったつもりでいてください。そうですね……黒原さんの言葉をお借りするなら、家は隣なので何の支障もないですよ?」


遥花はそう言って聖女様の笑顔を見せる。

その笑顔は確かに誰もが綺麗きれいだとか可愛いと言うのだろうが、音絃には少し遠い他人に向ける笑顔のように見えた。


「じゃあ……よろしくな」

「こちらこそよろしくお願いします黒原さん」


やはり音絃にはどうしても気になった。

これから食事の共有をして貰う立場だが少なからず関わりが出来るからこそ遥花に言っておかなければならない。


「白瀬ちょっとだけいいか?」

「はい?なんでしょう」

「食事を一緒にするに当たってだが、素の姿とまでは言わないけどさ……この場では学校での白瀬みたいな誰にでも愛想あいそをふりまくその顔はやめて欲しい……もう少し気を抜いて欲しいんだ」


遥花の事を何も知らない音絃はこんな事を言うべきじゃなかったのかもしれない、嫌われたかもしれない。

それで嫌われるならそこまでだとも思っている。

だが遥花はそうではなかった。


「どうして……そう思ったんですか?」

「なんとなく……そう感じたんだ。他人をどこか遠くから見ているような……そんな目だと思ったんだ」

「そうですか……多分、黒原さんの言う通りです」


遥花は自分の事を話し出した。

学校だけでなく学校外でも目立つ遥花は自然と周りとの距離を取るようになったという。

他人と全く関わってこなかったらしく友人もいないそうだ。


「私、気を抜いてもいいんですか……?」

「当たり前だ……これから一緒にご飯を食べていくんだから無駄むだな気はつかわなくていいからな。てことで再度よろしく」

「ありがとう黒原さん……よろしくお願いしますね!」


笑った白瀬の顔は今まで見てきた中で一番綺麗だと思った。

こうして本当の意味で白瀬遥花と知り合うことが出来た。


カップ麺を食べ終わり話をしている内に夜も遅い時間になっていた。

思った以上に長い時間話していたようでもう少しで日付が変わりそうだ。

音絃はそろそろ寝ようと立ち上がる。


「そろそろ日付が変わるからもう寝ようかな。白瀬はどうする?もう寝る?」

「黒原さんが寝るなら私も……寝ます」

「そか……じゃあこっちだ」


そうして遥花を音絃の部屋に案内した。

寝室がどの場所よりも散らかっている事は音絃自身、すっかり忘れていた。


「黒原さん……本当によく一人暮らし出来ましたね。リビングも大概でしたけど寝室はもっと酷いですね」

「返す言葉もない……」

「今度一緒に片付けますから……」

「よろしく頼む……」


ここは黙ってお願いしておいた方がいいだろう。

一人ではどうしても整理整頓が出来ないのだ。


「それはいいとして……このベットは俺のだが白瀬はここで寝てくれ」

「分かりました……」


遥花は突然、恥じらいだしたと思うとジャージのファスナーを下ろしだした。

音絃は一瞬だけ脳内が完全に停止したが、すぐに意識をしっかりさせた。


「し、し、白瀬?!何をしてるんだ?」

「男性の家に泊まらせて貰う時はこうするのが普通だって……」

「どこ情報だよそれ……」

「ネットで調べました……」


「今までの流れで俺が性欲丸出しのけだものになって、白瀬を襲うとでも思ったか?」


「思わないですけど……」

「じゃあそういう事だ。自分の身体はもっと大切にしろよ。それじゃあ、おやすみ」


遥花が何か言おうとしたが聞かずに音絃は急いで寝室を後にした。


全く……何も知らない聖女様は油断してると何をしでかすか分からない。

何もするつもりはないが、遥花のやらかす内容次第によっては理性が先にどうかなってしまうかもしれない。

幸いな事に明日は休みだ。

鍵は明日にでも作りに行って、家からは出ていくだろう。


頭を冷やすためにシャワーを浴び、温水ぬるみずをかぶりながら今日を振り返る。


本当に今日は色々なことがあった。

まさか聖女様と関わりを持ち、食事の共有を約束してしまうとは誰も想像が付かないだろう。

本当に情報量が多い一日だった。


浴室からあがり身体を拭きながら眠気から来る欠伸あくびを我慢していた。

いつもならもう少し早く就寝するのだが、白瀬と話すのに夢中になって遅れたのだ。

誰かが家にいる日常も久しぶりで楽しかったのかもしれない。


ドライヤーで髪を乾かし終わり遥花の様子を見に寝室へ向かう。

少しだけドアを開けて覗くと部屋はもう暗くなっていて寝息ねいきが聞こえた。


男子の家でこんなに早く寝れる遥花は危機感が足りなすぎる。

もし本当に俺が襲ったらどうするつもりだったのか……


「おやすみ」


そして静かにまたドアを閉めた。

寝顔を見ようかとも少しは脳によぎったが今はやめておこう。

もう眠気に耐えるのにも限界だ。


来客用の布団ふとんはあるが、さすがに遥花と同じ部屋で寝る訳には行かないのでリビングのソファーで寝ることにした。

部屋の電気を消してタオルケットを羽織はおり、明日……いや、今日の朝起きる為のアラームをセットする。

外の雨はいつの間にか降り止んでいて、きっと満天の星が空を綺麗に飾り付けているのだろう。


明日もこのまま晴れるといいな……


そんなことを考えながら音絃は目を閉じて眠りについた。

( ¯꒳¯ )ᐝ

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